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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#22

第二章 彼の妹(9)

「……凱君は優しいんだね。ありがとう。でも、大丈夫だよ、別れたといっても、俺が物心つく前の話だし」
 ふと、一つ気になった。
「あ、あの……大事な形見を、他の人に渡してもよかったんですか……?」
 物心つく前に親と別れた子供にとって、親の遺したものはこれ以上ない宝物のはずだ。親との思い出がない以上、それを見ることでしか親の面影を追えないのだから。
「うん、大丈夫。それに、[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]ちゃんにも貰う権利はあると思うし」
 なぜ姉に、貰う権利があるのだろうか。
 馨を見ると、凱の疑問はお見通しだったらしく、
「秘密だよ」
 と言った。
「それでは、あの、……いつどうやって姉さんに渡したんですか?」
「んー、それも秘密」
 これも秘密らしい。
 前の、馨が凱の両親を好かない理由に凱は関係ないといった理由といい、馨の兄弟についてといい、どうも馨には秘密が多い。
 定期的に会うようになって忘れていたが、一体馨は何者なのだろうか。
「何かあった?」
「あ、いえ……」
 さすがに あなたは何者ですかとは聞けない。
 馨も「そっか」と言い、これ以上問わなかった。

 しばらく他愛ない話をしていると、邸に残っていた親戚から「旦那様方がそろそろ帰ってこられるそうです」と声がかかった。
「そっか、長居しすぎたみたいだね、じゃあ、そろそろ帰るね」
 凱の両親と[漢字]鉢[/漢字][ふりがな]はち[/ふりがな]合わせたくないのか、馨がそう言って席を立つ。凱も止めず、見送りに出た。
「はい。さようなら、馨さん」
 馨がひとつうなずき、使用人たちに目を向け、微笑む。
「いつもおもてなしありがとう。お邪魔してしまってごめんね」
 使用人たちは驚いたようにして、「いえ」と首を振った。顔を赤く染めている者もいる。
 あの美しい微笑みを前にすれば、そうなるだろう。
 馨が凱に視線を向けた。
「じゃあ凱君、これで。またね」
「はい、また」

[水平線]
 その日の夜、母が寝静まったのを見て凱は姉の部屋に行った。
 会議から帰った両親から、土産と称してキャラメルを貰ったからだ。
 姉の部屋はとても小さい。この邸に住み込んでいる使用人でも、もう少しましな部屋が与えられるだろう。
 姉に関わるようになってから、姉がいかに[漢字]冷遇[/漢字][ふりがな]れいぐう[/ふりがな]されているかが分かるようになった。
 それにつれて、全くといっていいほど気づかなかった自分が不甲斐なく感じられた。
 部屋の中まで入れてもらえたことはないが、きっとほとんど物はないだろう。
 こんこんと扉を叩く。
「はい……?」
 警戒するような声が聞こえる。
「姉さん? 凱です、父さんと母さんから、キャラメルもらったから、姉さんにも分けようかなと思って」
 扉越しに、話しかけた。
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2025/11/07 14:06

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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