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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#21

第二章 彼の妹(8)

「———お姉さんとは最近、どうなの?」
「え?えっと……」
 思ってもみなかった質問に凱は面食らった。母と姉のことは馨にも話していたから、それを心配したのだろう。
「……相変わらずです。でも、最近は母さんの目を盗んでちょくちょくお菓子とか届けるようにしていて……」
 そう答えると、馨はどこか嬉しそうに顔を[漢字]綻[/漢字][ふりがな]ほころ[/ふりがな]ばせた。相変わらずその顔は美しい。
「そうなんだ……っていうかそれ、『相変わらず』ではなくない?」
「そう……ですか? 届けるだけで、あまり話さないし……」
「少なくとも凱君がお菓子を届けられるようには変わったんでしょ?」
 それは、変わったと言えるのだろうか。言えるのなら、良い方向に変わったと信じたい。

 ふと、姉が[漢字]貰[/漢字][ふりがな]もら[/ふりがな]ったという高価な鏡を思い出した。
「あの、馨さん」
「ん?」
「姉さんが、鏡を持っていたんですけど……高価な。鏡の中で文字が浮かんでいて、『かおるへ』とか『だいすき』とか……覚えはありますか」
 馨が一瞬、目を見開く。顔に驚きが浮かんでいた。
「……知ってるよ。[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]ちゃんに渡したから。でも、それを知ってるぐらい、仲良くなったんだね」
「な、仲良くなってないです……親戚が見つけて、壊そうとしていたから止めただけで……」
 馨が息をつめて、一瞬黙った。
「壊そうとした……そっか。今までも、そうだったの?」
 凱は俯く。それを見た馨があわてて続ける。
「凱君を責めようとは思ってないよ、ごめんね」
 謝られ、申し訳ない気持ちになる。
「そうかも、しれません……。姉さんが、母親の遺品を持っているところも見たことありませんし……」
「そう。話させてごめんね」
 さらに謝られ、さらに申し訳ない気持ちになる。
「あの……鏡に浮かんでいた文字には、覚えはありますか?他にも『げんきでね』とか『なかよくね』とか『おかあさんより』とか書いてあったんですけど……」
馨がこちらを一瞥した。そのまま視線を天井に向け、言葉を選ぶように考え込む。
「あれね……母さんが俺にくれたんだ」
 文字からおおよそ推測はできたが、実際に言われるとどこか複雑だった。
「なら、形見ってことですか……?」
「まあ、そんな感じ。現実に、あの鏡をもらって一年半もしたら死んじゃったし」
 馨の母はもう他界してしまったらしい。つらいことを思い出させてしまったかと思った。
「あの、ごめんなさい」
「え?」
「えっと、つらいことを思い出させてしまったでしょう」
 凱がそう言うと、馨はかすかに[漢字]瞠目[/漢字][ふりがな]どうもく[/ふりがな]した。
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2025/10/31 11:08

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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