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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#19

第二章 彼の妹(6)

 姉と二人きりになる。
 まだ頭を下げている姉を見た。
「あのさ、えっと……とりあえず、頭上げてくれない?」
 姉が[漢字]恐々[/漢字][ふりがな]こわごわ[/ふりがな]とした様子で頭を上げ、視線を凱に向ける。
 無機質な姉の瞳に、自分の姿が映る。思えばまともに姉の顔を見たことさえ、初めてかもしれなかった。
「えーっと……これは、誰に[漢字]貰[/漢字][ふりがな]もら[/ふりがな]ったの?」
 姉は黙っている。沈黙が気まずい。
「別に、謝らなくてもいいし、怒るつもりもないよ。姉さんがそんなことするとは僕は思ってないから」
 姉はそれでもしばらく黙っていた。やがて、姉がつぶやく。
「……小さな男の子でした。」
 それだけ言い、姉は再び俯く。
「男の子……?どういう容姿の?何か、会話した?」
 努めて優しく、さらに尋ねた。
「……綺麗な子でした。薄い茶髪で。薄橙の目をしていて。」
 目を見開いた。薄い茶髪と、薄橙の目。まるで、馨ではないか。
 そこで、姉は言葉を区切る。
 もともと馨のものだったと見て間違いないだろう。なぜ『小さな男の子』だったのかは分からないが。
「でも……でも、どこかこの世のものには思えなくて、それで、それが……」
 そこまで言って姉は声を詰まらせた。
「亡くなった、お母さま——私の母に似ているような気がして……もう、母のことなんて覚えていないのですけど……」
 ———姉の実母。確か、[漢字]琴子[/漢字][ふりがな]ことこ[/ふりがな]という名だった。凱が生まれる前に亡くなったこともあり、凱は彼女を知らない。どのような人だったのだろう。
「分かった。ありがとう。」
 そう言って微笑んでみると、姉は心なしか安心したようだった。
「そういえば、そろそろ晩御飯だよね。ご飯、もう食べた? よかったら、一緒に食べない? 母さんもしばらく帰ってこないみたいだし」
 姉とこうして話したのは、生まれて初めてかもしれない。嬉しさに思わずそう提案した。
「いえ……私が凱様とご一緒するのは、[漢字]分不相応[/漢字][ふりがな]ぶんふそうおう[/ふりがな]ですし……それに、もし奥様がいらっしゃらないとしても、他の方々が黙ってらっしゃらないでしょうし……」
 姉が[漢字]渋[/漢字][ふりがな]しぶ[/ふりがな]って言った。そういえば、そうだ。現実に戻されるような感覚を覚える。つい浮かれていたようだった。
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2025/10/23 14:43

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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