「こんにちは、凱君。お邪魔します」
あれから一週間に一度ほどの[漢字]頻度[/漢字][ふりがな]ひんど[/ふりがな]で、[漢字]馨[/漢字][ふりがな]かおる[/ふりがな]は定期的に[漢字]時庭[/漢字][ふりがな]ときにわ[/ふりがな]家に訪ねてくるようになった。
「こんにちは、馨さん。お邪魔されます」
凱がおどけてそう言ってみると、馨がくすくすと笑う。
馨が玄関に上がって、美しい所作で靴を[漢字]下駄箱[/漢字][ふりがな]げたばこ[/ふりがな]に[漢字]仕舞[/漢字][ふりがな]しま[/ふりがな]った。
「[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さん、いらっしゃい。よく来てくださいました」
後ろの方から声が聞こえ、そちらに目を向ける。母だった。
母の馨への印象は良いようだ。馨は変わらず母から距離を置いているが。
「こんにちは、[漢字]浪子[/漢字][ふりがな]なみこ[/ふりがな]さん」
今日もやはり馨は一歩置いて、母に挨拶する。
しばらく凱は馨と談笑した。
「もう十月だね。凱君、変わりない? あとそうだ、[漢字]斎[/漢字][ふりがな]いつき[/ふりがな]君だっけ、あのもう一人の子も」
「あ、はい。僕は元気です。斎も、元気です。元気すぎて困ってしまうぐらい。一昨日はなんか、先生専用の便所に隠れて入ってきた先生をおどかそうとしてて———あ、もちろん男の先生なんですけど」
「あはは、先生も大変だね、落ち着いて用も足せないなんて」
「本当ですよね、やっぱりしっかり怒られてましたけどね、いつも通り」
「そっかそっか、でもよかった、元気そうで」
「はい、馨さんもお変わりなさそうで安心しました」
馨が楽しそうに目を細める。馨と話すのは本当に楽しかった。
そのうちに、母が来た。さらに後ろから父も来ており、凱は少し驚く。
いつも通り、仕事でいないものかと思っていたからだ。
両親が席につく。凱と馨も、その反対側に座った。母が口を開く。
「改めまして、いらっしゃい、内海さん。こちらは私の主人にございます。お見知りおきください」
「時庭[漢字]龍二[/漢字][ふりがな]りゅうじ[/ふりがな]といいます。あなたが内海馨さんだね。息子の凱が世話になっている」
「こんにちは、内海馨です」
馨も簡単に挨拶した。そういえば、父と馨は初対面だったと思い出した。馨が訪ねるとき、いつも父は仕事で家を空けていた。
馨の、父に対する[漢字]心象[/漢字][ふりがな]しんしょう[/ふりがな]はどうだろうか。悪くないだろうか。少し気になった。
馨を見る。馨はいつも通り、美しい顔に笑みを浮かべていた。ただそれは冷めているように見える。凱の母同様、凱の父のこともあまり好きではないのかもしれない。
父が話を切り出した。
「家内に話を聞けば、[漢字]荒[/漢字][ふりがな]あれ[/ふりがな]くれ者から凱を助けたとか言うではないか。礼をいう」
「いえ。……俺は大したことはやっていませんので」
馨は母に言ったのと同じことを父にも繰り返す。やはり、話し方も冷めていた。
もう一度、馨の顔を見た。その顔は先ほどと同じように冷めていた。ただ、その瞳は必死に何かを探して追っているようだった。
あれから一週間に一度ほどの[漢字]頻度[/漢字][ふりがな]ひんど[/ふりがな]で、[漢字]馨[/漢字][ふりがな]かおる[/ふりがな]は定期的に[漢字]時庭[/漢字][ふりがな]ときにわ[/ふりがな]家に訪ねてくるようになった。
「こんにちは、馨さん。お邪魔されます」
凱がおどけてそう言ってみると、馨がくすくすと笑う。
馨が玄関に上がって、美しい所作で靴を[漢字]下駄箱[/漢字][ふりがな]げたばこ[/ふりがな]に[漢字]仕舞[/漢字][ふりがな]しま[/ふりがな]った。
「[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さん、いらっしゃい。よく来てくださいました」
後ろの方から声が聞こえ、そちらに目を向ける。母だった。
母の馨への印象は良いようだ。馨は変わらず母から距離を置いているが。
「こんにちは、[漢字]浪子[/漢字][ふりがな]なみこ[/ふりがな]さん」
今日もやはり馨は一歩置いて、母に挨拶する。
しばらく凱は馨と談笑した。
「もう十月だね。凱君、変わりない? あとそうだ、[漢字]斎[/漢字][ふりがな]いつき[/ふりがな]君だっけ、あのもう一人の子も」
「あ、はい。僕は元気です。斎も、元気です。元気すぎて困ってしまうぐらい。一昨日はなんか、先生専用の便所に隠れて入ってきた先生をおどかそうとしてて———あ、もちろん男の先生なんですけど」
「あはは、先生も大変だね、落ち着いて用も足せないなんて」
「本当ですよね、やっぱりしっかり怒られてましたけどね、いつも通り」
「そっかそっか、でもよかった、元気そうで」
「はい、馨さんもお変わりなさそうで安心しました」
馨が楽しそうに目を細める。馨と話すのは本当に楽しかった。
そのうちに、母が来た。さらに後ろから父も来ており、凱は少し驚く。
いつも通り、仕事でいないものかと思っていたからだ。
両親が席につく。凱と馨も、その反対側に座った。母が口を開く。
「改めまして、いらっしゃい、内海さん。こちらは私の主人にございます。お見知りおきください」
「時庭[漢字]龍二[/漢字][ふりがな]りゅうじ[/ふりがな]といいます。あなたが内海馨さんだね。息子の凱が世話になっている」
「こんにちは、内海馨です」
馨も簡単に挨拶した。そういえば、父と馨は初対面だったと思い出した。馨が訪ねるとき、いつも父は仕事で家を空けていた。
馨の、父に対する[漢字]心象[/漢字][ふりがな]しんしょう[/ふりがな]はどうだろうか。悪くないだろうか。少し気になった。
馨を見る。馨はいつも通り、美しい顔に笑みを浮かべていた。ただそれは冷めているように見える。凱の母同様、凱の父のこともあまり好きではないのかもしれない。
父が話を切り出した。
「家内に話を聞けば、[漢字]荒[/漢字][ふりがな]あれ[/ふりがな]くれ者から凱を助けたとか言うではないか。礼をいう」
「いえ。……俺は大したことはやっていませんので」
馨は母に言ったのと同じことを父にも繰り返す。やはり、話し方も冷めていた。
もう一度、馨の顔を見た。その顔は先ほどと同じように冷めていた。ただ、その瞳は必死に何かを探して追っているようだった。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)