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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#13

第一章 始まり(13)

 その沈黙がつらく感じられた。
 何か悪いことを聞いてしまっただろうか。
「馨、さん?」
「……大丈夫だよ。あ、ほら、そろそろ着くんじゃない?」
 そう言われて凱は顔を上げる。辺りはもう家の周辺だった。

 ちょうど、こちらに走ってくる人影が見えた。
「凱!」
 母だった。凱の姿を見つけるなり駆け寄って、肩を抱き寄せる。
「どこに行っていたの。変な人に絡まれたって聞いて、心配したのよ。斎君はちゃんと帰った、と聞いたけれどあなたは全然帰って来ないから——」
 そこまで捲し立てて、母は馨の存在に気づいた。
「あなたは———」
「……内海馨といいます。もう暗かったので、送らせていただきました」
「内海馨……? 凱が探してた? そう……ありがとうございます」
 母は驚いたような、安心したように礼をした。
「いえ……」
 馨の母を見る視線はどこか複雑そうだった。凱の話を聞いていたからだろう。
「もう暗いでしょう。家に上がりますか? 凱を送ってくれたお礼も兼ねて」
「お母様さえ良ければ、俺は構いません」
「そう? では使用人に言いつけて、食事でも出させましょう。お好きでない料理はありますか?」
「特にありません。お気遣い、ありがとうございます」
 かくして、馨は家に上がることとなった。

[水平線]
「——まあ、凱を助けたのが、[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さんだったのですか?」
母が驚いたように言う。

 家に上がったあと、馨は応接間に通された。
 馨の反対側に凱と母が座り、一緒に食事をとる。
 ちなみに父はいつも通り仕事でいない。
 母が凱と馨にあの銃を持っていた男について聞いて、二人でそれに答えた。馨が凱たちを助けたと聞くと、母は大変驚いていた。
「本当にありがとうございます。助かったわ」
「いえ……。[漢字]偶々[/漢字][ふりがな]たまたま[/ふりがな]会ったので……」
 馨が控えめに言う。あまり母と話したくなさそうだった。
 やがて食べ終わった。

「では、そろそろ帰らせていただきますね。いつまでも長居するわけにはいきませんし」
「そうですか……本当にありがとうございました。……息子のことも」
「おやすみなさい、馨さん。ありがとうございました」
「凱君も、おやすみなさい。こちらこそ、ありがとうございました」
 母と凱がそれぞれ礼を述べると、馨は凱にだけ返事を返した。
 やはり馨は凱の母があまり好きではないのだろう。

 玄関にて、凱は馨を見送る。もう日付が変わる頃だった。
「では馨さん、さようなら。また会えたら」
「そうだね。……さようなら、凱君」
 そう残して、馨の姿が夜の闇に消えていく。それが見えなくなるまで凱は玄関に立っていた。
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2025/10/21 12:11

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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