その沈黙がつらく感じられた。
何か悪いことを聞いてしまっただろうか。
「馨、さん?」
「……大丈夫だよ。あ、ほら、そろそろ着くんじゃない?」
そう言われて凱は顔を上げる。辺りはもう家の周辺だった。
ちょうど、こちらに走ってくる人影が見えた。
「凱!」
母だった。凱の姿を見つけるなり駆け寄って、肩を抱き寄せる。
「どこに行っていたの。変な人に絡まれたって聞いて、心配したのよ。斎君はちゃんと帰った、と聞いたけれどあなたは全然帰って来ないから——」
そこまで捲し立てて、母は馨の存在に気づいた。
「あなたは———」
「……内海馨といいます。もう暗かったので、送らせていただきました」
「内海馨……? 凱が探してた? そう……ありがとうございます」
母は驚いたような、安心したように礼をした。
「いえ……」
馨の母を見る視線はどこか複雑そうだった。凱の話を聞いていたからだろう。
「もう暗いでしょう。家に上がりますか? 凱を送ってくれたお礼も兼ねて」
「お母様さえ良ければ、俺は構いません」
「そう? では使用人に言いつけて、食事でも出させましょう。お好きでない料理はありますか?」
「特にありません。お気遣い、ありがとうございます」
かくして、馨は家に上がることとなった。
[水平線]
「——まあ、凱を助けたのが、[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さんだったのですか?」
母が驚いたように言う。
家に上がったあと、馨は応接間に通された。
馨の反対側に凱と母が座り、一緒に食事をとる。
ちなみに父はいつも通り仕事でいない。
母が凱と馨にあの銃を持っていた男について聞いて、二人でそれに答えた。馨が凱たちを助けたと聞くと、母は大変驚いていた。
「本当にありがとうございます。助かったわ」
「いえ……。[漢字]偶々[/漢字][ふりがな]たまたま[/ふりがな]会ったので……」
馨が控えめに言う。あまり母と話したくなさそうだった。
やがて食べ終わった。
「では、そろそろ帰らせていただきますね。いつまでも長居するわけにはいきませんし」
「そうですか……本当にありがとうございました。……息子のことも」
「おやすみなさい、馨さん。ありがとうございました」
「凱君も、おやすみなさい。こちらこそ、ありがとうございました」
母と凱がそれぞれ礼を述べると、馨は凱にだけ返事を返した。
やはり馨は凱の母があまり好きではないのだろう。
玄関にて、凱は馨を見送る。もう日付が変わる頃だった。
「では馨さん、さようなら。また会えたら」
「そうだね。……さようなら、凱君」
そう残して、馨の姿が夜の闇に消えていく。それが見えなくなるまで凱は玄関に立っていた。
何か悪いことを聞いてしまっただろうか。
「馨、さん?」
「……大丈夫だよ。あ、ほら、そろそろ着くんじゃない?」
そう言われて凱は顔を上げる。辺りはもう家の周辺だった。
ちょうど、こちらに走ってくる人影が見えた。
「凱!」
母だった。凱の姿を見つけるなり駆け寄って、肩を抱き寄せる。
「どこに行っていたの。変な人に絡まれたって聞いて、心配したのよ。斎君はちゃんと帰った、と聞いたけれどあなたは全然帰って来ないから——」
そこまで捲し立てて、母は馨の存在に気づいた。
「あなたは———」
「……内海馨といいます。もう暗かったので、送らせていただきました」
「内海馨……? 凱が探してた? そう……ありがとうございます」
母は驚いたような、安心したように礼をした。
「いえ……」
馨の母を見る視線はどこか複雑そうだった。凱の話を聞いていたからだろう。
「もう暗いでしょう。家に上がりますか? 凱を送ってくれたお礼も兼ねて」
「お母様さえ良ければ、俺は構いません」
「そう? では使用人に言いつけて、食事でも出させましょう。お好きでない料理はありますか?」
「特にありません。お気遣い、ありがとうございます」
かくして、馨は家に上がることとなった。
[水平線]
「——まあ、凱を助けたのが、[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さんだったのですか?」
母が驚いたように言う。
家に上がったあと、馨は応接間に通された。
馨の反対側に凱と母が座り、一緒に食事をとる。
ちなみに父はいつも通り仕事でいない。
母が凱と馨にあの銃を持っていた男について聞いて、二人でそれに答えた。馨が凱たちを助けたと聞くと、母は大変驚いていた。
「本当にありがとうございます。助かったわ」
「いえ……。[漢字]偶々[/漢字][ふりがな]たまたま[/ふりがな]会ったので……」
馨が控えめに言う。あまり母と話したくなさそうだった。
やがて食べ終わった。
「では、そろそろ帰らせていただきますね。いつまでも長居するわけにはいきませんし」
「そうですか……本当にありがとうございました。……息子のことも」
「おやすみなさい、馨さん。ありがとうございました」
「凱君も、おやすみなさい。こちらこそ、ありがとうございました」
母と凱がそれぞれ礼を述べると、馨は凱にだけ返事を返した。
やはり馨は凱の母があまり好きではないのだろう。
玄関にて、凱は馨を見送る。もう日付が変わる頃だった。
「では馨さん、さようなら。また会えたら」
「そうだね。……さようなら、凱君」
そう残して、馨の姿が夜の闇に消えていく。それが見えなくなるまで凱は玄関に立っていた。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
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- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)