文字サイズ変更

【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#1

第一章 始まり(1)

「わ、すみません」
 今日は夏祭り、その屋台を見物していたときだった。
 前方をよく見ておらず、誰かにぶつかってしまった。
 慌てて謝り、相手の顔を見た。
「……ああ、大丈夫だよ、君こそ怪我はしていない?」
 薄い[漢字]橙[/漢字][ふりがな]だいだい[/ふりがな]の瞳、薄めの茶髪、すらりとした痩身。
 [漢字]凱[/漢字][ふりがな]かい[/ふりがな]より 5、6歳年上ほどの、とても美しい青年だった。
(———綺麗。)
 凱が何か言葉を発するより前に、凱に怪我はないと判断したのか、彼は行ってしまった。

[水平線]
「——何でやってないのっ!本当に気が利かない、[漢字]鈍臭[/漢字][ふりがな]どんくさ[/ふりがな]くて[漢字]愚図[/漢字][ふりがな]ぐず[/ふりがな]なんだからっ」
「すみません、今すぐやりますので……」
「——本当に[漢字]忌々[/漢字][ふりがな]いまいま[/ふりがな]しい、あの女のように早く死んでしまえばよいのに」
 その言葉に、少女の肩が震えた。
 夏祭りから家に帰って一番最初に見たものが、これ。
 三十半ばの年頃の女性が、[漢字]擦[/漢字][ふりがな]す[/ふりがな]り切れた服を着た少女に当たっている光景。
(またか……)
 凱が物心ついたころからのこの光景には、もはや見慣れてしまっていた。
(母さんが姉さんをいびってる)
 凱の姉は、[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]という。姉、といっても母が違い、朝水は父とその前妻との間に生まれた娘である。

 
 この世には二つの力——霊力と魔力がある。
 霊力は限られた人間しか持てない。それを受け継ぐ家や一族の一つが凱の生まれた[漢字]時庭[/漢字][ふりがな]ときにわ[/ふりがな]家だ。
 妖怪とは、成仏できなかった人の霊や、生きた人の霊ーつまり[漢字]生霊[/漢字][ふりがな]いきりょう[/ふりがな]ー、人の負の感情など、さまざまな原因によって現れる。
 時庭家のような家は、霊力を使ってそんな妖怪のような「見えない」ものを見て、それを滅する役割を持つ。
 魔力を受け継ぐ一族は———外国はいさ知らず、この国には一つしかない。そして「彼ら」がどうしているのか、どこにいるのか、魔力をどうやって使って、何をしているのか、そもそも苗字や名前すらも、何も分からない。知られていない。凱ももちろん知らない。

 父と母は、それぞれ霊力を受け継ぐ家の生まれだった。父は本家の長男だった。霊力を受け継ぐ家は少なく、その家の者は皆知り合い、といった狭い[漢字]界隈[/漢字][ふりがな]かいわい[/ふりがな]であることもあり、二人は[漢字]幼馴染[/漢字][ふりがな]おさななじみ[/ふりがな]かつ幼い頃からの[漢字]許嫁[/漢字][ふりがな]いいなずけ[/ふりがな]同士であったという。つまり、結婚を約束していた。
 だが、二人が年頃になって、突然父に縁談が来た。相手は霊力とは何ら関係のない家の娘。当然、父も母も他の一族の者も、反対した。
 霊力は親から子に継がれる。すなわち、両親が霊力者であれば、子に霊力が宿る可能性が高くなる。そのため霊力を継がぬ家の娘と結婚しても何の利もない、というのが理由だ。
 しかし、誰の差し金か、あれよあれよという間に婚約が決まってしまい、父と母は別れることになった。
 かくして父が結婚し———やがて生まれたのが姉である。
 姉の実母は、姉を産んで半年後に亡くなった。産後の[漢字]肥立[/漢字][ふりがな]ひだ[/ふりがな]ちが良くなかったらしい。一族の者にはこの[漢字]婚姻[/漢字][ふりがな]こんいん[/ふりがな]をよく思っていなかった者も多かったというから、心労もあっただろう。
 そして姉は霊力を持たなかった。
ページ選択

作者メッセージ

読みづらいところなどありましたら、教えてください。

2025/10/17 22:19

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は錦野 真名さんに帰属します

TOP