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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#36

第三章 神社(3)

「え?……ありがとうございます」
 本を大事そうに抱えて、姉は頭を下げる。
「あ、うん。どういたしまして」
 姉はしばらく本の中身を眺めていたが、「あ、そういえば」と立ち上がった。
 少し時間をおいて、姉は 前に凱が渡した教科書を持ってくる。
「これ、お返しいたします」
 凱は目を丸くした。
「え?いいの?」
「ええ、……もう読み終わりましたし。あまりずっと持っていても悪いので。奥様に見つかってもいけないし……」
 そっか、と言って凱は教科書を受け取る。
「って……もう読み終わったの? 全部理解できたの? すごい、ずいぶん早いね」
 凱が姉を見る。まだ渡してから二週間ほどしか経っていないはずだ。それに母や親戚たちの目を盗んで読むには、深夜か早朝しか時間がないだろう。中学校では人並みに成績のいい凱ですら、この教科書の全部を理解するのに 二、三ヶ月はかかったのに。
「……読むのが、楽しかったんです」
 姉がはにかんで俯いた。
 小学校ではどれほど優秀だったのだろうか。本当に、女学校に進学すればよかったのに。先生方や同級生たちもさぞ惜しんだであろう。
残念に思いながら、凱は口を開いた。
「へー、すごい、じゃあ、また今日買ったやつも、姉さんはきっとすぐ読み終わるかな。もし読み終わったら、また何か持ってこようか?」
 そう言うと姉は目を見開き、「ありがとうございます」と手をついた。

[水平線]

「凱様ー? お手紙が届いておりますが」
 数日後。凱は忘れぬうちにと課題に取り組んでいた。ちなみに、あの洋食の店で斎と慌ててやったあの課題は結局、その日徹夜してやる羽目になった。
 あれは本当に疲れた。もう二度とあんな真似はしない。というかしたくない。
 それはさておきその課題に取り掛かっている最中に、下から声が聞こえた。鉛筆をおいて立ち上がり、下階に行くと、親戚が手紙を持って立っていた。
「はーい、———え?」
 親戚から手紙を受け取り、何気なく差出人を見る。
 ———馨だった。
「? 凱様?いかがなされました?」
 [漢字]瞠目[/漢字][ふりがな]どうもく[/ふりがな]したまま固まってしまった凱に、親戚が不思議そうに問う。
「いや……なんでもない」
 急いで身を[漢字]翻[/漢字][ふりがな]ひるがえ[/ふりがな]して、部屋へ戻った。
 部屋に着いて座り込むと、手紙を開いた。

『時庭凱様
 温かい鍋料理が恋しい頃になりました。
 しばらくお会いしていませんが、お元気にしておられますでしょうか。
 さて、私は妹と二週間ほど出かけることになりました。
 実を言えば、凱君にも挨拶をしておきたかったのですが、諸事情により諦めざるを得なくなりました。
 手紙一枚で失礼させていただくこと、お詫びいたします。
 しばらく会えなくなりますが、お風邪など召されませんよう。
 内海馨』

 たったこれだけの文章だった。
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2025/11/11 14:28

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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