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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#34

第三章 神社(1)

 あれから[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]に会うことはなかった。
 わざわざ久世に会いたいとも思わず、会ったとしても何を話せば良いのかわからないので、むしろそれでよかった。
 ただ———いつもおおよそ一週間ごとに[漢字]時庭[/漢字][ふりがな]ときにわ[/ふりがな]家に訪ねてくる[漢字]馨[/漢字][ふりがな]かおる[/ふりがな]が、あの後来ることがなくなってしまい、それが[漢字]凱[/漢字][ふりがな]かい[/ふりがな]にとって悲しく思われた。
「最近来ないわね。どうしたのかしら、[漢字]内海[/漢字][ふりがな]うつみ[/ふりがな]さん」
 母が不思議そうにそう言っていた。母には、久世のことも、久世と会ったときのことも話していない。

『私たちにあんなことをしておきながら———』
 久世のその言葉が凱はずっと引っかかっていた。
 わからない。過去のことが、時庭のことが、あの兄妹のことが、全部。

[水平線]
 学校の帰り、凱は本屋に寄った。いつか話の通じない男に絡まれた、あの本屋である。
 姉に合う本があるか、見たかったのだ。
 あれから、凱は前にも増して姉の元へ行くようになった。物を届けたり、会話をするだけだったり。
 ある日、凱が使わなくなった中学校の教科書を姉に渡すと、姉はとても喜んでいた。
 本当は女学校に進学して、学びたかったのだろう、母や親戚たちの目を盗みつつ、姉は夢中になって読んでいた。
(良いの、あるかな……)
 店の中を物色していると、後ろから声をかけられた。
「凱ー?」
 [漢字]斎[/漢字][ふりがな]いつき[/ふりがな]だった。相変わらずへらへらとした笑みを浮かべている。
「何か探してんの?」
 斎が聞いてきた。
「えっと……姉さんに合う教科書か参考書か何か、あるかなーって」
 そう言うと、斎が軽く目を見張る。
「……そういえば、凱の姉ちゃん、女学校行ってないんだっけ」
「うん……母さんが許さなかったみたいで。お金の無駄遣いって。……姉さんは行きたがっていたけど」
 斎はしばらく沈黙していて、口を開いた。
「そっかぁ……お前ら、仲良くなったんだなぁ……」
 なぜか斎は[漢字]感慨[/漢字][ふりがな]かんがい[/ふりがな]深そうだった。

 目当ての本を見つけて買い、本屋の外を出た。
「あー疲れた。……ってか凱お前は疲れねーの?」
 そう言って斎はたまたま通りかかった公園の長[漢字]椅子[/漢字][ふりがな]いす[/ふりがな]に寄り、座る。
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2025/11/11 14:25

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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