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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#8

第一章 始まり(8)

 驚いて下を見れば、横に倒された[漢字]水桶[/漢字][ふりがな]みずおけ[/ふりがな]があった。水がこぼれ、凱の足が[漢字]濡[/漢字][ふりがな]ぬ[/ふりがな]れている。
 後ろでひゅっと息を[漢字]呑[/漢字][ふりがな]の[/ふりがな]む音が聞こえた。振り返ると、顔を真っ青にした姉がいる。
 どうやら[漢字]拭[/漢字][ふりがな]ふ[/ふりがな]き掃除をしていたらしい。
「申し訳ございません……!」
 自分に非はないのに慌てて謝る姉に、なんとも言えない気持ちになる。
「申し訳ございませんでした、私がこんな場所に置くから——」
 そんなことはない、と凱が言おうとしたとき、
「——あら? 時庭の『お荷物』が何をしているのかしら?」
 くすくすと[漢字]嗤[/漢字][ふりがな]わら[/ふりがな]う声が耳をかすめた。
「本家の娘なのに使用人の真似事なんて、みっともないわよねぇ」
 声の方向へ顔を向ける。親戚の娘たちだった。親の影響か何で、姉をいびるようになったのだろう。
「まあ、凱様、こんなにびしょ濡れになって。きっと[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]さんがかけたのね。あなたが無能だから、凱様が霊力をお持ちになっていることを[漢字]妬[/漢字][ふりがな]ねた[/ふりがな]んだのかしら? それでも限度があるでしょう。奥様をお呼びした方が良いかしら?」
「え、いや、そういうことではなくて——」
 凱は彼女らの誤解を解こうと説明しようとする。だが、言葉がうまく出てこない。喉が干上がったかのように乾いた。
 姉を見ると「すみません、申し訳ありません」と繰り返しながら床に手をついて頭を深く下げている。

「——あら、何の騒ぎかしら?」
 今このとき、一番聞きたくなかった声が聞こえた。母だ。あの親戚たちが呼んだのだろう。案の定、姉が恐怖に満ちた顔で震える。
 母は姉の姿を認めると激しく顔を[漢字]歪[/漢字][ふりがな]ゆが[/ふりがな]ませた。
「——あなた。」
「すみません。申し訳ございません……!」
 母がまだ何も言っていないのに、姉はひたすら謝っている。
「凱やあの子達に何したの? 汚れた水をかけたと聞いたわ。本当性格が歪んでいるといったら」
「すみません……」
 凱が何かを言おうとしたが、やはり言葉が出てこない。後方であの親戚の娘たちが[漢字]蔑[/漢字][ふりがな]さげす[/ふりがな]んだような目で、黙って嗤っていた。
「ここまで母親に似ていると笑えてくるわね。さっさと死んでちょうだい。あなたなんて、いらないわ。いつまで[漢字]穀潰[/漢字][ふりがな]ごくつぶ[/ふりがな]しでいるのかしら。」
 姉は何も返さなかった。黙って震えている。

 息が苦しい。
 これ以上この場にいられるような気がしなかった。早くこの場から逃げ出したい。ここから離れたい。
 息を深く吸う。
「あの、約束があるので……」
 かろうじて、それだけ言う。
 逃げるように、家から出た。
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2025/10/21 10:25

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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