文字サイズ変更

【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#137

第八章 再会(6)

「それで、本題ね」
 久世が姿勢を正し、顔を上げる。
「朝水と話したの。あのね、お母さまの骨を分骨してもらいたくて」
 思いがけない話に、父が目を丸くする。
「琴子の?」
「そう。……死んだ後くらい、お父さまと[漢字]逢[/漢字][ふりがな]あ[/ふりがな]わせてやりたくて」
 朝水が不安そうに、異父姉と父を交互に見る。
「……そうか。分かった。手配する」
 久世の気持ちが分かったのだろう、父は二つ返事で受け入れた。
 母も反対しなかった。
「ありがとう」
 久世が頭を下げた。
「あとは、朝水をよろしく。美冬と一緒においでって誘ったんだけど、この子ときたら、ここに残るって言うんだもの」
 父がちらりと姉を見る。
「……承知した」
 久世がその様子を見て一つうなずく。そして外を見た。
「そろそろ、行くね。蓮と美冬を待たせているから」
「分かった」

 家族で見送りに出ることになった。
「おばさまー? おそーい!」
 早速美冬に文句を言われる。
「ごめんね、ちょっと話しすぎてしまって」
 美冬が久世に抱きついた。久世が美冬の頭を撫で、片手だけで抱き上げる。
 凱たちのいる方向を振り向いた。
「じゃあね。今までありがとう。どうかお元気で。またいつか会いましょう」
 そう言って笑った顔は、とても美しかった。
「はい。久世さん、蓮さん、美冬ちゃんも、お元気で」
 凱も頭を下げた。
「あさちゃん、あさちゃん、こっちきて」
 美冬に呼ばれ、姉が駆け寄る。
「ほんとにまたあそびにきてくれる? またあそびにいっていい?」
「うん。また遊びましょうね」
 姉がそう言うと、美冬はぱっと笑った。

 ふわっと頬に風を感じた。
 風の吹いてくる方向を見ると、近くに大きな桜の木があった。
 蕾が膨らみ、今にも咲かんとしている。
「……桜。ああそっか、もう春なのね」
 母がそっと呟く。その表情はいくらか安らかだった。
 咲いたら、どれほど美しいものとなるのだろうか。
 毎年見ているはずだが、今年は特別なもののように感じられた。
 いつのまにか その方向を見ていた久世や蓮も、そっと目を細める。
 そして、二人とも門の方向に向き、そっと足を踏み出した。
「じゃあねー!」
 蓮が凱たちに手を振る。
 凱も手を振り返した。
 やや遅れて、姉も手を振る。
 両親が頭を下げる。
 門の向こうで、三人の姿が見えなくなるまで凱は手を振っていた。 〈終〉
ページ選択

作者メッセージ

これまでお読みくださりありがとうございました!

2025/12/05 18:52

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
コメント

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は錦野 真名さんに帰属します

TOP