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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#134

第八章 再会(3)

 翌々日。
 よく休講していたこともあり、予定より遅れて修了式が執り行われた。
 戸井君はみんなに別れの挨拶をしていた。今日を限りでもう学校に来ることはないのだ。
 親が、同級生たちが死ぬ原因の一つであったのにも関わらず、皆、戸井君に優しかった。両親が『信者』と成り果ててしまった境遇に、同情したのだろう。
 退学後、商家に奉公に行くらしい。
 ちなみに[漢字]斎[/漢字][ふりがな]いつき[/ふりがな]はというと、修了式が始まる前に 教室に入ってきた教師に向かって吹き矢を飛ばして叱られていた。いつも通りだ。
 式終了後、これまたいつも通り 教師に呼び出しを食らって凱に泣きついてきたが、適当にあしらっておいた。
 一年の終わりくらい大人しくできないのだろうか。


 学校から帰る途中、百鬼一族の墓へと足を向けた。
 ここまで関わってしまった以上、ちゃんと[漢字]冥福[/漢字][ふりがな]めいふく[/ふりがな]を祈る義務があると思ったからだ。
『百鬼家之墓』
 たったそれだけしか書かれていない墓標の前に腰を下ろし、手を合わせる。
 ここにはいったい、何人の人の魂が埋まっているのだろう。馨のように若くして死んだ者も多かっただろう、彼らは幸せだったのだろうか。
 ぼんやりと考えていると、後ろから「凱君?」と聞き覚えのある声がした。
「……久世さん?」
 一ヶ月半もの間、つい一昨日まで意識がなかった人がそこにいた。
 左目に眼帯をし、髪を首のあたりでばっさりと切っていた。
 左の袖からは、手はのぞいていない。
「起きたんですか? 大丈夫なんですか、体は」
「起きた。体は……あんまり?」
「……それでよく医者の許可が下りましたね」
「許可取ってないからね。抜け出してきた」
「それ、駄目なやつじゃないですか」
 凱が突っ込むと、久世は悪戯っ子のように笑った。眼帯をしていても、亡き兄に似たその顔は美しかった。
「わざわざ墓参り? ありがとう」
 久世が腰を下ろす。
 寂しそうな目で、墓標を見つめる。
「これだけなんだね、あんなに人が死んだのに」
「……そうですね」
「でも、これくらいしかできないんでしょうね、体が残っている人なんて、ほとんどいないに等しいし」
 馨も、遺体は見つからなかった。無論、そこに立ちこもっていた他の人たちも。
 彼のいた邸であった、[漢字]灰燼[/漢字][ふりがな]かいじん[/ふりがな]がそこに残っただけ。
 久世が凱の方を見る。
「何人、生き残ったの?」
「五人、と聞いてます」
「五人……」
 そっと久世が[漢字]俯[/漢字][ふりがな]うつむ[/ふりがな]く。
「……他にもいるのね、生き残った人なんて。でも、私だけ長らえてしまった気がしてならない……」
 ぽつんと、つぶやく。
「……兄さんに会いたい。あんなに、一緒にいたのに」
 語尾が崩れる。
「まだ十九よ? こんなに早く逝くなんて、信じられない」
 涙声に変わる。
「兄さま、あちらで、お父さまとお母さまに、逢えたかな」
 あとは、すすり泣きと風の音だけが聞こえた。
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2025/12/02 10:40

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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