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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#130

第七章 闘い(25)

 それらの光が晴れる。凱は久世の方を見た。
 頬と首筋に切り傷がある。右肩のあたりが少し、左腕が大きくえぐれ、血が吹き出していた。心臓には達していないようだが、胸元も血に染まっている。
「あの紅い光が、お前の本気か? たったそれだけか。まあ、あれがなかったらお前は死んでいたな、百鬼久世」
 先ほどとは異なり、極めて冷静に、仁井戸が問う。
 久世は右腕で左目を押さえていた。そこからもおびただしく血が流れ出ている。
「お姉様……!」
 姉が叫ぶ。「姉さん」と声をかけて、凱は姉の肩を叩いて落ち着かせようとした。
 いまだ覚めぬ両親の隣に腰を下ろした戸井君は、何も言わずに戦況を見守っている。
 父も、ぼうっと見たまま何も言わない。
「片目を失明して、戦えるのか?」
 久世は何も言わない。
「まあいい。今度こそ終わりだ。この世に汚れた者は要らない。まあ、何もしなくともそのうち死ぬだろうが……」
 仁井戸が手をかざす。
「そうね。終わりね」
 久世が右腕で魔力を使って刀を作り、負傷した左腕を前に出す。そして。


 ———少しのためらいもなく、刀で左腕を斬り落とした。
「は……!?」
 その場にいた全員が絶句した。
 久世は一瞬、[漢字]苦悶[/漢字][ふりがな]くもん[/ふりがな]の表情を浮かべた。しかしすぐにもとの無表情に戻る。
「どうせ死ぬならいいでしょう? 仁井戸。貴方を殺さずして私は逝けない———」
 その瞳に宿っていたのは、強い憎悪だった。
 斬った左腕を仁井戸の方向へ蹴ると———それは爆発した。
 見ているもの全てが信じられなかった。
 炎は仁井戸の周りを囲み、魔法陣をあっという間に焼き尽くした。
 仁井戸が呆然としつつ、魔法陣を新たに作ろうとする。
 だが、それも炎によって阻まれた。
 それどころか、魔術を使うどころか、魔力も炎に阻まれて思うように使えないようで———。
 炎が仁井戸の体に到達する。
「ぐ、ああああああああ……!」
 あっという間に炎は仁井戸の体を包み込む。
 火刑にでも処されたようだった。
 やがて仁井戸の叫び声が聞こえなくなる。炎の中に消えた影も、だんだんと人の形を成さなくなった。
 それを確認すると、久世は糸が切れたかのように膝から崩れ落ちた。
「お姉様……!」
 姉が久世に駆け寄り、上半身を起こす。
 姉は羽織っていた上着で、川のように血が流れ出ている 左腕の斬り口の上をきつく縛った。
 父も、久世のもとに駆け寄る。
 失血がひどいのだろう、久世の顔は紙のように青白かった。
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2025/11/29 11:51

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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