それらの光が晴れる。凱は久世の方を見た。
頬と首筋に切り傷がある。右肩のあたりが少し、左腕が大きくえぐれ、血が吹き出していた。心臓には達していないようだが、胸元も血に染まっている。
「あの紅い光が、お前の本気か? たったそれだけか。まあ、あれがなかったらお前は死んでいたな、百鬼久世」
先ほどとは異なり、極めて冷静に、仁井戸が問う。
久世は右腕で左目を押さえていた。そこからもおびただしく血が流れ出ている。
「お姉様……!」
姉が叫ぶ。「姉さん」と声をかけて、凱は姉の肩を叩いて落ち着かせようとした。
いまだ覚めぬ両親の隣に腰を下ろした戸井君は、何も言わずに戦況を見守っている。
父も、ぼうっと見たまま何も言わない。
「片目を失明して、戦えるのか?」
久世は何も言わない。
「まあいい。今度こそ終わりだ。この世に汚れた者は要らない。まあ、何もしなくともそのうち死ぬだろうが……」
仁井戸が手をかざす。
「そうね。終わりね」
久世が右腕で魔力を使って刀を作り、負傷した左腕を前に出す。そして。
———少しのためらいもなく、刀で左腕を斬り落とした。
「は……!?」
その場にいた全員が絶句した。
久世は一瞬、[漢字]苦悶[/漢字][ふりがな]くもん[/ふりがな]の表情を浮かべた。しかしすぐにもとの無表情に戻る。
「どうせ死ぬならいいでしょう? 仁井戸。貴方を殺さずして私は逝けない———」
その瞳に宿っていたのは、強い憎悪だった。
斬った左腕を仁井戸の方向へ蹴ると———それは爆発した。
見ているもの全てが信じられなかった。
炎は仁井戸の周りを囲み、魔法陣をあっという間に焼き尽くした。
仁井戸が呆然としつつ、魔法陣を新たに作ろうとする。
だが、それも炎によって阻まれた。
それどころか、魔術を使うどころか、魔力も炎に阻まれて思うように使えないようで———。
炎が仁井戸の体に到達する。
「ぐ、ああああああああ……!」
あっという間に炎は仁井戸の体を包み込む。
火刑にでも処されたようだった。
やがて仁井戸の叫び声が聞こえなくなる。炎の中に消えた影も、だんだんと人の形を成さなくなった。
それを確認すると、久世は糸が切れたかのように膝から崩れ落ちた。
「お姉様……!」
姉が久世に駆け寄り、上半身を起こす。
姉は羽織っていた上着で、川のように血が流れ出ている 左腕の斬り口の上をきつく縛った。
父も、久世のもとに駆け寄る。
失血がひどいのだろう、久世の顔は紙のように青白かった。
頬と首筋に切り傷がある。右肩のあたりが少し、左腕が大きくえぐれ、血が吹き出していた。心臓には達していないようだが、胸元も血に染まっている。
「あの紅い光が、お前の本気か? たったそれだけか。まあ、あれがなかったらお前は死んでいたな、百鬼久世」
先ほどとは異なり、極めて冷静に、仁井戸が問う。
久世は右腕で左目を押さえていた。そこからもおびただしく血が流れ出ている。
「お姉様……!」
姉が叫ぶ。「姉さん」と声をかけて、凱は姉の肩を叩いて落ち着かせようとした。
いまだ覚めぬ両親の隣に腰を下ろした戸井君は、何も言わずに戦況を見守っている。
父も、ぼうっと見たまま何も言わない。
「片目を失明して、戦えるのか?」
久世は何も言わない。
「まあいい。今度こそ終わりだ。この世に汚れた者は要らない。まあ、何もしなくともそのうち死ぬだろうが……」
仁井戸が手をかざす。
「そうね。終わりね」
久世が右腕で魔力を使って刀を作り、負傷した左腕を前に出す。そして。
———少しのためらいもなく、刀で左腕を斬り落とした。
「は……!?」
その場にいた全員が絶句した。
久世は一瞬、[漢字]苦悶[/漢字][ふりがな]くもん[/ふりがな]の表情を浮かべた。しかしすぐにもとの無表情に戻る。
「どうせ死ぬならいいでしょう? 仁井戸。貴方を殺さずして私は逝けない———」
その瞳に宿っていたのは、強い憎悪だった。
斬った左腕を仁井戸の方向へ蹴ると———それは爆発した。
見ているもの全てが信じられなかった。
炎は仁井戸の周りを囲み、魔法陣をあっという間に焼き尽くした。
仁井戸が呆然としつつ、魔法陣を新たに作ろうとする。
だが、それも炎によって阻まれた。
それどころか、魔術を使うどころか、魔力も炎に阻まれて思うように使えないようで———。
炎が仁井戸の体に到達する。
「ぐ、ああああああああ……!」
あっという間に炎は仁井戸の体を包み込む。
火刑にでも処されたようだった。
やがて仁井戸の叫び声が聞こえなくなる。炎の中に消えた影も、だんだんと人の形を成さなくなった。
それを確認すると、久世は糸が切れたかのように膝から崩れ落ちた。
「お姉様……!」
姉が久世に駆け寄り、上半身を起こす。
姉は羽織っていた上着で、川のように血が流れ出ている 左腕の斬り口の上をきつく縛った。
父も、久世のもとに駆け寄る。
失血がひどいのだろう、久世の顔は紙のように青白かった。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
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- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)