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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#122

第七章 闘い(17)

 竜ヶ崎に着いた。あたりは山深い。
 宿を探してさらに一泊休んでから、山へ向かった。
 灰色の雲がその山を覆っていた。異様な雰囲気だ。
 風もないのに、ざわざわと奇妙に木が揺れている。
「……行こう」
「うん」
 ぐっと、足に力をこめ、森の中に入った。
 入ってしばらくずっと、歩き続けた。あたりは木以外、何もない。
 覚悟していた、妖怪もいなかった。
 不審に思いつつ、さらに歩みを進める。
「……あ。凱くん」
 四半刻ほど歩いた頃、戸井君が指を差す。その方向に目を向けると、頭が潰れたような人影が見えた。
 妖怪だ。
 二人で、気づかれないように歩く。
 バチっと黄色の光がどこかで見え、思わず目を瞑る。再び目を開けると、その妖怪は消えてしまっていた。
「なんだろ、さっきの光……」
 戸井君が不思議そうに言う。
 口には出さなかったが、馨の魔力ではなかろうかと思った。
 その後も歩き続けたが、妖怪は不思議と見なかった。

「……っわっ……!」
 そのとき、髪を振り乱した女の人が、こちらを見つけるなり駆けてくる。
「助けて……!」
 突然、助けを呼ばれた。
「だ、大丈夫ですか?」
 驚きつつ声をかけると、その女の人は、
「私、私、[漢字]騙[/漢字][ふりがな]だま[/ふりがな]されてたの。でもみんな、ここからは逃げられない———」
 と言って泣き始めてしまった。相当に取り乱しているみたいだ。
「この人、信者の人だ。僕の家に、ときどき来ていた」
 戸井君が女の人の顔を覗き込んでそう言う。
「もしかして、仁井戸さんのことですか?」
 凱が問うと、彼女は肩を震わせる。そして、微かにうなずいた。
「何かあったんですか? 向こうでは、何が起こっているんでしょうか」
「……私、帝都のはずれで農家をやっていたのよ」
 女の人がぽつぽつと話し始める。
「ある日、家によく分からない人が来た。魔法使いが、どうたらこうたらって。最初は相手にしていなかったんだけど、一度でいいから来てほしいって、お金も渡すって……」
 彼女はしゃくりあげる。
「農家だから貧しくてね、お金が貰えるならって、それで行ってみたら、よく分からなくなった」
 子どもを連れてこいと言われたから連れていった。
 子どもは、妖怪に喰べられた。その様子を見ていたはずだが、特に何も感じられなかった。
 それを聞いた夫に離縁され、家を追い出された。仁井戸にそれを話したら、衣食住を与えてくれた。
 竜ヶ崎に来いと言われたから行った。
 行って、しばらく仁井戸と行動を共にしていて、しばらく経った ある日———
 ふと、黄色の光を見た。
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2025/11/21 08:12

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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