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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#120

第七章 闘い(15)

「無いと思うわよ。とにかく匂いがすごかったもの。密閉されたところでないと、難しいんじゃないかしら。そんなところ、このあたりはここ以外は探したし。それに、いくら洗脳されているといえど裏切りが出たらまずいでしょう? 裏切りとまではいかなくとも、吐かされるかもしれないんだからさ、私たちがやったように」
「あー、そうか」
「あと、さっき行ったとき、妖怪は、あの洗脳に特化した奴だけだった。もうほとんどは[漢字]竜ヶ崎[/漢字][ふりがな]りゅうがさき[/ふりがな]にいるんじゃない? 今更行っても、きっともぬけの殻よ」
 ああそっか、と凱も納得した。
「というわけで私、今度こそ竜ヶ崎に行くから。美冬をよろしく」
 久世が美冬を下ろす。「いやーだー」と美冬がぐずった。
「ごめんね美冬、一緒に遊んであげられなくて」
 久世が眉尻を下げる。
「いやーだー、おばさまといっしょにいるのー!」
「また今度、遊びましょうね。ごめんね」
 久世は美冬を抱き寄せる。そっと姪の頬を撫でた。
「じゃあね。蓮、美冬をよろしくね。」
「任された」
 蓮がうなずくのを見ると、久世は文字通り消えた。
 美冬が呆然とした顔をして、火がついたように泣き始めた。
 その頭を、蓮はそっと撫でていた。
「久世は、美冬ちゃんの母代わりだもんなぁ……」
 蓮がぼんやりとつぶやく。
「蓮さんは、竜ヶ崎に行くんですか」
「行かないよ、美冬ちゃんを任されてるんだから」
「凱は、行きたいのか」
 不意に、斎が会話に入ってきた。
 俯いた。行きたいのかどうか、今では分からない。
「あ、蓮さん。姉さんは今どこにいるんですか」
 はっと思いつき、聞く。姉が失踪して、一週間以上の時間が経った。百鬼の世話になっているという情報以外、姉の行き先は何も分からない。
「[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]ちゃん? 朝水ちゃんは〜、どこだっけなー?」
「え? あさちゃん?」
 ふーむと蓮が考えている隣で、泣き止んだらしい美冬が口を開く。
「あさちゃんね、みふといっぱいあそんでくれたんだよ」
 美冬は、姉と面識があるらしい。考えてみれば姉にとっても美冬は姪に当たるので、久世が引き合わせても不思議ではない。
「え?……美冬ちゃんと一緒にいた?」
 蓮が目を見開いた。
「どうかしたんですか?」
 蓮の反応に、凱が不思議に思って聞く。
「美冬ちゃん、ついこのあいだまで竜ヶ崎にいたんだよ。馨に、父親についていって」
「え……?」
 なら、姉は竜ヶ崎に行ったのか。
 ますます不安になる。
 凱は顔を上げた。
「あの、やっぱり僕、竜ヶ崎に行きたいです」
 姉の安否が気になった。
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2025/11/19 10:00

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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