「無いと思うわよ。とにかく匂いがすごかったもの。密閉されたところでないと、難しいんじゃないかしら。そんなところ、このあたりはここ以外は探したし。それに、いくら洗脳されているといえど裏切りが出たらまずいでしょう? 裏切りとまではいかなくとも、吐かされるかもしれないんだからさ、私たちがやったように」
「あー、そうか」
「あと、さっき行ったとき、妖怪は、あの洗脳に特化した奴だけだった。もうほとんどは[漢字]竜ヶ崎[/漢字][ふりがな]りゅうがさき[/ふりがな]にいるんじゃない? 今更行っても、きっともぬけの殻よ」
ああそっか、と凱も納得した。
「というわけで私、今度こそ竜ヶ崎に行くから。美冬をよろしく」
久世が美冬を下ろす。「いやーだー」と美冬がぐずった。
「ごめんね美冬、一緒に遊んであげられなくて」
久世が眉尻を下げる。
「いやーだー、おばさまといっしょにいるのー!」
「また今度、遊びましょうね。ごめんね」
久世は美冬を抱き寄せる。そっと姪の頬を撫でた。
「じゃあね。蓮、美冬をよろしくね。」
「任された」
蓮がうなずくのを見ると、久世は文字通り消えた。
美冬が呆然とした顔をして、火がついたように泣き始めた。
その頭を、蓮はそっと撫でていた。
「久世は、美冬ちゃんの母代わりだもんなぁ……」
蓮がぼんやりとつぶやく。
「蓮さんは、竜ヶ崎に行くんですか」
「行かないよ、美冬ちゃんを任されてるんだから」
「凱は、行きたいのか」
不意に、斎が会話に入ってきた。
俯いた。行きたいのかどうか、今では分からない。
「あ、蓮さん。姉さんは今どこにいるんですか」
はっと思いつき、聞く。姉が失踪して、一週間以上の時間が経った。百鬼の世話になっているという情報以外、姉の行き先は何も分からない。
「[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]ちゃん? 朝水ちゃんは〜、どこだっけなー?」
「え? あさちゃん?」
ふーむと蓮が考えている隣で、泣き止んだらしい美冬が口を開く。
「あさちゃんね、みふといっぱいあそんでくれたんだよ」
美冬は、姉と面識があるらしい。考えてみれば姉にとっても美冬は姪に当たるので、久世が引き合わせても不思議ではない。
「え?……美冬ちゃんと一緒にいた?」
蓮が目を見開いた。
「どうかしたんですか?」
蓮の反応に、凱が不思議に思って聞く。
「美冬ちゃん、ついこのあいだまで竜ヶ崎にいたんだよ。馨に、父親についていって」
「え……?」
なら、姉は竜ヶ崎に行ったのか。
ますます不安になる。
凱は顔を上げた。
「あの、やっぱり僕、竜ヶ崎に行きたいです」
姉の安否が気になった。
「あー、そうか」
「あと、さっき行ったとき、妖怪は、あの洗脳に特化した奴だけだった。もうほとんどは[漢字]竜ヶ崎[/漢字][ふりがな]りゅうがさき[/ふりがな]にいるんじゃない? 今更行っても、きっともぬけの殻よ」
ああそっか、と凱も納得した。
「というわけで私、今度こそ竜ヶ崎に行くから。美冬をよろしく」
久世が美冬を下ろす。「いやーだー」と美冬がぐずった。
「ごめんね美冬、一緒に遊んであげられなくて」
久世が眉尻を下げる。
「いやーだー、おばさまといっしょにいるのー!」
「また今度、遊びましょうね。ごめんね」
久世は美冬を抱き寄せる。そっと姪の頬を撫でた。
「じゃあね。蓮、美冬をよろしくね。」
「任された」
蓮がうなずくのを見ると、久世は文字通り消えた。
美冬が呆然とした顔をして、火がついたように泣き始めた。
その頭を、蓮はそっと撫でていた。
「久世は、美冬ちゃんの母代わりだもんなぁ……」
蓮がぼんやりとつぶやく。
「蓮さんは、竜ヶ崎に行くんですか」
「行かないよ、美冬ちゃんを任されてるんだから」
「凱は、行きたいのか」
不意に、斎が会話に入ってきた。
俯いた。行きたいのかどうか、今では分からない。
「あ、蓮さん。姉さんは今どこにいるんですか」
はっと思いつき、聞く。姉が失踪して、一週間以上の時間が経った。百鬼の世話になっているという情報以外、姉の行き先は何も分からない。
「[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]ちゃん? 朝水ちゃんは〜、どこだっけなー?」
「え? あさちゃん?」
ふーむと蓮が考えている隣で、泣き止んだらしい美冬が口を開く。
「あさちゃんね、みふといっぱいあそんでくれたんだよ」
美冬は、姉と面識があるらしい。考えてみれば姉にとっても美冬は姪に当たるので、久世が引き合わせても不思議ではない。
「え?……美冬ちゃんと一緒にいた?」
蓮が目を見開いた。
「どうかしたんですか?」
蓮の反応に、凱が不思議に思って聞く。
「美冬ちゃん、ついこのあいだまで竜ヶ崎にいたんだよ。馨に、父親についていって」
「え……?」
なら、姉は竜ヶ崎に行ったのか。
ますます不安になる。
凱は顔を上げた。
「あの、やっぱり僕、竜ヶ崎に行きたいです」
姉の安否が気になった。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)