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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#7

第一章 始まり(7)

[水平線]
 ぎし、と扉が開く音がする。扉の向こうから、青年が姿を見せる。
「帰ってきたよ、——」
 青年がそう声をかける。奥から若年の女性がやってきた。
「おかえり、兄さま」
 そう言って彼女は微笑んだ。しかしすぐに、目を伏せる。
「あの子の様子は、どうだったの?」
 青年は顔を歪めて唇をかみ、ぎゅっと目を閉じた。そのまま絞り出すように言う。
「……相変わらず、だったよ」
 青年はゆっくりと、もう一度目を開けた。
 そこから[漢字]覗[/漢字][ふりがな]のぞ[/ふりがな]いたのは、薄橙の瞳だった。

[水平線]
 二週間後。
 学校から帰ったあと、凱は珍しくまっすぐ家に帰った。
 そろそろ馨の調査の結果でも出ているだろうかと思ったからだ。
 凱は自室に荷物を置くと、母の部屋を訪ねた。
 戸を叩くと、母の「はい」という声がする。
「失礼します。 あ、お母さん、馨さんの調査の結果は出ましたか。」
 凱が問うと、母は眉根を寄せて、首を振った。
「実は先ごろ、頼んでいた探偵の方がいらっしゃったのだけれど——全く分からないんですって。住んでいるところも、家族構成も、年齢も、何もかも」
 え、と喉の奥から声が漏れた。
 時庭家はそれなりに大きい家である。その時庭家が雇った探偵を以てしてでも、何も分からないとは。
 ——いったい何者なのだろうか。
「ねぇ凱、その方、一体、どういう人なの? 」
「分かりません。——あの夏祭りのあと、会っていないから。」
「そう……」
 しばらく沈黙が続いた。それを破るように、母が口を開く。
「あまり変な人と付き合ったら駄目よ。凱なら大丈夫だと思うけど、あの神社のお坊ちゃんのこともありますからね」
 斎のことを言っているのだろう。昨日は どこで手に入れたのか[漢字]鸚鵡[/漢字][ふりがな]オウム[/ふりがな]やら雀やら[漢字]烏[/漢字][ふりがな]からす[/ふりがな]やら、鳥を大量に学校に連れてきてしっかり教師に𠮟られていた。
 それを思い出して少しため息をつきつつ、「はい」と答えて凱は母の部屋を出た。

 内海馨。
 彼はどこにいるのだろう。何をしているのだろう。どうして何も分からないのだろう。
 両親が誰かを調べることは度々あったが、このようなことは一度としてなかったはずだ。

 考え事をしながら歩いていたら、ゴン、と何かに足がぶつかった。
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2025/10/21 10:24

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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