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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#117

第七章 闘い(12)

 不思議なことに、邪魔はない。
 階段を登ると、視界が明るくなった。思わず目を細める。
 さらに階段を登り切り、廊下の方に出る。
 ここがどこか、やはりよく分からない。意識が混濁しているのだろう。
 玄関の前で、誰かがいた。
 同じ年頃の男の子がうずくまっている。膝立ちして、その額に触り微動だにしない女性。
 女性の薄茶の髪に目が引かれた。どちらにも見覚えがある。でも、思考がうまくまとまらず、思い出せない。
「———はい、お[漢字]終[/漢字][ふりがな]しま[/ふりがな]い」
 女性が動いた。男の子が顔を上げて、女性の顔を見た。
「大丈夫?」
「は、い」
 女性の問いかけに男の子がうなずく。
 そっとそっちの方に寄ると、女性が気づいた。薄紅の瞳が自分を捉える。
「……凱君?」
 [漢字]凱[/漢字][ふりがな]かい[/ふりがな]。自分の名前。それを思い出すと、少しだけ、意識がはっきりした。
 一つ深呼吸すると、視界が明瞭になった。
 芋づる式に記憶が戻っていく。
 目の前の人たちは、戸井脩一君と、百鬼久世さん。
 拠点を探るためにここに来て。そうしたら、洗脳された戸井君がいて。仲間の信者の人たちが現れて、地下に引き[漢字]摺[/漢字][ふりがな]ず[/ふりがな]り込まれて……
 全てを思い出すと、すっと背筋が冷たくなった。
 自分も洗脳されかかっていたのかもしれない。
 ほとんど勘に頼ってここに来たが、それで良かったのだろう。
 ここまで思い出して考えるのに、おそらく一秒もかからなかった。
「久世、さん?」
 声をかけると、女性———久世が安堵したようにそっと微笑んだ。
「あ、よかった、目が元に戻った」
「おかしかったですか……?」
「おかしかった。虚ろな感じ」
 自分の名前すら思い出せなかったのに、おかしくなかったはずがないだろう。
 久世が戸井君に視線を戻す。戸井君はうとうとしていた。
 さっきとは違い、凱の視認と勘が一致しているのを確認して安堵する。
「あの、竜ヶ崎に行くって言ってましたよね……? だから、久世さんじゃなくて蓮さんに連絡したんですけど……」
「そうだったんだ。……あの後ね、兄さんに そっちに行くって言ったら、全力で止められて。こっちは何とかするから絶対来るな、と」
 妹を巻き込みたくないのだろう。
「蓮になんとかしろ、と言われたんだよね。そうはいっても、これ、精神に関係するやつだよね? 私の守備範囲じゃないんですが」
 兄さんには頼れないしなー、と久世はぼやく。
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2025/11/16 07:48

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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