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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#115

第七章 闘い(10)

 戸井君は洗脳させられていた。ただ、目の前の戸井君が人なのか妖怪なのかは分からない。
 禁忌だが、人を妖怪に変じさせることは理論上可能なのだ。
 しかし、本人ではない別の妖怪が特定の人間に擬態することはどれほど強い妖怪でも難しいと言われている。
 どのようにしてやったのか、凱には分からない。あの地下が、ただのものではないことは、はっきりと分かった。
「斎、外に出ていて。日が[漢字]傾[/漢字][ふりがな]かたむ[/ふりがな]く前に僕が出てこなかったら、誰かを呼んで」
 そう言いながら、父に宛てて式を作る。この現状を、式に書きのせて送り出した。
 斎は一瞬[漢字]逡巡[/漢字][ふりがな]しゅんじゅん[/ふりがな]したようだが、すぐに玄関の方へ歩き出す。
 届かないかもしれない、と思いながら[漢字]蓮[/漢字][ふりがな]れん[/ふりがな]宛にも式を作り、同様の内容をのせて送り出した。

[水平線]
 斎が玄関の向こうに消えたのを見て、凱は戸井君と向き直った。
「戸井君。聞きたいことがある」
「何?」
「[漢字]一[/漢字][ふりがな]いち[/ふりがな]。仁井戸さんの目的は?」
「害を及ぼすものを滅し、誰もが幸せになる世界を作ること」
 即答だった。そして、言っている内容はあの話の通じない男とまるっきり同じである。
「その害を及ぼすものとは?」
「[漢字]百鬼[/漢字][ふりがな]なぎり[/ふりがな]。」
 予想通りの回答だった。
「二。地下には、何があった?」
「行ってみれば分かるよ」
「行きたくないから聞いているんだけど」
 思わず語気が強くなる。
「行ってみれば分かるよ」
 戸井君は、同じ内容を繰り返すだけだった。
 ひしひしと感じる異様な雰囲気。これが、『信者』が[漢字]纏[/漢字][ふりがな]まと[/ふりがな]う空気なのか。
 ただ洗脳させられているだけではないか。
「三。」
 二つ目の質問の回答を得るのは諦めて、口を動かす。
「戸井君、ここの邸に入ったとき、何か変わったことあった?」
 あまり質問の[漢字]体[/漢字][ふりがな]てい[/ふりがな]をなしていない質問。でも、何か[漢字]掴[/漢字][ふりがな]つか[/ふりがな]めるのなら———。
「……何かあったっけ?」
 ぽかんとしている戸井君。この質問も駄目なようだった。
 どうしようか。
(———あ。そうだ)
「四。戸井君、これからどうするの?」
「……さあ? あの方からは何も言われていないし……」
 仁井戸の指示に依存するらしい。
「仁井戸さんとは、何で連絡を取るの?」
「……? 分かんない」
「仁井戸さんは、今何やっているの?」
「分かんない」
 駄目だ。本当に何も収穫がない。
 凱は口を閉じ、しばらく沈黙が流れた。
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2025/11/15 08:43

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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