翌日。仁井戸の邸まで向かおうと家を出ると、門の前には既に斎がいた。
「凱」
斎が凱に気付き、声をかける。
「これから行くっけど、昨日の情報、間違えていよな? どこから入手したんだ?」
「戸井君が、発つ前に僕に手紙を届けてくれたんだ。戸井君の両親と、仁井戸さんがやり取りしたと思われる」
「あー、なるほど。まあ、それはいい収穫だった」
それだけの説明で察したらしい。斎が歩き始めた。
「ここが、仁井戸の邸か?」
表札が『仁井戸』と書かれた邸の前に立つ。凱が新年の挨拶に来たときと同じ邸だった。
「そうみたいだよ」
「ん、じゃ入るか」
凱が引き戸を開けてみようとするが、鍵がかかっているのか開かない。考えてみれば当たり前のことである。
「こんなこともあろうかと」
斎が懐から針金を取り出した。
それを鍵穴のところに差し込み、ガチャガチャと回す。
ガタン、と音が鳴り、開錠した。
「わ、すごい」
凱が心からそう言うと、
「[漢字]伊達[/漢字][ふりがな]だて[/ふりがな]に悪戯坊主やってるんじゃないからな」
と斎は得意げに鼻を鳴らしていた。
中に入ると、玄関周りは普通だった。門松が飾られていないところ以外は、やはり新年に行ったのと同じだ。
さらに奥の方に行くと、カツカツと音が聞こえた。階段を登るような音だ。
ここは平屋。二階などない。だから、この音は———。
「……早く行くぞ」
斎がこれ以上なく真剣な顔をして、急ぎ足で歩き始めた。
二人が階段を見たのと、階段を登りきった人間と会うのとは同じ頃合いだった。
「……あれ? 斎くんに凱くん?」
そこにいるのは、戸井君だった。
[水平線]
そこにいるのは、戸井君だった。
なのに、そこにいるのは戸井君じゃないと、本能が言っている。
「ああなんだ、戸井か。そんで、どうだった? 中は———」
「おもしろかったよ。……ほら、行ってみて」
戸井君が先ほど上がってきた階段を指差す。
「駄目っ……!」
凱は[漢字]咄嗟[/漢字][ふりがな]とっさ[/ふりがな]に、斎の腕を[漢字]掴[/漢字][ふりがな]つか[/ふりがな]んでいた。
そこにいるのは戸井君じゃないと、本能が言っている。
「ねえ、君、戸井君じゃないよね……!?」
気がついたら、そう口をついて出てきた。
斎か驚いたように、凱を見ている。
「え? 凱くん、何言っているの? 僕は僕だよ、僕は凱くんが知ってる戸井[漢字]脩一[/漢字][ふりがな]しゅういち[/ふりがな]だよ」
戸井君は心底不思議そうにそう言った。
この邸が、この邸自体が妖怪であるかのようだ。不気味に感じる。
———戸井君を行かせなきゃよかったと、凱は心の底から思った。
「凱」
斎が凱に気付き、声をかける。
「これから行くっけど、昨日の情報、間違えていよな? どこから入手したんだ?」
「戸井君が、発つ前に僕に手紙を届けてくれたんだ。戸井君の両親と、仁井戸さんがやり取りしたと思われる」
「あー、なるほど。まあ、それはいい収穫だった」
それだけの説明で察したらしい。斎が歩き始めた。
「ここが、仁井戸の邸か?」
表札が『仁井戸』と書かれた邸の前に立つ。凱が新年の挨拶に来たときと同じ邸だった。
「そうみたいだよ」
「ん、じゃ入るか」
凱が引き戸を開けてみようとするが、鍵がかかっているのか開かない。考えてみれば当たり前のことである。
「こんなこともあろうかと」
斎が懐から針金を取り出した。
それを鍵穴のところに差し込み、ガチャガチャと回す。
ガタン、と音が鳴り、開錠した。
「わ、すごい」
凱が心からそう言うと、
「[漢字]伊達[/漢字][ふりがな]だて[/ふりがな]に悪戯坊主やってるんじゃないからな」
と斎は得意げに鼻を鳴らしていた。
中に入ると、玄関周りは普通だった。門松が飾られていないところ以外は、やはり新年に行ったのと同じだ。
さらに奥の方に行くと、カツカツと音が聞こえた。階段を登るような音だ。
ここは平屋。二階などない。だから、この音は———。
「……早く行くぞ」
斎がこれ以上なく真剣な顔をして、急ぎ足で歩き始めた。
二人が階段を見たのと、階段を登りきった人間と会うのとは同じ頃合いだった。
「……あれ? 斎くんに凱くん?」
そこにいるのは、戸井君だった。
[水平線]
そこにいるのは、戸井君だった。
なのに、そこにいるのは戸井君じゃないと、本能が言っている。
「ああなんだ、戸井か。そんで、どうだった? 中は———」
「おもしろかったよ。……ほら、行ってみて」
戸井君が先ほど上がってきた階段を指差す。
「駄目っ……!」
凱は[漢字]咄嗟[/漢字][ふりがな]とっさ[/ふりがな]に、斎の腕を[漢字]掴[/漢字][ふりがな]つか[/ふりがな]んでいた。
そこにいるのは戸井君じゃないと、本能が言っている。
「ねえ、君、戸井君じゃないよね……!?」
気がついたら、そう口をついて出てきた。
斎か驚いたように、凱を見ている。
「え? 凱くん、何言っているの? 僕は僕だよ、僕は凱くんが知ってる戸井[漢字]脩一[/漢字][ふりがな]しゅういち[/ふりがな]だよ」
戸井君は心底不思議そうにそう言った。
この邸が、この邸自体が妖怪であるかのようだ。不気味に感じる。
———戸井君を行かせなきゃよかったと、凱は心の底から思った。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)