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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#114

第七章 闘い(9)

 翌日。仁井戸の邸まで向かおうと家を出ると、門の前には既に斎がいた。
「凱」
 斎が凱に気付き、声をかける。
「これから行くっけど、昨日の情報、間違えていよな? どこから入手したんだ?」
「戸井君が、発つ前に僕に手紙を届けてくれたんだ。戸井君の両親と、仁井戸さんがやり取りしたと思われる」
「あー、なるほど。まあ、それはいい収穫だった」
 それだけの説明で察したらしい。斎が歩き始めた。

「ここが、仁井戸の邸か?」
 表札が『仁井戸』と書かれた邸の前に立つ。凱が新年の挨拶に来たときと同じ邸だった。
「そうみたいだよ」
「ん、じゃ入るか」
 凱が引き戸を開けてみようとするが、鍵がかかっているのか開かない。考えてみれば当たり前のことである。
「こんなこともあろうかと」
 斎が懐から針金を取り出した。
 それを鍵穴のところに差し込み、ガチャガチャと回す。
 ガタン、と音が鳴り、開錠した。
「わ、すごい」
 凱が心からそう言うと、
「[漢字]伊達[/漢字][ふりがな]だて[/ふりがな]に悪戯坊主やってるんじゃないからな」
 と斎は得意げに鼻を鳴らしていた。
 中に入ると、玄関周りは普通だった。門松が飾られていないところ以外は、やはり新年に行ったのと同じだ。
 さらに奥の方に行くと、カツカツと音が聞こえた。階段を登るような音だ。
 ここは平屋。二階などない。だから、この音は———。
「……早く行くぞ」
 斎がこれ以上なく真剣な顔をして、急ぎ足で歩き始めた。
 二人が階段を見たのと、階段を登りきった人間と会うのとは同じ頃合いだった。
「……あれ? 斎くんに凱くん?」
 そこにいるのは、戸井君だった。 

[水平線]
 そこにいるのは、戸井君だった。
 なのに、そこにいるのは戸井君じゃないと、本能が言っている。
「ああなんだ、戸井か。そんで、どうだった? 中は———」
「おもしろかったよ。……ほら、行ってみて」
 戸井君が先ほど上がってきた階段を指差す。
「駄目っ……!」
 凱は[漢字]咄嗟[/漢字][ふりがな]とっさ[/ふりがな]に、斎の腕を[漢字]掴[/漢字][ふりがな]つか[/ふりがな]んでいた。
 そこにいるのは戸井君じゃないと、本能が言っている。
「ねえ、君、戸井君じゃないよね……!?」
 気がついたら、そう口をついて出てきた。
 斎か驚いたように、凱を見ている。
「え? 凱くん、何言っているの? 僕は僕だよ、僕は凱くんが知ってる戸井[漢字]脩一[/漢字][ふりがな]しゅういち[/ふりがな]だよ」
 戸井君は心底不思議そうにそう言った。
 この邸が、この邸自体が妖怪であるかのようだ。不気味に感じる。
 ———戸井君を行かせなきゃよかったと、凱は心の底から思った。
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2025/11/14 07:03

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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