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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#100

第六章 真実(14)

 手に持っていた手鏡を見つめる。
(何か、あるのかな)
 ただ、疑問に思っていたことはほとんど解決してしまったので、手鏡は必要ない気もした。
 両親に断り、凱は手鏡を持ったまま自分の部屋に戻った。
 手鏡を持って光にかざしたりしてみても、前と変わらず『かおるへ』、『だいすき』、『げんきでね』、『おかあさんより』と書かれているだけだった。
 手拭きを持ってきて鏡の表面をよく拭き、もう一度かざしてみる。
(! 見える……?)
『かおるへ
 はなれていても かおるのことがだいすきだからね
 どうかげんきでね
 くぜをよろしくね
 そばにいられなくてごめんなさい
 おかあさまより』
(……あ。)
 かすれていて読みづらかったが、間違いなくそう書かれてあった。
 永姫が時庭に嫁ぐ際にまだ幼い馨に渡したのだろう。
 母として子どもを、それも亡き最愛の夫の忘れ形見を置いていくのは心苦しかったに違いない。
 じっと見ていると、今度は別の文が現れた。前に見たときには見えなかったものだ。
『くぜへ
 はなれていても くぜのことがだいすきだからね
 どうかげんきでね
 かおるとなかよくね
 そばにいられなくてごめんなさい
 おかあさまより』
(久世さんにも……?)
 兄妹に贈ったものだったらしい。よく考えれば当然のことだ。
 何かに導かれるように鏡の表面にそっと触れると、きらりと鏡が光り出す。

[水平線]
『[漢字]永[/漢字][ふりがな]えい[/ふりがな]ー、降りてこーい! いつまで[漢字]拗[/漢字][ふりがな]す[/ふりがな]ねているんだよ?』
『いやーだ〜、降りないもん!』
『なんでだよー?』
 十くらいの年頃の男の子と、十にも満たないくらいの年頃の女の子がそこにいた。
 男の子の方は馨や[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]によく似た顔立ち、女の子の方は朝水に似た顔立ちで、後の兄妹の両親だと分かる。男の子の瞳は兄妹と同じ薄橙で、女の子の方は薄い青色の瞳をしている。
 女の子———[漢字]永姫[/漢字][ふりがな]えいき[/ふりがな]は木に登り、枝に腰掛けてうずくまっていた。
『だって、だって、こと がひどいのだもの』
『また姉妹で喧嘩したのかよ。口喧嘩で妹に勝てないからって拗ねるなよ。そこは危ないからさっさと降りてこい』
 よく妹と喧嘩していたらしい。喧嘩するほど仲が良いということか。
『降りないって!———っきゃっ!』
 永姫が動いた拍子に彼女の座っていた枝が折れる。そこから転落した。
 転落した先へ男の子が動き、ばっと永姫を抱きかかえた。
『ほら、言わんこっちゃない。ホント世話の焼ける奴だな。痛くはないか?』
 なんとなくかっこいいと思ってしまった。
『……うん』
 しょんぼりした様子で永姫が答える。
『じゃ、行くぞ』
 そう言って手を引こうとする男の子に、
『……[漢字]司[/漢字][ふりがな]つかさ[/ふりがな]、おんぶ』
 と永姫が甘える。
 男の子——[漢字]司[/漢字][ふりがな]つかさ[/ふりがな]は、軽くため息を吐いて、永姫をおぶった。

 場面が変わった。
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作者メッセージ

兄妹の両親のシーンが一番、筆が進んだ記憶があります。

2025/11/02 10:02

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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