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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#99

第六章 真実(13)

 襲撃された際に凱のもとに届いた文を思い出した。あれは、仁井戸か、その配下が出したものなのだろうか。———凱を巻き込むために。
「その後、ちょっと時間をおいて、たくさん妖怪が出始めた……盲点だったの」
 百鬼の者も討伐に駆り出された。妖怪は人を喰えば食うほど強くなるので邸に害をなす前に早めに討伐する必要があったことと、一般人の犠牲者を出さないようにするためだ。
 世里、[漢字]夕癸[/漢字][ふりがな]ゆうき[/ふりがな]を始め、多くの死傷者が出た。
「私、世里さんのことも夕癸のことも他のみんなのことも、助けられなかった」
 蓮の言っていた『強い子』とは久世のことか。
「人が少なくなるとどうなるか分かる? ———邸が維持出来なくなる」
 邸を守る人間が減ってしまうから。
「そして、兄さまが何人かの親戚を連れて邸からいなくなったの。行き先は、そのときは聞いていなかった」
 妹の久世と同様に魔力の強い馨がいなくなったことは大きな痛手で、いよいよ持ち堪えられなくなった首塚の邸は、陥ちた。それが一昨日だ。
 当主家族を始め、邸に残っていた皆が自害したという。
(あの『ご当主様』も亡くなったのか)
「仁井戸さんが求めているのは魔力を受け継ぐ者の[漢字]殲滅[/漢字][ふりがな]せんめつ[/ふりがな]だから———当主がいなくなっても、この闘いは終わらない」
 一族を統率する役目を担う当主がいなくなったのは、百鬼にとってはかなりの打撃なのは容易に察せた。
「どうして馨さんは、出て行ったんですか?」
「拠点は分散していた方がいいでしょう? それに、兄さんが行っても行かなくても、どのみち首塚は陥ちていた」
「……馨さんと久世さんは、大丈夫なんですか。姉さんも、美冬ちゃんでしたっけ、馨さんの娘さんも」
「さあ……? どうかしら。こればっかりはねぇ」
 社交辞令のような微笑みを張り付けたままの久世の顔から、感情は読み取れなかった。
「『そのときは聞いていなかった』って言ってましたよね。今は、馨さんが、どこにいるか知っているんですか。」
「竜ヶ崎の邸。[漢字]舞鶴[/漢字][ふりがな]まいづる[/ふりがな]が教えてくれた」
 ———蓮が受けた知らせはそのことか。
 久世が自分の懐の中を探る。
「これ、あげる。」
 そっと久世が取り出したのは、あの手鏡だった。
「じゃあ、もう帰るね」
 凱が手鏡を受け取ったのを見ると、久世は立ち上がった。
「え?……また来るんですか?」
 引き止めると、久世は視線を空に投げた。
「……来ないかも」
「え。」
「私も行くの。竜ヶ崎へ。ね?」
 何が「ね?」なのかはさっぱり分からない。
「じゃあね」
 にっこりと美しく微笑み、久世は行ってしまった。
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2025/11/01 10:55

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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