「『百鬼に[漢字]与[/漢字][ふりがな]くみ[/ふりがな]する者、百鬼に賛同する者も滅する』、と。どういうことか分かる?」
「……え? あ——」
話を振られる。
少し考えて、気づいた。
「時庭も、滅ぼす対象だってことですか……? 姻戚関係に、あったから……」
「そう。頭良いのね、凱君。」
久世がにっこりと微笑んだ。
「それはおかしいでしょう……! 不本意だったのよ……!?」
黙っていた母が、声を上げる。
「そうね。おかしいわね。そもそも、向こうから振ってきた縁談だったのに。……でも、きっとそれが目的だったのよ。仁井戸さんは、時庭の家のことも気に入らないんでしょう」
父が絶句した。
「だから、最初に言ったでしょう? 『仁井戸さんを信用しないでください』と。———今度こそ分かってくれた?」
———そういう意味だったのか。
「……分かった。留意する」
父が端的に答えた。
「よろしく。……それで、困ったのはここから」
久世が話を再開させる。
「時庭に接触する手段が無いこと」
「え? そうですか?」
「そうよ。少なくとも水面下で接触することは出来ないし、かと言って露骨に接触したら向こうに知られてしまうでしょう」
「そういうこと、ですか……」
「個人的な感情もあるわね。私個人の気持ちとして、時庭に接触するなんて心の底から嫌だった」
馨が、久世に 凱の出身の家を伏せたくらいである。
母親を奪った家———恨む気持ちになるのだろう。
「だから、かしらね。兄さん、教えてくれなかったの。凱君に会ったこと。時庭の邸に来ていたことも」
凱が時庭の人間であることを知って、馨に問い詰めて、やっと知ったのだという。
だが、異父妹の[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]のこともあり、気持ちを切り替えたらしい。
「兄さまが凱君に接触してから、二ヶ月くらい状況は変わらなかったのよね、だから一応、竜ヶ崎の邸も行ったのよ。二週間くらい、空けたわね」
少し出かける、とはそのことだったのか。
「そのときに起こったことは、周知の通り」
斎の家、[漢字]新代[/漢字][ふりがな]にいしろ[/ふりがな]神社が襲撃された。
「その後、私と何人かの親戚で新代神社に行って調べたけど、やっぱり仁井戸さんの仕業ね」
斎が見たのはその様子か。
「……あれは強い妖だった。それを———」
父が呆然としながらつぶやく。
『気をつけなさい、これは人によるものかもしれない。』
新年の挨拶に向かった際の、仁井戸の言葉が思い出される。
その『人』が仁井戸本人だったのなら、笑えないのにも程がある。
「……え? あ——」
話を振られる。
少し考えて、気づいた。
「時庭も、滅ぼす対象だってことですか……? 姻戚関係に、あったから……」
「そう。頭良いのね、凱君。」
久世がにっこりと微笑んだ。
「それはおかしいでしょう……! 不本意だったのよ……!?」
黙っていた母が、声を上げる。
「そうね。おかしいわね。そもそも、向こうから振ってきた縁談だったのに。……でも、きっとそれが目的だったのよ。仁井戸さんは、時庭の家のことも気に入らないんでしょう」
父が絶句した。
「だから、最初に言ったでしょう? 『仁井戸さんを信用しないでください』と。———今度こそ分かってくれた?」
———そういう意味だったのか。
「……分かった。留意する」
父が端的に答えた。
「よろしく。……それで、困ったのはここから」
久世が話を再開させる。
「時庭に接触する手段が無いこと」
「え? そうですか?」
「そうよ。少なくとも水面下で接触することは出来ないし、かと言って露骨に接触したら向こうに知られてしまうでしょう」
「そういうこと、ですか……」
「個人的な感情もあるわね。私個人の気持ちとして、時庭に接触するなんて心の底から嫌だった」
馨が、久世に 凱の出身の家を伏せたくらいである。
母親を奪った家———恨む気持ちになるのだろう。
「だから、かしらね。兄さん、教えてくれなかったの。凱君に会ったこと。時庭の邸に来ていたことも」
凱が時庭の人間であることを知って、馨に問い詰めて、やっと知ったのだという。
だが、異父妹の[漢字]朝水[/漢字][ふりがな]あさみ[/ふりがな]のこともあり、気持ちを切り替えたらしい。
「兄さまが凱君に接触してから、二ヶ月くらい状況は変わらなかったのよね、だから一応、竜ヶ崎の邸も行ったのよ。二週間くらい、空けたわね」
少し出かける、とはそのことだったのか。
「そのときに起こったことは、周知の通り」
斎の家、[漢字]新代[/漢字][ふりがな]にいしろ[/ふりがな]神社が襲撃された。
「その後、私と何人かの親戚で新代神社に行って調べたけど、やっぱり仁井戸さんの仕業ね」
斎が見たのはその様子か。
「……あれは強い妖だった。それを———」
父が呆然としながらつぶやく。
『気をつけなさい、これは人によるものかもしれない。』
新年の挨拶に向かった際の、仁井戸の言葉が思い出される。
その『人』が仁井戸本人だったのなら、笑えないのにも程がある。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)