「「両親を失った私たちをすごく面倒見てくれた人がいてね。[漢字]世里[/漢字][ふりがな]せり[/ふりがな]さんっていうんだけど。お母さまの友達だったの」
あの泥妖怪が現れた折、亡くなった女の人か。
「世里さんもこの前死んじゃったんだけどね。その人の娘さんが、兄さまのお嫁さま。私のお義姉さま」
こんなところで世里が出てくるとは思わなかった。
「あと、三年前には、姪っ子も生まれたの。[漢字]美冬[/漢字][ふりがな]みふゆ[/ふりがな]ちゃんっていうのよ。今年で四つ」
「え? えっと———」
まさか一児の父だとは思わなかった。さらに呆然とする。
「でも、お義姉さまも一昨年の十二月に死んじゃったんだ。やっぱり殺された。」
馨と久世で駆けつけたときは、永姫の時と同じように、既に手遅れだった。
彼女の最期の言葉で、手にかけた人間が兄妹の父の仇であることを知ったという———。
「それでね。その人が[漢字]仁井戸[/漢字][ふりがな]にいど[/ふりがな]さん。だから私の、私たちの復讐は"そいつ"を殺すこと。分かった?」
久世はパンと手を打ち、
「これで私の長い話はお終い。ご清聴ありがとうございましたー」
と笑った。その目は全く笑っていなかった。
誰も何も言えず、ただ沈黙だけが流れた。
両親は情報量の多さに呆然としていた。
「えっと……質問いいですか」
静かに凱は手を上げた。
「何?」
「今、最近の話を聞かせてください。首塚山にあった邸が無くなったって、どういうことですか?」
「今? 今はね———」
久世は少し考え込んだ。
「今まで話したようなことが、また起こっているの。って言えばいいかしら」
「……そんなこと……」
「最初は、やっぱり人がよく来るようになった、ってところかな。まあ、前の邸と比べれば人の多いところに引っ越したから、人が来ること自体はよくあることだったけど。でも、明らかに風貌がおかしい奴らがうろつくことが多かったから、こっちも警戒していたの」
改めて邸を厳重に隠し、食糧の供給源を確保し、邸の周囲の見回りを強化した。
永姫の妹のような事態が起こらぬよう、「何かあれば自害せよ」というお達しが出た。
命あるものである、やみくもに人や妖怪を殺すわけにもいかない。最初はただの[漢字]様子見[/漢字][ふりがな]ようすみ[/ふりがな]だった。
しかし———馨の妻が、仁井戸と交戦して死亡してしまった。
「それで、思ったの。家族を守るために、こっちも手段を選んでいられないって」
百鬼の方も、何か仕掛けることにした。
しばらくして、馨と久世で相手方の人間を捕え、何を企んでいるのか聞き出したらしい。
「こういうとき、魔力はいいわよね、拷問することなく自白させられるから」
聞き出した内容は、あの噂と同じだ。
「それだけなら良かったのよね、こっちだけの問題だったから」
久世が大きくため息をついた。
あの泥妖怪が現れた折、亡くなった女の人か。
「世里さんもこの前死んじゃったんだけどね。その人の娘さんが、兄さまのお嫁さま。私のお義姉さま」
こんなところで世里が出てくるとは思わなかった。
「あと、三年前には、姪っ子も生まれたの。[漢字]美冬[/漢字][ふりがな]みふゆ[/ふりがな]ちゃんっていうのよ。今年で四つ」
「え? えっと———」
まさか一児の父だとは思わなかった。さらに呆然とする。
「でも、お義姉さまも一昨年の十二月に死んじゃったんだ。やっぱり殺された。」
馨と久世で駆けつけたときは、永姫の時と同じように、既に手遅れだった。
彼女の最期の言葉で、手にかけた人間が兄妹の父の仇であることを知ったという———。
「それでね。その人が[漢字]仁井戸[/漢字][ふりがな]にいど[/ふりがな]さん。だから私の、私たちの復讐は"そいつ"を殺すこと。分かった?」
久世はパンと手を打ち、
「これで私の長い話はお終い。ご清聴ありがとうございましたー」
と笑った。その目は全く笑っていなかった。
誰も何も言えず、ただ沈黙だけが流れた。
両親は情報量の多さに呆然としていた。
「えっと……質問いいですか」
静かに凱は手を上げた。
「何?」
「今、最近の話を聞かせてください。首塚山にあった邸が無くなったって、どういうことですか?」
「今? 今はね———」
久世は少し考え込んだ。
「今まで話したようなことが、また起こっているの。って言えばいいかしら」
「……そんなこと……」
「最初は、やっぱり人がよく来るようになった、ってところかな。まあ、前の邸と比べれば人の多いところに引っ越したから、人が来ること自体はよくあることだったけど。でも、明らかに風貌がおかしい奴らがうろつくことが多かったから、こっちも警戒していたの」
改めて邸を厳重に隠し、食糧の供給源を確保し、邸の周囲の見回りを強化した。
永姫の妹のような事態が起こらぬよう、「何かあれば自害せよ」というお達しが出た。
命あるものである、やみくもに人や妖怪を殺すわけにもいかない。最初はただの[漢字]様子見[/漢字][ふりがな]ようすみ[/ふりがな]だった。
しかし———馨の妻が、仁井戸と交戦して死亡してしまった。
「それで、思ったの。家族を守るために、こっちも手段を選んでいられないって」
百鬼の方も、何か仕掛けることにした。
しばらくして、馨と久世で相手方の人間を捕え、何を企んでいるのか聞き出したらしい。
「こういうとき、魔力はいいわよね、拷問することなく自白させられるから」
聞き出した内容は、あの噂と同じだ。
「それだけなら良かったのよね、こっちだけの問題だったから」
久世が大きくため息をついた。
- 1.第一章 始まり(1)
- 2.第一章 始まり(2)
- 3.第一章 始まり(3)
- 4.第一章 始まり(4)
- 5.第一章 始まり(5)
- 6.第一章 始まり(6)
- 7.第一章 始まり(7)
- 8.第一章 始まり(8)
- 9.第一章 始まり(9)
- 10.第一章 始まり(10)
- 11.第一章 始まり(11)
- 12.第一章 始まり(12)
- 13.第一章 始まり(13)
- 14.第二章 彼の妹(1)
- 15.第二章 彼の妹(2)
- 16.第二章 彼の妹(3)
- 17.第二章 彼の妹(4)
- 18.第二章 彼の妹(5)
- 19.第二章 彼の妹(6)
- 20.第二章 彼の妹(7)
- 21.第二章 彼の妹(8)
- 22.第二章 彼の妹(9)
- 23.第二章 彼の妹(10)
- 24.第二章 彼の妹(11)
- 25.第二章 彼の妹(12)
- 26.第二章 彼の妹(13)
- 27.第二章 彼の妹(14)
- 28.第二章 彼の妹(15)
- 29.第二章 彼の妹(16)
- 30.第二章 彼の妹(17)
- 31.第二章 彼の妹(18)
- 32.第二章 彼の妹(19)
- 33.第二章 彼の妹(20)
- 34.第三章 神社(1)
- 35.第三章 神社(2)
- 36.第三章 神社(3)
- 37.第三章 神社(4)
- 38.第三章 神社(5)
- 39.第三章 神社(6)
- 40.第三章 神社(7)
- 41.第三章 神社(8)
- 42.第三章 神社(9)
- 43.第三章 神社(10)
- 44.第三章 神社(11)
- 45.第三章 神社(12)
- 46.第三章 神社(13)
- 47.第三章 神社(14)
- 48.第三章 神社(15)
- 49.第三章 神社(16)
- 50.第三章 神社(17)
- 51.第三章 神社(18)
- 52.第三章 神社(19)
- 53.第三章 神社(20)
- 54.第三章 神社(21)
- 55.第三章 神社(22)
- 56.第三章 神社(23)
- 57.第四章 別れ(1)
- 58.第四章 別れ(2)
- 59.第四章 別れ(3)
- 60.第四章 別れ(4)
- 61.第四章 別れ(5)
- 62.第四章 別れ(6)
- 63.第四章 別れ(7)
- 64.第四章 別れ(8)
- 65.第四章 別れ(9)
- 66.第四章 別れ(10)
- 67.第五章 異変(1)
- 68.第五章 異変(2)
- 69.第五章 異変(3)
- 70.第五章 異変(4)
- 71.第五章 異変(5)
- 72.第五章 異変(6)
- 73.第五章 異変(7)
- 74.第五章 異変(8)
- 75.第五章 異変(9)
- 76.第五章 異変(10)
- 77.第五章 異変(11)
- 78.第五章 異変(12)
- 79.第五章 異変(13)
- 80.第五章 異変(14)
- 81.第五章 異変(15)
- 82. 第五章 異変(16)
- 83.第五章 異変(17)
- 84.第五章 異変(18)
- 85.第五章 異変(19)
- 86.第五章 異変(20)
- 87.第六章 真実(1)
- 88.第六章 真実(2)
- 89.第六章 真実(3)
- 90.第六章 真実(4)
- 91.第六章 真実(5)
- 92.第六章 真実(6)
- 93.第六章 真実(7)
- 94.第六章 真実(8)
- 95.第六章 真実(9)
- 96.第六章 真実(10)
- 97.第六章 真実(11)
- 98.第六章 真実(12)
- 99.第六章 真実(13)
- 100.第六章 真実(14)
- 101.第六章 真実(15)
- 102.第六章 真実(16)
- 103.第六章 真実(17)
- 104.第六章 真実(18)
- 105.第六章 真実(19)
- 106.第七章 闘い(1)
- 107.第七章 闘い(2)
- 108.第七章 闘い(3)
- 109.第七章 闘い(4)
- 110.第七章 闘い(5)
- 111.第七章 闘い(6)
- 112.第七章 闘い(7)
- 113.第七章 闘い(8)
- 114.第七章 闘い(9)
- 115.第七章 闘い(10)
- 116.第七章 闘い(11)
- 117.第七章 闘い(12)
- 118.第七章 闘い(13)
- 119.第七章 闘い(14)
- 120.第七章 闘い(15)
- 121.第七章 闘い(16)
- 122.第七章 闘い(17)
- 123.第七章 闘い(18)
- 124.第七章 闘い(19)
- 125.第七章 闘い(20)
- 126.第七章 闘い(21)
- 127.第七章 闘い(22)
- 128.第七章 闘い(23)
- 129.第七章 闘い(24)
- 130.第七章 闘い(25)
- 131.【幕間】作品解説という名の、作者の妄想ネタを吐き出す場
- 132.第八章 再会(1)
- 133.第八章 再会(2)
- 134.第八章 再会(3)
- 135.第八章 再会(4)
- 136.第八章 再会(5)
- 137.第八章 再会(6)