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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#90

第六章 真実(4)

「凱! 何していたの! しかも帰って来ないだなんてっ」
 帰って来ると、案の定 母に叱られた。
「えっと……斎の家に泊まっていて……」
 事実なのでそう言い訳する。
 頭の中はさっき斎に言われたことでいっぱいだった。
 斎は「ただの憶測だから」と言っていたが、それが真実のような気がしてならなかった。
 だって———"それ"が本当なら、おおよそのことに[漢字]辻褄[/漢字][ふりがな]つじつま[/ふりがな]が合ってしまう。
 それに、それとは別に、蓮が再起不能にしたあの男の言っていた「あの方」が誰なのかも、だいたい察せた。
 十中八九、仁井戸だろう。
 それと『魔法使い』に関するあの噂と照らし合わせて考えると、だいたい分かってしまった。
 馨と[漢字]久世[/漢字][ふりがな]くぜ[/ふりがな]が、時庭の名を聞いて動揺した理由も。
 その兄妹が、凱の両親を嫌っている理由も。
 馨があっさり母親の形見を姉に譲った理由も。
 その手鏡が、姉に 姉の実母を想起させる理由も。
 兄妹が、よく姉を気にかけていた理由も。
 姉が、出ていった先も。
 馨も、仁井戸も『凱は関係ない』と言っていた理由も。
 もしかしたら、馨たちが何をしようとしているのかも———。
「———凱! 聞いているの!?」
 母の怒鳴り声にはっと我に返る。少し考え込み過ぎたようだった。
「どうしてあなたはあの女に味方するのよ! ただの泥棒の娘じゃないの!」
 あの女。———あの女。
(ああ、姉さんのことか)
 理解するのに時間がかかった。いつのまにか話題がそんなところにまで飛躍していたらしい。
「だって、」
 ちゃんと息を吸った。ちゃんと話せるように。
「———姉弟だから。母さんは姉さんを嫌いでも、僕は嫌いじゃない。母さんと僕は違うんだから、別にいいでしょう?」
 思ったより話せた。母が[漢字]瞠目[/漢字][ふりがな]どうもく[/ふりがな]している。ここまで母に物申したのも初めてだったのかもしれない。
「母さん、もういいでしょう。だって、姉さんの母親も、死んだんだよ。もうその人が母さんたちに関わることはもう無いんだよ」
 喋りながら、心の中で少し謝る。だって、それは嘘かもしれない。
 斎の憶測が当たっているのだとしたら———きっと、姉の実母のことは時庭家にずっとついて回るだろう。
 母はしばらく拳を握りしめて俯いていたが、やがて[漢字]踵[/漢字][ふりがな]きびす[/ふりがな]を返して行ってしまった。
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2025/10/25 10:34

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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