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【完結】虐げられている異母姉のことを、僕たちは知らなかった。

#4

第一章 始まり(4)

 よく分からないながら、凱は家に帰った。
(どうして時庭の名を聞いて、あんな反応をしたんだろう……?)
 時庭と何かあったのか。あの盆踊りは一体、何だったのだろうか。———父と母、親戚の人達は、何か知っているのだろうか。
 そこまで考え、ハッとする。
(そうだ。聞いてみよう。)
 そう思いつくと、まず父の[漢字]書斎[/漢字][ふりがな]しょさい[/ふりがな]を訪ねた。コンコンと戸を叩く。返事はなかった。
「旦那様なら昼に、仕事に行かれましたよ。」
 後ろから使用人にそう言われ、がっかりする。しかしすぐに、今度は母に聞こうと思い立つ。
 むくりと立ち、母の部屋へ向かった。

「——内海馨? そんな人、知らないわ。ごめんなさい。」
 母の部屋を訪ね、内海馨という人を知らないかと 彼の容姿と出会った経緯とともに聞いた凱だったが、母から返ってきた回答は、それだった。
「でも、薄い橙の瞳に薄い茶髪ね。……気になるわね。そんな人、この国では珍しいでしょう」
 確かにそうだ。この国では、黒髪や焦茶の髪、瞳の色も焦茶から茶色が一般的である。
あれほど目立つ容姿をしているのだから———人に聞いて回ったら何か[漢字]掴[/漢字][ふりがな]つか[/ふりがな]めるだろうか。
 そう考え込む凱に、母は口を開いた。
「まあいいわ。人に調べさせてみるわね。」
 そう言って微笑んだ母に、凱はうなずく。
「頼みます。ありがとうございます、お母さん。」
 ええ、と返事をした母を見て、凱は部屋を出た。

(姉さんの前でもそうすればいいのにな、母さん)
 上品で、優しくて、思いやりがあって、おおらかな母。凱はそんな母が大好きだった。
 でもそれは、姉以外の人間には、である。
 少なくとも凱が物心ついた頃から、母は姉にいつも冷たかった。そして決まってそういう時は、親戚達も姉や姉の実母の陰口を叩く。
 それでも凱の前では優しい母なので、母に何かを言いたくはなかった。
 凱が生まれる前に散々傷ついてきたという母を、苦しめたくはなかった。
 母を怒らせる姉が悪いとも思っていた。
 母が姉を嫌っているという事実から逃れるように、凱は姉を見ないようにしていた。関わらないようにした。
 小学校に入って、だんだんとそれが良くないことだと分かるようになった。それでも凱は母や姉への態度を変えないようにしていた。
 母に裏切られたような気がしたからだ。まだ幼かった——数え十三になった今でも精神的には幼いだろうが——凱にとって、母が全てで、正しい存在だったから。
 それに自分は 母に似たのか父に似たのか、進んで人のために何かできる性分ではなかった。姉を庇おうと考えると、母をはじめ誰か他の人に恨まれないか、姉が余計にみじめにならないか、そもそもちゃんと庇うことができるのかといろいろ考えてしまい、その勇気も出ずに結局何もできない。
 姉にとっては辛いだろうが、凱は今の生活を変えたくはなかった。
 そんな自分が余計嫌になる。

「はぁ……」
 自分の部屋に戻りながら、凱はため息をつく。
 考えても嫌な気分になるだけなので、別のことを考えるようにする。
(でも、あのお兄さん——馨さんについて調べてくれるのはありがたいな)
 本人に隠れて調べてもらうことに罪悪感は感じるが、結果が楽しみでもあった。
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2025/10/21 10:21

錦野 真名
ID:≫ 49jonrKhevwZo
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