こわれたままのあさ
夜は、心の底をかき混ぜる。
沈めていた感情が浮き上がって、順番もなくぶつかってくる。怒りと疲労と自己嫌悪が絡まり合って、どろどろになったまま胸に張りついている。剥がそうとすると痛むから、もう触らないふりをするしかない。
息をするたびに、身体の内側が重く鳴る。生きている音だと思うと、気持ちが悪い。勝手に続く機能みたいで、意思は関係ないらしい。
わたしはずっと、壊れるタイミングを逃してきた。
限界の一歩手前で踏みとどまって、何事もなかった顔をしてきた。そのせいで、壊れきれず、元にも戻れない中途半端な状態が続いている。
「大丈夫」という言葉は便利だ。言えば会話が終わる。深入りされない。その代わり、本当のことを言う場所も、だんだん失っていく。
夜になると、そのツケが全部返ってくる。
布団の中で目を閉じると、失敗した自分が何人も並んでいる。あのとき言えなかった言葉、笑って誤魔化した場面、助けを求めるべきだった瞬間。どれも今さらで、どうしようもない。
わたしは、弱いくせに弱さを見せるのが下手だ。
だからいつも、限界を一人で消費する。
時間が過ぎるのを待つしかない夜は、拷問に近い。良くなる保証もないまま、ただ耐える。耐えた先に何があるのかも分からない。
それでも、不思議なことに、完全に終わらせたいとは思えなかった。
この苦しさが消えないのなら、せめて慣れてしまいたい、と思った。
それは希望じゃない。
諦めに近い願いだった。
いつの間にか、空が少しだけ明るくなっている。カーテンの隙間から、色のない朝が入り込んでくる。あれほど来てほしくなかったはずなのに、来てしまった。
胸の重さは消えていない。
世界も、わたしも、何も変わっていない。
でも、最悪の夜は終わった。
それだけが事実だった。
わたしは起き上がる。身体が動くから、動く。理由はない。意味もない。ただ、今日という一日が始まってしまったから。
きっとまた夜は来る。
また同じように沈む。
また限界を越える。
それでも、今日を生きてしまう。
救われてはいない。
でも、終わってもいない。
壊れたまま、朝の中に立っている。
それが、今のわたしの結末だった。
沈めていた感情が浮き上がって、順番もなくぶつかってくる。怒りと疲労と自己嫌悪が絡まり合って、どろどろになったまま胸に張りついている。剥がそうとすると痛むから、もう触らないふりをするしかない。
息をするたびに、身体の内側が重く鳴る。生きている音だと思うと、気持ちが悪い。勝手に続く機能みたいで、意思は関係ないらしい。
わたしはずっと、壊れるタイミングを逃してきた。
限界の一歩手前で踏みとどまって、何事もなかった顔をしてきた。そのせいで、壊れきれず、元にも戻れない中途半端な状態が続いている。
「大丈夫」という言葉は便利だ。言えば会話が終わる。深入りされない。その代わり、本当のことを言う場所も、だんだん失っていく。
夜になると、そのツケが全部返ってくる。
布団の中で目を閉じると、失敗した自分が何人も並んでいる。あのとき言えなかった言葉、笑って誤魔化した場面、助けを求めるべきだった瞬間。どれも今さらで、どうしようもない。
わたしは、弱いくせに弱さを見せるのが下手だ。
だからいつも、限界を一人で消費する。
時間が過ぎるのを待つしかない夜は、拷問に近い。良くなる保証もないまま、ただ耐える。耐えた先に何があるのかも分からない。
それでも、不思議なことに、完全に終わらせたいとは思えなかった。
この苦しさが消えないのなら、せめて慣れてしまいたい、と思った。
それは希望じゃない。
諦めに近い願いだった。
いつの間にか、空が少しだけ明るくなっている。カーテンの隙間から、色のない朝が入り込んでくる。あれほど来てほしくなかったはずなのに、来てしまった。
胸の重さは消えていない。
世界も、わたしも、何も変わっていない。
でも、最悪の夜は終わった。
それだけが事実だった。
わたしは起き上がる。身体が動くから、動く。理由はない。意味もない。ただ、今日という一日が始まってしまったから。
きっとまた夜は来る。
また同じように沈む。
また限界を越える。
それでも、今日を生きてしまう。
救われてはいない。
でも、終わってもいない。
壊れたまま、朝の中に立っている。
それが、今のわたしの結末だった。
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