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【カウントダウン投稿#28】自転車置き場の小さな世界

 朝、駅前の自転車置き場に行くと、いつもとは少し違う光景が広がっていた。
 自分の自転車の隣に、見覚えのない小さな自転車が一台、きちんと並んで置かれている。
 子供用のサイズで、色は鮮やかなオレンジ。だが、誰が置いたのかは分からない。
 不思議に思いながらも、自転車に跨がろうとすると、隣の小さな自転車が微かに揺れた気がした。
 気のせいかと思いながらも、よく見ると、カゴに小さなメモが置かれている。
――「一緒に冒険してみませんか?」
 冒険?駅前の自転車置き場で?
 笑いをこらえつつ、思わず周囲を見回す。誰もいない。
 小さな自転車を押してみると、意外にもスムーズに動き、まるで自分を導くかのように進む。
 気まぐれに、自転車に乗って商店街を抜け、公園まで行ってみることにした。
 すると、普段は通らない小道や、見たことのない花壇、猫たちの秘密の集会場所まで次々と目に入る。
 まるで小さな自転車が、街の隠れた風景を教えてくれているようだ。
 公園に着くと、小さな自転車はそこで止まり、こちらを見上げるようにカタカタと揺れる。
 カゴの中には、またメモが一枚。
――「今日の景色は、特別です」
 周囲を見回すと、公園の花々が風に揺れ、鳩たちが行進するように歩いている。
 木漏れ日が差し込み、普段は見過ごしていた小道の苔や、石の上の小さな虫までも、愛おしく感じられる。
 気づけば、いつもの通勤路に比べて時間はかかっていた。
 でも、心はずっと軽く、何か満たされたような気持ちでいっぱいになった。
 自転車置き場に戻ると、小さな自転車はまた静かに元の位置に戻されている。
 まるで最初からそこにあったかのように自然だ。
 誰も気づかない小さな冒険が、日常の片隅で完結していたのだ。
 翌日も、同じ場所に行くと、小さな自転車はまだそこにある。
 今日も街の隠れた風景を見せてくれるのかと思うと、思わず笑みがこぼれる。
 日常は平凡だと思っていたけれど、ほんの少し目線を変えるだけで、特別な世界が広がる。
 小さな自転車は、毎日の冒険を教えてくれる先生のようだ。
 そして、今日も自転車を押しながら、街の隅々まで探検する。
 どんな小さな発見も、心をふわりと温かくする。
 日常は平凡だけれど、ほんの少しの不思議があれば、毎日が少し輝くのだ。

2026/01/28 17:46

愛麗ちゃん@ありがとう
ID:≫ 1.6ekCz9QCfE6
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