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【カウントダウン投稿#27】自動販売機の秘密

駅前にある古い自動販売機は、誰も気に留めない存在だった。
 見た目は普通の機械で、飲み物も一般的なものしか入っていない。
 だが、ある日気づいたのだ。ボタンを押すと、出てくるものが少しだけ違うことに。
 最初に気づいたのは、暑い夏の日。
 冷たいコーラを買おうと100円を入れたら、出てきたのは小さな風鈴だった。
 驚きつつも、手に取ると、風に揺れて「チリリ」と涼やかな音を立てる。
 その瞬間、暑さが一瞬だけ和らいだ気がした。
 翌日、ジュースを買うと今度は、手のひらサイズの折り紙が出てきた。
 見れば鶴の形。
 ちょっとしたメモのように折り目が丁寧で、誰かが手間をかけたことが伝わってくる。
 思わず微笑んでしまった。
 その後も、自動販売機は日に日に不思議なものを出すようになった。
 小さな砂時計、可愛い消しゴム、わずかに香るハーブの袋。
 どれも実用的ではないが、なぜか心が軽くなる。
 気になって、近所の人にも聞いてみた。
 「ここ、変わったもの出ませんか?」
 すると、笑いながら答えた人がいた。
 「そうなんだよね。昨日は小さな石が出た。触っていると安心するんだ」
 どうやら、自動販売機自体が何かしら日常に「小さな喜び」を届ける仕組みらしい。
 誰がやっているのか、なぜなのかは分からない。
 ただ確かなのは、手に取った瞬間、少しだけ世界が明るくなることだ。
 ある雨の日、コーヒーを買いに行くと、出てきたのは小さな傘のキーホルダー。
 小さな傘の下で自分の手をかざすと、雨粒が柔らかく跳ね返るように感じられた。
 雨の音さえ、少し楽しく思える。
 この自動販売機は、毎日少しずつ人々を楽しませているのだ。
 誰も気づかないけれど、ささやかな奇跡が、日常の端っこで起こっている。
 夜になると、自動販売機のランプは暖かく光り、通りを行き交う人を照らす。
 小さな箱から生まれるちょっとした驚きが、見えない形でみんなの心を柔らかくするのだ。
 そして明日も、何が出てくるかは分からない。
 それが、日常の楽しみになっている。

2026/01/27 16:39

愛麗ちゃん@ありがとう
ID:≫ 1.6ekCz9QCfE6
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