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【カウントダウン投稿#26】傘の交換日記

駅前の小さな商店街を歩いていると、通りの片隅に古びた傘立てが置かれていた。
 「ご自由にどうぞ」と書かれているが、そこには明らかに奇妙なルールが隠されているようだった。
 手に取ると、傘には紙が一枚挟まっている。
 「昨日はありがとう。今日はこの傘で少し笑ってください」
 文字は丁寧で、誰かが日常の小さな喜びを共有しているように思えた。
 気になって傘をさしてみると、通りの風景が少し違って見える。
 街灯の光がいつもより柔らかく、商店街の人々の笑顔が鮮やかに見える。
 不思議だが、確かに日常が少し楽しくなる。
 次の日も、傘立てを覗く。
 新しい傘が一つだけ増えている。
 手紙には「今日は誰かに親切をしてみてください」と書かれている。
 通勤途中に荷物を持つお年寄りを助けると、笑顔で「ありがとう」と言われた。
 それだけで、胸の奥がじんわり温かくなる。
 傘立ては、ただの傘ではなかった。
 持つ人に小さな気づきや優しさを届ける魔法の傘だったのだ。
 ある日、雨が激しく降る中、傘を借りた人が傘立てに戻すと、傘には新しい手紙が添えられていた。
 「雨の中でも笑顔を忘れないで」
 それを読んだ瞬間、通りを歩く人々の何気ない仕草が愛おしく見えた。
 傘を使ううちに気づいたことがある。
 手紙は誰かから誰かへと循環しているのだ。
 昨日傘を借りた人が手紙を書き、今日別の誰かが受け取る。
 小さな交換日記のように、見えない優しさが街を巡っている。
 週末、商店街を歩くと、傘立ての前で小さな子供が立ち止まっていた。
 「傘借りてもいいですか?」
 紙に書かれた優しい言葉を読みながら、傘をさすと、子供は嬉しそうに笑う。
 その瞬間、街全体がほんの少し柔らかく見えた。
 雨粒は光を反射し、傘の下で交わされる小さな会話が、日常の中で特別なものになる。
 傘立ての秘密は誰にも知られない。
 ただ、借りた人だけが少し笑い、少し優しくなる。
 日常の端っこに潜む、小さな奇跡の物語。
 雨の日も、晴れの日も、傘は静かに街を巡る。
 持つ人の心を温めるためだけに。

2026/01/26 17:26

愛麗ちゃん@ありがとう
ID:≫ 1.6ekCz9QCfE6
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