【カウントダウン投稿#15】答案用紙の余白に
その事件は、期末テストの最終日に起きた。
数学の答案用紙を回収し終えたとき、先生が眉をひそめた。
「一枚、多いな……」
教室がざわつく。
出席者は三十二名。答案も三十二枚あるはずだった。だが机の上には、確かに三十三枚あった。
「誰か、二枚出したのか?」
誰も手を挙げない。
俺は後ろの席で、その余分な答案用紙をじっと見ていた。
名前欄は空白。
だが、問題はすべて解かれている。しかも満点だった。
「いたずらだろうか」 「でも、この筆跡……」
先生は困ったように職員室へ答案を持っていった。
昼休み、クラスメイトたちは噂話に夢中だった。
「幽霊じゃね?」
「天才が紛れ込んでたとか」
俺は笑わなかった。
あの答案の書き方に、見覚えがあったからだ。
放課後、俺は職員室を訪ねた。
「先生、その答案、もう一度見せてもらえませんか」
先生は驚いた顔をしたが、許可してくれた。
問題用紙と答案を並べる。
計算の途中式、数字の癖、最後に引かれた二重線。
「やっぱりだ……」
それは、俺がいつも使っている解き方だった。
だが俺は一枚しか提出していない。
「どういうことだ?」
先生が言う。
俺は正直に答えた。
「わかりません。ただ……この余白」
答案の端に、小さく書き込みがあった。
『考え方は合ってる。最後の一行、丁寧に』
それは、まるで採点者のコメントのようだった。
「先生、これ、誰かが添削してませんか」 「いや、まだ誰も見ていない」
その日の夜、俺は自分のノートを開いた。
すると、見覚えのないページが一枚、挟まっていた。
数学の問題と、その解答。
そして同じ字で、こう書かれていた。
『君は気づくと思った』
背中が冷えた。
だが不思議と、怖くはなかった。
翌日、またテストがあった。
今度は英語。
回収後、先生は何も言わなかった。
だが俺は確信していた。
きっとまた、一枚多い。
放課後、下駄箱にメモが入っていた。
『答えを出す人間は一人でなくていい』
誰が書いているのかは分からない。
だが、少なくとも敵意はなかった。
それから俺は、問題を解くたびに余白を残すようになった。
そこに書き込まれる、もう一つの視点を読むために。
学校には、教えてくれない先生がいる。
名前も姿も知らないが、確かに同じ答案を見ている。
期末テストの平均点は、今年だけ少し上がったらしい。
理由を知っているのは、たぶん俺だけだ。
数学の答案用紙を回収し終えたとき、先生が眉をひそめた。
「一枚、多いな……」
教室がざわつく。
出席者は三十二名。答案も三十二枚あるはずだった。だが机の上には、確かに三十三枚あった。
「誰か、二枚出したのか?」
誰も手を挙げない。
俺は後ろの席で、その余分な答案用紙をじっと見ていた。
名前欄は空白。
だが、問題はすべて解かれている。しかも満点だった。
「いたずらだろうか」 「でも、この筆跡……」
先生は困ったように職員室へ答案を持っていった。
昼休み、クラスメイトたちは噂話に夢中だった。
「幽霊じゃね?」
「天才が紛れ込んでたとか」
俺は笑わなかった。
あの答案の書き方に、見覚えがあったからだ。
放課後、俺は職員室を訪ねた。
「先生、その答案、もう一度見せてもらえませんか」
先生は驚いた顔をしたが、許可してくれた。
問題用紙と答案を並べる。
計算の途中式、数字の癖、最後に引かれた二重線。
「やっぱりだ……」
それは、俺がいつも使っている解き方だった。
だが俺は一枚しか提出していない。
「どういうことだ?」
先生が言う。
俺は正直に答えた。
「わかりません。ただ……この余白」
答案の端に、小さく書き込みがあった。
『考え方は合ってる。最後の一行、丁寧に』
それは、まるで採点者のコメントのようだった。
「先生、これ、誰かが添削してませんか」 「いや、まだ誰も見ていない」
その日の夜、俺は自分のノートを開いた。
すると、見覚えのないページが一枚、挟まっていた。
数学の問題と、その解答。
そして同じ字で、こう書かれていた。
『君は気づくと思った』
背中が冷えた。
だが不思議と、怖くはなかった。
翌日、またテストがあった。
今度は英語。
回収後、先生は何も言わなかった。
だが俺は確信していた。
きっとまた、一枚多い。
放課後、下駄箱にメモが入っていた。
『答えを出す人間は一人でなくていい』
誰が書いているのかは分からない。
だが、少なくとも敵意はなかった。
それから俺は、問題を解くたびに余白を残すようになった。
そこに書き込まれる、もう一つの視点を読むために。
学校には、教えてくれない先生がいる。
名前も姿も知らないが、確かに同じ答案を見ている。
期末テストの平均点は、今年だけ少し上がったらしい。
理由を知っているのは、たぶん俺だけだ。
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