【カウントダウン投稿#14】修理屋は星を見上げない
俺の仕事は、壊れたものを直すことだ。
スマート家電、配達ドローン、感情補助AI――依頼は雑多で、どれも「調子が悪いから何とかしてくれ」という一点で共通している。
この街では、新しいものを買う方が安い。だから修理屋は流行らない。
それでも俺は、毎朝シャッターを開ける。
「おはようございます、今日もやってますか?」
最初の客は、いつも決まって同じ少女だった。年は高校生くらい。制服ではなく、作業着姿だ。
「今日は何だ」 「これです」
彼女が差し出したのは、旧式の天体観測用ドローンだった。今では博物館にしか置いていないような代物だ。
「動きますよね?」 「動くかどうかは、直してからだ」
俺はドローンを受け取り、奥の作業台に置いた。内部構造は単純だが、部品がもう作られていない。普通の修理屋なら断る。
「どうして、これを?」 「星を見る仕事をしてるので」
少女はさらっと言った。
この街で「星を見る仕事」は珍しい。空は広告ホログラムと航路で埋まっている。
「研究?」 「いえ、記録です。見た星を、ただ残す」
俺はドローンのカバーを外しながら、ふと思った。
直す理由は人それぞれだ。効率、金、思い出――だが彼女の理由は、妙に静かだった。
「直りますか?」 「ああ。ただし、少し癖が残る」 「それでいいです」
即答だった。
修理は二時間かかった。起動テストで、ドローンはゆっくりと浮かび上がる。
モーター音は古いが、安定している。
「完了だ」 「ありがとうございます!」
少女は目を輝かせ、料金を置いた。
「星、見えるといいな」 「見えますよ。ちゃんと」
彼女はドローンを抱え、店を出ていった。
その夜、俺は屋上に出た。
修理屋は星を見上げない――そう決めていたはずなのに。
空には、彼女のドローンが小さな光を放ちながら飛んでいた。
広告の隙間を縫うように、まっすぐに。
俺は思う。
壊れたものを直す仕事は、未来を少しだけ整える仕事なのかもしれない、と。
明日もシャッターを開けよう。
星を見ないままでも、誰かが見上げられるように。
スマート家電、配達ドローン、感情補助AI――依頼は雑多で、どれも「調子が悪いから何とかしてくれ」という一点で共通している。
この街では、新しいものを買う方が安い。だから修理屋は流行らない。
それでも俺は、毎朝シャッターを開ける。
「おはようございます、今日もやってますか?」
最初の客は、いつも決まって同じ少女だった。年は高校生くらい。制服ではなく、作業着姿だ。
「今日は何だ」 「これです」
彼女が差し出したのは、旧式の天体観測用ドローンだった。今では博物館にしか置いていないような代物だ。
「動きますよね?」 「動くかどうかは、直してからだ」
俺はドローンを受け取り、奥の作業台に置いた。内部構造は単純だが、部品がもう作られていない。普通の修理屋なら断る。
「どうして、これを?」 「星を見る仕事をしてるので」
少女はさらっと言った。
この街で「星を見る仕事」は珍しい。空は広告ホログラムと航路で埋まっている。
「研究?」 「いえ、記録です。見た星を、ただ残す」
俺はドローンのカバーを外しながら、ふと思った。
直す理由は人それぞれだ。効率、金、思い出――だが彼女の理由は、妙に静かだった。
「直りますか?」 「ああ。ただし、少し癖が残る」 「それでいいです」
即答だった。
修理は二時間かかった。起動テストで、ドローンはゆっくりと浮かび上がる。
モーター音は古いが、安定している。
「完了だ」 「ありがとうございます!」
少女は目を輝かせ、料金を置いた。
「星、見えるといいな」 「見えますよ。ちゃんと」
彼女はドローンを抱え、店を出ていった。
その夜、俺は屋上に出た。
修理屋は星を見上げない――そう決めていたはずなのに。
空には、彼女のドローンが小さな光を放ちながら飛んでいた。
広告の隙間を縫うように、まっすぐに。
俺は思う。
壊れたものを直す仕事は、未来を少しだけ整える仕事なのかもしれない、と。
明日もシャッターを開けよう。
星を見ないままでも、誰かが見上げられるように。
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