《#2》滴る水は毒の味
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
柳 「今オーネ区なんだよな? ちょっと出かけてくる」
柳はアジトのドアを乱暴に蹴って開け、ずかずかと外へ出ていってしまった。
叶羽 「ちょっ、どこに!?」
蒼 「柳さんのことですから。放っておきましょう」
千夏 「二人、戦闘準備。」
蒼 「え? なんでですか?」
叶羽 「千夏さんの言うことだし・・・。信じておこう」
二人は武器庫へ向かった。
〜数時間後〜
蒼 「やっぱりお客さん来ないですね。オーネ区だから仕方ないか。」
叶羽 「そうね。ていうか、千夏さん! 戦闘準備って何なんですか!? 敵来ないじゃないですか!」
千夏 「直に分かる」
叶羽 「はぁ〜」(額を抑えて首を振る)
千夏 「・・・来た」
その時、バタンとドアが乱暴に開けられた。
??? 「治安維持機関だ! お前らを違法案内の容疑で逮捕する!」
叶羽 「うっそでしょっ!?」
蒼 「って、貴方御堂さんじゃないですか!
ユネア区の治安維持部隊ですよね!? なんでここに?」
[漢字]御堂[/漢字][ふりがな]みどう[/ふりがな] [漢字]香澄[/漢字][ふりがな]かすみ[/ふりがな] 「ユネア区指名手配の『柳』を追いかけたら、ここに来まして」
叶羽 「おい柳!」
柳 「うるせぇ! 尾行はしっかり撒いたぞ!」
よく見たら、御堂の後ろに手錠された柳が居た。
御堂 「私にかかれば追跡など簡単なことです。
さあ皆さん、抵抗せずお縄にかかりましょうか」
千夏 「二人、頼んだ」
蒼 「ちょっ、無理ですよぉッ!」
御堂 「そういえば貴方は・・・八神さんですか。懐かしいな」
御堂は、蒼に向けて怪しげな笑みを浮かべた。
蒼 「ひッ。嫌だッ、もどッ、戻りたくないッ」
叶羽 「ちょっ、蒼!?」
御堂 「八神さんは研究機関の実験体でしたが、脱走しまして・・・。
都合がいいですし、研究機関に連れ戻すことにしましょう」
御堂は、胸の前で手に拳を打った。
叶羽が御堂に向かって銃を打った。が、御堂は軽く躱した。
叶羽が銃を連射する。御堂はそれを軽々と躱し続けた。
御堂は、弾丸を躱しながら、ゆっくりと叶羽に歩み寄った。
叶羽 「来ッるなぁっ・・・!」
ついには御堂が、叶羽の銃を掴み、放り投げた。
御堂 「貴方も逮捕ですね」
千夏 「蒼、ドアを開けて!」
蒼 「はッはいッ」
蒼がアジトのドアを開ける。その先には、手錠された柳が居た。
御堂 「逃げる気ですか・・・。ったく・・・」
千夏 「柳! 能力!」
柳 「自害しろ! 御堂!」
御堂 「何っ?」
御堂は、放り投げた叶羽の銃を持ち上げ、自分の頭に押し当てた。
カチッ。引き金を引いた音だけが、乾いた空間に響いた。
叶羽 「あ、弾切れしてたんだった」
柳 「叶羽ァ!! お前ェ!」
叶羽 「てへっ(てへぺろの顔をする)」
柳 「洒落にならないって!」
御堂 「まあいいです、全員揃って逮捕・・・」
??? 「そこまでだ、人間。」
アジトの外から、冷えた声がした。
そちらに目をやると、少女が三人立っていた。
??? 「私達は雨の巫女よ。たった今、ここは花雨領域に飲み込まれた。
貴方がたを侵入者と見なし、排除する。投降するなら、身の安全は保証するわ」
??? 「ねぇ雫〜、お仕事いつ終わるの〜? 僕疲れたぁ〜」
??? 「・・・」
[漢字]霊羽[/漢字][ふりがな]れいは[/ふりがな] [漢字]雫[/漢字][ふりがな]しずく[/ふりがな] 「一旦黙ってなさい、みや。大事な場面よ」
[漢字]枇杷[/漢字][ふりがな]ひわ[/ふりがな] みや 「は〜い↓」
霊羽 「和歌菜、雨にしといて」
[漢字]天音[/漢字][ふりがな]あまね[/ふりがな] [漢字]和歌菜[/漢字][ふりがな]わかな[/ふりがな]「分かった」
途端、外からザァーという音がした。
千夏 「巫女。我々は投降する」
その合図に合わせ、蒼と叶羽が両手を上げた。
巫女の後ろの柳も、両手を上げた。
御堂 「ちょっ、どういうこと?」
霊羽 「お前だけだな、侵入者は」
千夏 「我々は失礼する」
千夏は、ずっとカタカタしていたノートパソコンを閉じ、右手で抱えながらアジトを出た。
蒼と叶羽も千夏の後に続く。
御堂 「おいっお前ら!」
霊羽 「貴方の相手は私達だ」
巫女たちが武器を構えた。
一方、千夏たちは・・・。
叶羽 「ちょっ、何この手錠っ、外れないんだけど」
柳 「おい乱暴に外すなっ!」
叶羽 「よしっ! とれたよ!」
柳 「・・・ありがとな」
蒼 「千夏さん、この大雨浴びていいんですか?」
千夏は、アジトの出入り口の小さな屋根から出て、雨を浴びていた。
花雨領域の雨は、マクロフィラ毒素を含んでいる。長時間浴び続けると結晶化するのだ。
千夏 「大丈夫。行くよ」
千夏は、小さな傘を奪い合う三人を横目に、雨の中を歩き始めた。