「???」
おはようございます。私はエレベーターガイドと申します。
「エレベーターガイド」
行き先の階のボタンを押してください。
「私」
うーん・・・。
身体がガチガチに痛い。この狭くて硬い床で寝ていたみたいだ。
ここはどこ?
辺りを見回す。狭い、ピカピカの金属で作られたエレベーターだ。
「エレベーターガイド」
行き先の階のボタンを押してください。
再び機械音声が流れる。何か怒っているように感じる。
とりあえず立ち上がって、ボタンが並ぶ場所を見る。
上の表示には「F1」とある。今、このエレベーターは一階にいるんだろう。
とりあえず、「1」のボタンを押す。
「エレベーターガイド」
1階でございます。
チン、と音が鳴って、エレベーターのドアが開いた。
広がっていたのは、ただ無機質な空間。壁も天井も床もグレーだった。
眼の前にあったのは、大きな木。ただ、直方体だけで形づくられていて、カクカクだった。
葉っぱの色は緑。幹の色は、壁と同じグレー。床とつながって生えているように見える。
木の前に、何か大きな箱があった。遠すぎて、よく見えない。
とりあえず、一歩目を踏み出す。
すると、水の波紋が広がるように、空間の色ががらりと変わった。
壁と天井は柔らかいアイボリーに、床は緑色に。木の幹は、薄めの茶色に。
心なしか、踏み出した足の裏がやわらかい。まるで芝生のような。
「エレベーターガイド」
[漢字]お客様[/漢字][ふりがな]チャレンジャー[/ふりがな]の緊張を感知しました。F1の内装を親しみやすい内装へ変えました。
「エレベーターガイド」
ようこそいらっしゃいました、[漢字]お客様[/漢字][ふりがな]チャレンジャー[/ふりがな]。
本館は、[漢字]お客様[/漢字][ふりがな]チャレンジャー[/ふりがな]に「諦め」を提供する安らぎの場です。
「私」
ねえ、ここは、どこ・・・?
咄嗟に尋ねる。
とりあえず、木の下の何かを確かめるために、歩き出す。
「エレベーターガイド」
繰り返します。本館は、[漢字]お客様[/漢字][ふりがな]チャレンジャー[/ふりがな]に「諦め」を提供する安らぎの場です。
[漢字]お客様[/漢字][ふりがな]チャレンジャー[/ふりがな]には、こちらの「サポートガイド」を配布しております。
ぜひ、お受け取り下さい。
見てみると、木の下の何かは、ロッカーだった。
1番から60番まで、同じ大きさのロッカーが並んでいる。
ガシャン、と音がした。ビクッ、と思わず飛び退く。
1番のロッカーが勢いよく開けられただけだった。なんだ、と思って胸を撫で下ろす。
背伸びして、ギリギリで1番ロッカーの中身を取り出す。
白いタブレットだった。
「エレベーターガイド」
そちらはサポートガイド。お客様のチャレンジに役立つことでしょう。
では、いってらっしゃいませ。幸運をお祈りしています。
「私」
えっ、ちょっ、ガイドさん!?
天の声(仮名)に、上を向いて呼びかける。応答はなかった。
その代わり、別の方向から声がした。
「???」
おっはよー! 私はサポートガイドだよ。
「サポートガイド」
これからよろしくね! あーっと、お名前は?
タブレットが起動し、某ファミレスの配膳ロボの顔のような、可愛らしい猫の顔が映し出された。
「私」
え、私? 名前・・・知らないなぁ。
「サポートガイド」
じゃあ、私が名付けちゃおう!
今日から君は、「セラフ」ね!
「セラフ」
セラフ、セラフ・・・。うん、わかった! ありがと、サポート、ガイ、ド?
「サポートガイド」
私に名前はないよ! あだ名で呼びたいなら、「姉ちゃん」って呼んで!
私の人格は「頼れる優しい元気なお姉ちゃん」だからね!
「セラフ」
え、何それ・・・。
「サポートガイド」
人格変更もできるよ! 「ツンデレお兄ちゃん」とか、「メンヘラ彼氏」とか・・・。
「セラフ」
別に今のままでいいからっ!
「サポートガイド」
オッケー! わかったよ!
「セラフ」
で、ここはどこなの?
「サポートガイド」
ここは「[漢字]虚迷宮[/漢字][ふりがな]ウツロめいきゅう[/ふりがな]」。皆に「諦め」を提供する安らぎの場。
セラフには、これからこの迷宮を登ってもらう。その先に、答えは在るから。
「セラフ」
・・・分かった。
サポート、じゃなくて、お姉ちゃんの声は異様に低かった。
「サポートガイド」
さ、エレベーターに行こうか!
「セラフ」
うん。
不安を引きずりつつ、私達はエレベーターに乗り込んだ。