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曲パロです
ザアアア。
大雨が、地面に落ちて弾ける。
目を薄く閉じながら、僕は走っていた。
頭の上を、両手で抑える。だが、それも意味を成さない。
濡れたスーツを見て、絶望する。
駅の中に急いで駆け込む。
迷宮のような駅構内を走る。
滑らないギリギリの速さで。
次はあっちで、二番目の角を曲がる・・・。
改札を通って・・・、と思って見た先に、改札はなかった。
代わりに、見たことのない森が広がっていた。
「はっ・・・!?」
木、木、木。生い茂る草の匂い。
慌てて後ろを振り向く。木、木、木。
異世界。
非現実的な現象を眼の前に、脳が動転する。
「うおっ」
ぽつ。
ぽつぽつぽつぽつぽつ。
ザアアアアア。
雨が、急に降り始めた。
頭の上を両腕で覆いながら、森の中に続いていた道を走り出す。
一分ほど走ったところで、道が別れた。
矢印の形をした立て看板が二つあったが、見たことのない文字が書かれていた。
(ど、どうしよう・・・)
二つの道を見比べていたそのとき。
「あら、珍しい」
背後から、声がのびた。
すぐに振り向く。
「ああ、すみませんね」
魔女が立っていた。
白くての広いとんがり帽子、黒いローブ。
魔女は、大きなハスの葉を傘代わりにしていた。
「家はどちら方面ですか?」
「・・・」
「あ、もしかして、帰る家ないですか?」
「・・・そうですね」
「じゃあ、私の家に泊まって行って下さいよ。ぜひぜひ」
見知らぬ怪しい女の家に上がり込むなんて言語道断、だとは思うが、
「いいんですか? では、お言葉に甘えて」
その時の僕はそう答えていた。
そのあと、傘に入れてもらい、彼女の家の前まで談笑しながら歩いた。
「これが、私の家です!」
彼女はドヤーと自慢するように言った。
「個性的な家ですね」
彼女の家は、お菓子で出来ていた。
魔女の家、と言えばそういうイメージなのだが。
「これは食べられないので。間違えてかじりつかないでくださいね」
「恩人の家を食べるなんて、そんな恩知らずはどこに居るんですかね?」
「確かに、そうですね。はい、お入り下さい」
彼女は、クッキーでできたドアを開いた。
内装は中世ヨーロッパらしい感じだった。
「夕食、準備してますので。奥の部屋で寛いでてください」
「何から何まで、ありがとうございます」
「いえいえ。困ってる人は助けるものですから」
僕は、格子のはめられたドアを開けた。
床に置かれた籠に、濡れたジャケットを入れ、ベッドに腰掛ける。
スマホを取り出す。電波は・・・、何故か届く。
SNSをうろついていると、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「夕食、出来ましたよ」
「分かりました」
ベッドから飛び起き、部屋を出る。
ダイニングテーブルには、おいしそうなシチューとパンが並べられていた。
「質素なものですみませんが、シチューです」
「いえいえ、ごちそうですよ」
「さ、どうぞ。いただきます」
「いただきます」
温かいシチューをパンにつけたりしながら食べ終えると、彼女が話しかけてきた。
「もしかして、異世界から来た方ですか?」
「そのようです」
「この世界だと、異世界人はたびたび来るんですよね。たいていは、政府に捕まって強制労働所行きですが」
「えっ!?」
「可哀想ですよね。だから、よく匿ってあげてるんです。でも、一ヶ月くらいしたら出てっちゃうんですよねぇ。
あの人たち、今も無事かなぁ?」
「優しいですね」
「暇なもので。ああ、そうそう、たいていの人は、ここに来れてよかった、って言うんですよね」
「へぇ」
「ある人は、街が洪水に見舞われて、建物の屋上から出られなかったらしいです。救助隊のヘリが『あとで助けに来る』って言って通り過ぎたらしいですが、二度と来なかったらしいです」
「それは可哀想ですね」
「ある人は、『本当に笑うことができなくなっていた』って言ってましたね」
「確かに、あの世界だと似たようなこと多いですね」
注がれたワインをちびちび呑む。
「あ、そうだ。明日には、ここを出ようと思っているのですが」
「絶対にやめたほうがいいです! 今の季節、大雨が止まないんですよ。三ヶ月ほど大雨が続くんです」
「そ、それなら、ずっと居させてもらっていいですか?」
「ええ。もちろんです」
「ありがとうございます。お礼に、僕の話をさせてもらっていいですか?」
「お願いします」
「僕、所謂『ブラック企業』に勤めてまして。ひどい労働条件で働かせられてるんです。
辞めたいとも思ってるんですけど、会社辞めたって言いながら親に会わせる顔がなくて」
「それは、辛かったですね・・・」
「だから、この世界に来れてよかったです」
「よかった。三ヶ月ほど、よろしくお願いしますね」
「こちらこそです。ごちそうさまでした」
「部屋でくつろいでいてください」
席を離れ、奥の部屋に戻る。
ベッドに腰掛けようとしたそのとき、ぐわんっと視界が歪んだ。
「あ、効き始めました?」
彼女の声。
「ワインに薬仕込んでたんですよ。抵抗されたくなかったもので。
あ、そのまま寝といてください。私がおいしく食べるので」
「・・・ぇ・・・?」
「ああ、私、人喰い魔女なんですよ。特に、異世界人は美味しくて。
さ、黙って大人しく私に喰われてください」
人喰い魔女は、鋭い爪で男の心臓を貫いた。
大雨が、地面に落ちて弾ける。
目を薄く閉じながら、僕は走っていた。
頭の上を、両手で抑える。だが、それも意味を成さない。
濡れたスーツを見て、絶望する。
駅の中に急いで駆け込む。
迷宮のような駅構内を走る。
滑らないギリギリの速さで。
次はあっちで、二番目の角を曲がる・・・。
改札を通って・・・、と思って見た先に、改札はなかった。
代わりに、見たことのない森が広がっていた。
「はっ・・・!?」
木、木、木。生い茂る草の匂い。
慌てて後ろを振り向く。木、木、木。
異世界。
非現実的な現象を眼の前に、脳が動転する。
「うおっ」
ぽつ。
ぽつぽつぽつぽつぽつ。
ザアアアアア。
雨が、急に降り始めた。
頭の上を両腕で覆いながら、森の中に続いていた道を走り出す。
一分ほど走ったところで、道が別れた。
矢印の形をした立て看板が二つあったが、見たことのない文字が書かれていた。
(ど、どうしよう・・・)
二つの道を見比べていたそのとき。
「あら、珍しい」
背後から、声がのびた。
すぐに振り向く。
「ああ、すみませんね」
魔女が立っていた。
白くての広いとんがり帽子、黒いローブ。
魔女は、大きなハスの葉を傘代わりにしていた。
「家はどちら方面ですか?」
「・・・」
「あ、もしかして、帰る家ないですか?」
「・・・そうですね」
「じゃあ、私の家に泊まって行って下さいよ。ぜひぜひ」
見知らぬ怪しい女の家に上がり込むなんて言語道断、だとは思うが、
「いいんですか? では、お言葉に甘えて」
その時の僕はそう答えていた。
そのあと、傘に入れてもらい、彼女の家の前まで談笑しながら歩いた。
「これが、私の家です!」
彼女はドヤーと自慢するように言った。
「個性的な家ですね」
彼女の家は、お菓子で出来ていた。
魔女の家、と言えばそういうイメージなのだが。
「これは食べられないので。間違えてかじりつかないでくださいね」
「恩人の家を食べるなんて、そんな恩知らずはどこに居るんですかね?」
「確かに、そうですね。はい、お入り下さい」
彼女は、クッキーでできたドアを開いた。
内装は中世ヨーロッパらしい感じだった。
「夕食、準備してますので。奥の部屋で寛いでてください」
「何から何まで、ありがとうございます」
「いえいえ。困ってる人は助けるものですから」
僕は、格子のはめられたドアを開けた。
床に置かれた籠に、濡れたジャケットを入れ、ベッドに腰掛ける。
スマホを取り出す。電波は・・・、何故か届く。
SNSをうろついていると、ノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「夕食、出来ましたよ」
「分かりました」
ベッドから飛び起き、部屋を出る。
ダイニングテーブルには、おいしそうなシチューとパンが並べられていた。
「質素なものですみませんが、シチューです」
「いえいえ、ごちそうですよ」
「さ、どうぞ。いただきます」
「いただきます」
温かいシチューをパンにつけたりしながら食べ終えると、彼女が話しかけてきた。
「もしかして、異世界から来た方ですか?」
「そのようです」
「この世界だと、異世界人はたびたび来るんですよね。たいていは、政府に捕まって強制労働所行きですが」
「えっ!?」
「可哀想ですよね。だから、よく匿ってあげてるんです。でも、一ヶ月くらいしたら出てっちゃうんですよねぇ。
あの人たち、今も無事かなぁ?」
「優しいですね」
「暇なもので。ああ、そうそう、たいていの人は、ここに来れてよかった、って言うんですよね」
「へぇ」
「ある人は、街が洪水に見舞われて、建物の屋上から出られなかったらしいです。救助隊のヘリが『あとで助けに来る』って言って通り過ぎたらしいですが、二度と来なかったらしいです」
「それは可哀想ですね」
「ある人は、『本当に笑うことができなくなっていた』って言ってましたね」
「確かに、あの世界だと似たようなこと多いですね」
注がれたワインをちびちび呑む。
「あ、そうだ。明日には、ここを出ようと思っているのですが」
「絶対にやめたほうがいいです! 今の季節、大雨が止まないんですよ。三ヶ月ほど大雨が続くんです」
「そ、それなら、ずっと居させてもらっていいですか?」
「ええ。もちろんです」
「ありがとうございます。お礼に、僕の話をさせてもらっていいですか?」
「お願いします」
「僕、所謂『ブラック企業』に勤めてまして。ひどい労働条件で働かせられてるんです。
辞めたいとも思ってるんですけど、会社辞めたって言いながら親に会わせる顔がなくて」
「それは、辛かったですね・・・」
「だから、この世界に来れてよかったです」
「よかった。三ヶ月ほど、よろしくお願いしますね」
「こちらこそです。ごちそうさまでした」
「部屋でくつろいでいてください」
席を離れ、奥の部屋に戻る。
ベッドに腰掛けようとしたそのとき、ぐわんっと視界が歪んだ。
「あ、効き始めました?」
彼女の声。
「ワインに薬仕込んでたんですよ。抵抗されたくなかったもので。
あ、そのまま寝といてください。私がおいしく食べるので」
「・・・ぇ・・・?」
「ああ、私、人喰い魔女なんですよ。特に、異世界人は美味しくて。
さ、黙って大人しく私に喰われてください」
人喰い魔女は、鋭い爪で男の心臓を貫いた。
- 1.1000年生きてる / いよわ
- 2.くろうばあないと / いよわ
- 3.ビターチョコデコレーション / syudou
- 4.Overdose / なとり
- 5.あの夏が飽和する。 / カンザキイオリ
- 6.モニタリング / DECO*27
- 7.化けの花 / なきそ
- 8.混沌ブギ / jon-YAKITORY
- 9.グッバイ宣言 / Chinozo
- 10.DAYBREAK FRONTLINE / Orangestar
- 11.アスノヨゾラ哨戒班 / Orangestar
- 12.電機 / 原口沙輔
- 13.共依存 / ちいたな
- 14.今はいいんだよ。 / MIMI
- 15.Be My Guest / Azari
- 16.ウルフィズム / ふぁるすてぃ
- 17.ギラギラ / Ado
- 18.アンヘル / かいりきベア
- 19.堕落ちゃん / ¿?
- 20.あいしていたのに / MARETU
- 21.IMAWANOKIWA / いよわ
- 22.Shadow Shadow / Azari
- 23.雨乙女 / Raon
- 24.ゆびきりレイン / カラフルピーチ