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曲パロです
何文字行ったと思う?
2000文字?
甘いなっ!
4500文字だぜっ!
すみません、クソ長くなってしまいました
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
今日も、僕はリビングの端っこに居た。
真ん中に居れば、親に八つ当たりされるから。
親は、まだ仕事で家に居ないが、クセになってしまったからもうそれでいいと思っている。
その間、僕はずっと窓の外を眺めている。
窓の外にあるのは、庭。
ただ芝生と生け垣があるだけなんだけど、見るものがないから、ぼーっと眺めるのがクセになってしまった。
今は6月上旬。梅雨真っ盛りだ。
窓には水滴がまばらに付着していて、時たま窓を滑り落ちる水滴を眺める。
そのとき、インターホンが鳴った。
僕の家は一軒家だから、すぐに玄関に向かう。鍵を開け、ドアを開く。
――××だった。
××は、ずぶ濡れで、震えていた。寒さでない何かに怯えていた。
「き、きき昨日、昨日ね。ひ、人を、こ、殺しちゃった、んだ」
ひどく震えている舌で彼女は喋った。
彼女を家に招き入れた。両親が突然帰って来るかもしれないことは承知の上で、堂々とリビングのソファの真ん中に彼女を座らせた。
「こ、殺したのは、が、学校の、隣の席の、虐めてくるアイツ。
も、もう耐えきれなくなって、突き飛ばしちゃ、った。そ、そしたら、打ち所が悪くて」
ソファの真ん中に座り、僕にタオルで丁寧に拭き取られながら、彼女は事情を話した。
だんだん震えも収まってきて、彼女はいつもの口調で話し始めた。
「もう、学校にも家にも世界にも、どんな場所にも私の居場所はないと思うから。
どこか遠いとこで死のうと思ってる。今日は、それを伝えたかっただけ。じゃあ、今まで・・・」
「待って。それなら、僕も。僕も、連れてって」
逃避行の旅が始まった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
彼は、おそらく私と一緒に死ぬつもりだ。
そんなことはさせない。彼は何が何でも生きさせる。
私はもう手遅れだけど、まだ君は立ち直れるから。だから、死ぬのは私だけで十分なんだ。
彼は、自殺のために包丁を持って行こうと言った。
でも、私だけが死ぬ計画のためには、包丁は一本だけでなくてはならない。
私は、「荷物になるから一本だけでいいでしょ。私の家に長い包丁あるから、持ってくるよ」と言って、彼を説得した。
キッチンから包丁を盗み取り、タオルで包んでリュックに突っ込む。家の財布も盗み取る。
そして、長年くすね続けて貯金した貯金箱の中身を財布に流し入れ、財布もリュックに詰め込む。
ハサミやカッター、タオルや救急箱など使えそうなもの、金になりそうなものもありったけ詰め込む。
リュックを背負い、小さく跳ねる。家の中を一瞥する。
そして、怨めしい男と女が写った写真が目に入った。
リュックから包丁を取り出し、写真の中の男と女の首や顔を滅多刺しにして、包丁を仕舞った。
あまり気分は晴れなかった。
「おまたせ」
家の鍵を締める。あの男と女は、普段鍵を持って出歩かないから、鍵を締めておけば多少の足止めになる。
「行こうか」
彼は、無表情でそう答えた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おまたせ」
彼女は、彼女の家から出て来た。いよいよだ。
緊張と高まる鼓動を抑え、「行こうか」と呟く。
「うん」
彼女と一緒に、歩き出した。
「どこ行く?」
「目的地は、死ぬに相応しいと思った場所。そこに辿り着まで、ぶらぶら歩いて行こうよ」
「楽しそう。それいいね」
そして、沈黙が僕達にのしかかった。
僕は、迷いなく交差点を曲がっていく彼女についていくしかなかった。
「え? 電車乗るの?」
彼女が足を止めたのは、古びた駅の前だった。
錆びていて、今にも落下しそうに傾いた、「竹岬」と書かれた駅の看板。
「誰もいないからさ、線路歩きたい」
「いいね。やろう」
駅に入る。竹岬駅はフェンスに穴があいていて、改札を通らずにプラットホームに入れるのだ。
「あ、次の駅3分後だ。待ったほうがいいかも」
田舎の駅だから、電車は45分に一回ほど。
平日の真っ昼間だから、誰もいない。
イスにもたれかかり、リュックから携帯ゲーム機を取り出す。
「え、なんで持って来てるの」
「一応ね」
起動音の後、ゲームソフトを選択する。
こんな田舎駅にインターネットなんて届いてないから、ローカルでできるソフトを選ぶ。
すると、エラー音が響く。「カセットが挿入されていません」。
「あーあ。ソフト忘れてた」
「そういえば、私、親の写真滅多刺しにして来た」
「あ。僕も、日記と写真破壊した」
「やっぱりやるよねー」
笑い合う。
携帯ゲーム機をリュックに仕舞う間に、列車が着いた。
「車掌さんに怪しまれるから、隠れよう」
彼女の言う通り、イスの影に隠れる。
すぐに、列車は発車して行った。
「ふー。よかった」
「はははっ」
「じゃあ、降りてみようか」
「よっと」
ホームから線路に飛び降りる。
ごろごろした砂利の感覚が、靴底を介して足に伝わる。
その時、額に水滴が落ちた。
「あ。傘忘れた」
「馬鹿め。私は持って来たぞ」
彼女は、リュックから折りたたみ傘を取り出し、僕を入れてくれた。
相合い傘。少し鼓動が高まる。
「どこ行く? 上がる?」
「次の駅まで行こうよ。言い訳できるしさ」
僕達は、無言のまま、相合い傘のまま、隣駅まで歩いた。
田舎だから、駅の間が長い。その分、沈黙もどんどん重くのしかかってくる。雨脚も強まる。
隣駅に到着する頃には、ざーざー降りになっていた。
隣駅には、ホームに上がれる階段があり、そこから上った。
無人駅だったし、誰も居なかったから、僕達は改札を飛び越えて脱出した。
彼女は、僕の足取りを気遣いながら、一緒に相合い傘で進んでくれた。
その逃避行の旅は、言葉に言い表せないほどに楽しかった。
「はるか遠くにある、誰もいない場所で二人で死のうよ。
僕達にとって、もうこの世界は無価値に等しいから、投げ出してしまおう。
人殺しなんて探せばすぐに見つかる。君は何も悪くない。虐めてきたアイツが悪いんだ」
でも、このセリフだけは、口から出てくれなかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ふうっ、ふうーっ」
私達は、遠くて名前も知らない山に登っていた。
息が上がる。彼も、疲れていた。
「一旦、きゅ、休憩にしよう?」
彼の提案に、私も乗った。疲れていた。
旅の出発から四日経った。まともなベッドで眠れたことなんてないし、室内で寝れれば最高だった。
野外で、雨に打たれながら寝たことなんてあった。
でも、彼と一緒に居れたから楽しかった。どんなことも乗り越えられた。
そろそろ頃合いかな。
私は、この山で死ぬ。
包丁で首を切って、そのまま崖から飛び降りる。
そうしたら、彼は凶器を持ってないはずだから、死なない。彼は生きる。
「ごめんね。
こんな裏切るような真似しちゃって。
でもね、君はまだやり直せる。頑張って。
私は手遅れだから。「来世に期待」だから。
君と一緒の道はもう歩めない。ごめんね。ごめんね。
少し恥ずかしいけれど、ずっと、貴方のことが好きでした。
だから、来世は、同じ道を歩んでほしいです。
本当にごめんね。 ――××」
彼が寝ている間に書いた手紙の内容を思い出す。
これを押し付けるようにして、私はこの世を去る。
本当にごめん。でも、これだけは譲れないんだ。
愛してる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ふう」
「綺麗だったね、山頂の景色」
山頂まで登り、下にある住宅街を見下ろした後、僕達は下山を開始した。
登山道は狭いけど、彼女が居るから苦はない。
ずっと片想いを秘めていた、幼馴染の彼女。
彼女も、僕と同じく両親から虐待を受けている。そんな共通点だけで、僕達は親友の関係を築き上げた。
この旅で、二人一緒に自殺する時が来たら。
「来世で結婚して下さい」って、プロポーズしよう。
自然と恥ずかしくなって、顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。
彼女は、前を歩いているから気づかない。よかった。
「・・・大事な話がある」
彼女は息苦しそうな、低音で話し始めた。
「といっても、あんま大事じゃないんだよね」
彼女は、リュックから包丁を取り出した。
「え? え? 何してるの?」
「これ読んで。ごめんね。頑張って。・・・じゃあね。ッ!!」
彼女は、ポケットから取り出した封筒を僕に押し付け、覚悟を決めて、首を切った。
「待って!!!」
「ごめ、んね・・・」
彼女は、背後の崖に倒れ込むようにして落ちる。
「嘘! 待ってよ! ××ー!!!!!」
「ごめっ」
直後、ガンッと音がして、彼女の口から音が途絶えた。
崖の下の彼女の瞳から、だんだん光が失われていく。
「嘘だ・・・。これは悪い夢なんだ・・・」
頭をかきむしる。そんなことをしても、現実から逃れることはできないと分かっていたけれど。
何時間か経って、情緒が安定し、僕は封筒の手紙を取り出した。
「うああああっっっ!!! うわああああん!!! ××ー!!」
嗚咽が止まらなかった。僕の脳は、××のことで埋め尽くされていたから。
「もう、いいか」
凶器は彼女が持っていた包丁だけ。だから、自分の首をかき切ることはできないけど、飛び降りれば死ねる。
飛び降りて死に損ねたとしても、彼女が握りしめている包丁で自殺すればいいだけだ。
よろよろと覚束ない足取りで、僕は崖から飛び降りた。
「ツー、ツー、ツー、ツー」
機械音。
重たい瞼を必死にこじ開ける。看護師の服を着た女の顔。
「患者起きました!」
「先生呼んで来ますね!」
「おはよう。君、自分の名前分かる?」
「・・・」
「状況がよく分からないよね。
ここは病院。君は、山奥で発見された。心肺停止状態で、生死の境を彷徨っていたけど、目覚めた」
「・・・」
「なんであそこに居たのか、言える?」
「・・・」
「・・・だんまりか。大丈夫。言わなくてもいいからね」
その後、病院生活が始まった。
どうやら、僕はあの崖から飛び降りて、気絶して、死に損なったらしい。
今すぐにでも彼女の元に行きたかったけど、病院だから、凶器になるものは一切なかった。
僕は記憶喪失を装い、黙秘を貫いた。
僕はどうやら、あの山の近くの病院に搬送されたらしい。彼女は死んでいて、近くの墓地に眠っているらしい。
三ヶ月ほどして、僕は退院した。
そして運が良いことに、老夫婦に養子として引き取られた。
老夫婦は優しかった。病院の入院代も支払ってくれたし、僕の過去を聞き出そうとすることもなかったし、本当に感謝している。
でも、僕は今日だけは、二人を裏切る。
「友達の家に行く」と偽った置き手紙を残し、僕は「竹崎駅」行きの電車に乗り込んだ。
ガタンゴトン、という電車の揺れる音とともに、密かに鼓動が高まっていくのを感じていた。
シュー、という音がして、ドアが開いた。僕はホームに降り立った。
しっかり改札を通って、懐かしの故郷に戻った。といっても、思い出など一切ないけれど。
僕は、必死に彼女を探していた。
常に、背後に、前に、どこかしこに、彼女が居る気がした。
でも、彼女はどこにも居なかった。
親らしきものたちの家もまだあったし、学校もそのままだった。
家族もクラスの奴らも、まだ生を謳歌しているというのに。
彼女だけはいない。
もう九月。梅雨の日の逃避行から、はや三ヶ月が経とうとしていた。
君の笑顔と、性格と、無邪気さが、僕の脳内を占拠している。
そして僕は、自分の愚かさに気づいた。
あのとき、君に。
「君は悪くない。一緒に投げ出してしまおう」と言えばよかった。
君の居ない夏は、今でも脳内を飽和している。
2000文字?
甘いなっ!
4500文字だぜっ!
すみません、クソ長くなってしまいました
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
今日も、僕はリビングの端っこに居た。
真ん中に居れば、親に八つ当たりされるから。
親は、まだ仕事で家に居ないが、クセになってしまったからもうそれでいいと思っている。
その間、僕はずっと窓の外を眺めている。
窓の外にあるのは、庭。
ただ芝生と生け垣があるだけなんだけど、見るものがないから、ぼーっと眺めるのがクセになってしまった。
今は6月上旬。梅雨真っ盛りだ。
窓には水滴がまばらに付着していて、時たま窓を滑り落ちる水滴を眺める。
そのとき、インターホンが鳴った。
僕の家は一軒家だから、すぐに玄関に向かう。鍵を開け、ドアを開く。
――××だった。
××は、ずぶ濡れで、震えていた。寒さでない何かに怯えていた。
「き、きき昨日、昨日ね。ひ、人を、こ、殺しちゃった、んだ」
ひどく震えている舌で彼女は喋った。
彼女を家に招き入れた。両親が突然帰って来るかもしれないことは承知の上で、堂々とリビングのソファの真ん中に彼女を座らせた。
「こ、殺したのは、が、学校の、隣の席の、虐めてくるアイツ。
も、もう耐えきれなくなって、突き飛ばしちゃ、った。そ、そしたら、打ち所が悪くて」
ソファの真ん中に座り、僕にタオルで丁寧に拭き取られながら、彼女は事情を話した。
だんだん震えも収まってきて、彼女はいつもの口調で話し始めた。
「もう、学校にも家にも世界にも、どんな場所にも私の居場所はないと思うから。
どこか遠いとこで死のうと思ってる。今日は、それを伝えたかっただけ。じゃあ、今まで・・・」
「待って。それなら、僕も。僕も、連れてって」
逃避行の旅が始まった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
彼は、おそらく私と一緒に死ぬつもりだ。
そんなことはさせない。彼は何が何でも生きさせる。
私はもう手遅れだけど、まだ君は立ち直れるから。だから、死ぬのは私だけで十分なんだ。
彼は、自殺のために包丁を持って行こうと言った。
でも、私だけが死ぬ計画のためには、包丁は一本だけでなくてはならない。
私は、「荷物になるから一本だけでいいでしょ。私の家に長い包丁あるから、持ってくるよ」と言って、彼を説得した。
キッチンから包丁を盗み取り、タオルで包んでリュックに突っ込む。家の財布も盗み取る。
そして、長年くすね続けて貯金した貯金箱の中身を財布に流し入れ、財布もリュックに詰め込む。
ハサミやカッター、タオルや救急箱など使えそうなもの、金になりそうなものもありったけ詰め込む。
リュックを背負い、小さく跳ねる。家の中を一瞥する。
そして、怨めしい男と女が写った写真が目に入った。
リュックから包丁を取り出し、写真の中の男と女の首や顔を滅多刺しにして、包丁を仕舞った。
あまり気分は晴れなかった。
「おまたせ」
家の鍵を締める。あの男と女は、普段鍵を持って出歩かないから、鍵を締めておけば多少の足止めになる。
「行こうか」
彼は、無表情でそう答えた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「おまたせ」
彼女は、彼女の家から出て来た。いよいよだ。
緊張と高まる鼓動を抑え、「行こうか」と呟く。
「うん」
彼女と一緒に、歩き出した。
「どこ行く?」
「目的地は、死ぬに相応しいと思った場所。そこに辿り着まで、ぶらぶら歩いて行こうよ」
「楽しそう。それいいね」
そして、沈黙が僕達にのしかかった。
僕は、迷いなく交差点を曲がっていく彼女についていくしかなかった。
「え? 電車乗るの?」
彼女が足を止めたのは、古びた駅の前だった。
錆びていて、今にも落下しそうに傾いた、「竹岬」と書かれた駅の看板。
「誰もいないからさ、線路歩きたい」
「いいね。やろう」
駅に入る。竹岬駅はフェンスに穴があいていて、改札を通らずにプラットホームに入れるのだ。
「あ、次の駅3分後だ。待ったほうがいいかも」
田舎の駅だから、電車は45分に一回ほど。
平日の真っ昼間だから、誰もいない。
イスにもたれかかり、リュックから携帯ゲーム機を取り出す。
「え、なんで持って来てるの」
「一応ね」
起動音の後、ゲームソフトを選択する。
こんな田舎駅にインターネットなんて届いてないから、ローカルでできるソフトを選ぶ。
すると、エラー音が響く。「カセットが挿入されていません」。
「あーあ。ソフト忘れてた」
「そういえば、私、親の写真滅多刺しにして来た」
「あ。僕も、日記と写真破壊した」
「やっぱりやるよねー」
笑い合う。
携帯ゲーム機をリュックに仕舞う間に、列車が着いた。
「車掌さんに怪しまれるから、隠れよう」
彼女の言う通り、イスの影に隠れる。
すぐに、列車は発車して行った。
「ふー。よかった」
「はははっ」
「じゃあ、降りてみようか」
「よっと」
ホームから線路に飛び降りる。
ごろごろした砂利の感覚が、靴底を介して足に伝わる。
その時、額に水滴が落ちた。
「あ。傘忘れた」
「馬鹿め。私は持って来たぞ」
彼女は、リュックから折りたたみ傘を取り出し、僕を入れてくれた。
相合い傘。少し鼓動が高まる。
「どこ行く? 上がる?」
「次の駅まで行こうよ。言い訳できるしさ」
僕達は、無言のまま、相合い傘のまま、隣駅まで歩いた。
田舎だから、駅の間が長い。その分、沈黙もどんどん重くのしかかってくる。雨脚も強まる。
隣駅に到着する頃には、ざーざー降りになっていた。
隣駅には、ホームに上がれる階段があり、そこから上った。
無人駅だったし、誰も居なかったから、僕達は改札を飛び越えて脱出した。
彼女は、僕の足取りを気遣いながら、一緒に相合い傘で進んでくれた。
その逃避行の旅は、言葉に言い表せないほどに楽しかった。
「はるか遠くにある、誰もいない場所で二人で死のうよ。
僕達にとって、もうこの世界は無価値に等しいから、投げ出してしまおう。
人殺しなんて探せばすぐに見つかる。君は何も悪くない。虐めてきたアイツが悪いんだ」
でも、このセリフだけは、口から出てくれなかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ふうっ、ふうーっ」
私達は、遠くて名前も知らない山に登っていた。
息が上がる。彼も、疲れていた。
「一旦、きゅ、休憩にしよう?」
彼の提案に、私も乗った。疲れていた。
旅の出発から四日経った。まともなベッドで眠れたことなんてないし、室内で寝れれば最高だった。
野外で、雨に打たれながら寝たことなんてあった。
でも、彼と一緒に居れたから楽しかった。どんなことも乗り越えられた。
そろそろ頃合いかな。
私は、この山で死ぬ。
包丁で首を切って、そのまま崖から飛び降りる。
そうしたら、彼は凶器を持ってないはずだから、死なない。彼は生きる。
「ごめんね。
こんな裏切るような真似しちゃって。
でもね、君はまだやり直せる。頑張って。
私は手遅れだから。「来世に期待」だから。
君と一緒の道はもう歩めない。ごめんね。ごめんね。
少し恥ずかしいけれど、ずっと、貴方のことが好きでした。
だから、来世は、同じ道を歩んでほしいです。
本当にごめんね。 ――××」
彼が寝ている間に書いた手紙の内容を思い出す。
これを押し付けるようにして、私はこの世を去る。
本当にごめん。でも、これだけは譲れないんだ。
愛してる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「ふう」
「綺麗だったね、山頂の景色」
山頂まで登り、下にある住宅街を見下ろした後、僕達は下山を開始した。
登山道は狭いけど、彼女が居るから苦はない。
ずっと片想いを秘めていた、幼馴染の彼女。
彼女も、僕と同じく両親から虐待を受けている。そんな共通点だけで、僕達は親友の関係を築き上げた。
この旅で、二人一緒に自殺する時が来たら。
「来世で結婚して下さい」って、プロポーズしよう。
自然と恥ずかしくなって、顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。
彼女は、前を歩いているから気づかない。よかった。
「・・・大事な話がある」
彼女は息苦しそうな、低音で話し始めた。
「といっても、あんま大事じゃないんだよね」
彼女は、リュックから包丁を取り出した。
「え? え? 何してるの?」
「これ読んで。ごめんね。頑張って。・・・じゃあね。ッ!!」
彼女は、ポケットから取り出した封筒を僕に押し付け、覚悟を決めて、首を切った。
「待って!!!」
「ごめ、んね・・・」
彼女は、背後の崖に倒れ込むようにして落ちる。
「嘘! 待ってよ! ××ー!!!!!」
「ごめっ」
直後、ガンッと音がして、彼女の口から音が途絶えた。
崖の下の彼女の瞳から、だんだん光が失われていく。
「嘘だ・・・。これは悪い夢なんだ・・・」
頭をかきむしる。そんなことをしても、現実から逃れることはできないと分かっていたけれど。
何時間か経って、情緒が安定し、僕は封筒の手紙を取り出した。
「うああああっっっ!!! うわああああん!!! ××ー!!」
嗚咽が止まらなかった。僕の脳は、××のことで埋め尽くされていたから。
「もう、いいか」
凶器は彼女が持っていた包丁だけ。だから、自分の首をかき切ることはできないけど、飛び降りれば死ねる。
飛び降りて死に損ねたとしても、彼女が握りしめている包丁で自殺すればいいだけだ。
よろよろと覚束ない足取りで、僕は崖から飛び降りた。
「ツー、ツー、ツー、ツー」
機械音。
重たい瞼を必死にこじ開ける。看護師の服を着た女の顔。
「患者起きました!」
「先生呼んで来ますね!」
「おはよう。君、自分の名前分かる?」
「・・・」
「状況がよく分からないよね。
ここは病院。君は、山奥で発見された。心肺停止状態で、生死の境を彷徨っていたけど、目覚めた」
「・・・」
「なんであそこに居たのか、言える?」
「・・・」
「・・・だんまりか。大丈夫。言わなくてもいいからね」
その後、病院生活が始まった。
どうやら、僕はあの崖から飛び降りて、気絶して、死に損なったらしい。
今すぐにでも彼女の元に行きたかったけど、病院だから、凶器になるものは一切なかった。
僕は記憶喪失を装い、黙秘を貫いた。
僕はどうやら、あの山の近くの病院に搬送されたらしい。彼女は死んでいて、近くの墓地に眠っているらしい。
三ヶ月ほどして、僕は退院した。
そして運が良いことに、老夫婦に養子として引き取られた。
老夫婦は優しかった。病院の入院代も支払ってくれたし、僕の過去を聞き出そうとすることもなかったし、本当に感謝している。
でも、僕は今日だけは、二人を裏切る。
「友達の家に行く」と偽った置き手紙を残し、僕は「竹崎駅」行きの電車に乗り込んだ。
ガタンゴトン、という電車の揺れる音とともに、密かに鼓動が高まっていくのを感じていた。
シュー、という音がして、ドアが開いた。僕はホームに降り立った。
しっかり改札を通って、懐かしの故郷に戻った。といっても、思い出など一切ないけれど。
僕は、必死に彼女を探していた。
常に、背後に、前に、どこかしこに、彼女が居る気がした。
でも、彼女はどこにも居なかった。
親らしきものたちの家もまだあったし、学校もそのままだった。
家族もクラスの奴らも、まだ生を謳歌しているというのに。
彼女だけはいない。
もう九月。梅雨の日の逃避行から、はや三ヶ月が経とうとしていた。
君の笑顔と、性格と、無邪気さが、僕の脳内を占拠している。
そして僕は、自分の愚かさに気づいた。
あのとき、君に。
「君は悪くない。一緒に投げ出してしまおう」と言えばよかった。
君の居ない夏は、今でも脳内を飽和している。
- 1.1000年生きてる / いよわ
- 2.くろうばあないと / いよわ
- 3.ビターチョコデコレーション / syudou
- 4.Overdose / なとり
- 5.あの夏が飽和する。 / カンザキイオリ
- 6.モニタリング / DECO*27
- 7.化けの花 / なきそ
- 8.混沌ブギ / jon-YAKITORY
- 9.グッバイ宣言 / Chinozo
- 10.DAYBREAK FRONTLINE / Orangestar
- 11.アスノヨゾラ哨戒班 / Orangestar
- 12.電機 / 原口沙輔
- 13.共依存 / ちいたな
- 14.今はいいんだよ。 / MIMI
- 15.Be My Guest / Azari
- 16.ウルフィズム / ふぁるすてぃ
- 17.ギラギラ / Ado
- 18.アンヘル / かいりきベア
- 19.堕落ちゃん / ¿?
- 20.あいしていたのに / MARETU
- 21.IMAWANOKIWA / いよわ
- 22.Shadow Shadow / Azari
- 23.雨乙女 / Raon
- 24.ゆびきりレイン / カラフルピーチ