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曲パロです

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《リクエスト募集中》曲パロ / プレイリスト

#5

あの夏が飽和する。 / カンザキイオリ 

何文字行ったと思う?
2000文字?
甘いなっ!
4500文字だぜっ!

すみません、クソ長くなってしまいました

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 今日も、僕はリビングの端っこに居た。
 真ん中に居れば、親に八つ当たりされるから。

 親は、まだ仕事で家に居ないが、クセになってしまったからもうそれでいいと思っている。
 その間、僕はずっと窓の外を眺めている。

 窓の外にあるのは、庭。
 ただ芝生と生け垣があるだけなんだけど、見るものがないから、ぼーっと眺めるのがクセになってしまった。

 今は6月上旬。梅雨真っ盛りだ。
 窓には水滴がまばらに付着していて、時たま窓を滑り落ちる水滴を眺める。

 そのとき、インターホンが鳴った。
 僕の家は一軒家だから、すぐに玄関に向かう。鍵を開け、ドアを開く。

――××だった。
 ××は、ずぶ濡れで、震えていた。寒さでない何かに怯えていた。

「き、きき昨日、昨日ね。ひ、人を、こ、殺しちゃった、んだ」

 ひどく震えている舌で彼女は喋った。
 彼女を家に招き入れた。両親が突然帰って来るかもしれないことは承知の上で、堂々とリビングのソファの真ん中に彼女を座らせた。

「こ、殺したのは、が、学校の、隣の席の、虐めてくるアイツ。
 も、もう耐えきれなくなって、突き飛ばしちゃ、った。そ、そしたら、打ち所が悪くて」

 ソファの真ん中に座り、僕にタオルで丁寧に拭き取られながら、彼女は事情を話した。
 だんだん震えも収まってきて、彼女はいつもの口調で話し始めた。

「もう、学校にも家にも世界にも、どんな場所にも私の居場所はないと思うから。
 どこか遠いとこで死のうと思ってる。今日は、それを伝えたかっただけ。じゃあ、今まで・・・」
「待って。それなら、僕も。僕も、連れてって」

 逃避行の旅が始まった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 彼は、おそらく私と一緒に死ぬつもりだ。
 そんなことはさせない。彼は何が何でも生きさせる。
 私はもう手遅れだけど、まだ君は立ち直れるから。だから、死ぬのは私だけで十分なんだ。

 彼は、自殺のために包丁を持って行こうと言った。
 でも、私だけが死ぬ計画のためには、包丁は一本だけでなくてはならない。
 私は、「荷物になるから一本だけでいいでしょ。私の家に長い包丁あるから、持ってくるよ」と言って、彼を説得した。

 キッチンから包丁を盗み取り、タオルで包んでリュックに突っ込む。家の財布も盗み取る。
 そして、長年くすね続けて貯金した貯金箱の中身を財布に流し入れ、財布もリュックに詰め込む。
 ハサミやカッター、タオルや救急箱など使えそうなもの、金になりそうなものもありったけ詰め込む。

 リュックを背負い、小さく跳ねる。家の中を一瞥する。
 そして、怨めしい男と女が写った写真が目に入った。
 リュックから包丁を取り出し、写真の中の男と女の首や顔を滅多刺しにして、包丁を仕舞った。
 あまり気分は晴れなかった。

「おまたせ」

 家の鍵を締める。あの男と女は、普段鍵を持って出歩かないから、鍵を締めておけば多少の足止めになる。

「行こうか」

 彼は、無表情でそう答えた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

「おまたせ」

 彼女は、彼女の家から出て来た。いよいよだ。
 緊張と高まる鼓動を抑え、「行こうか」と呟く。

「うん」

 彼女と一緒に、歩き出した。

「どこ行く?」
「目的地は、死ぬに相応しいと思った場所。そこに辿り着まで、ぶらぶら歩いて行こうよ」
「楽しそう。それいいね」

 そして、沈黙が僕達にのしかかった。
 僕は、迷いなく交差点を曲がっていく彼女についていくしかなかった。

「え? 電車乗るの?」

 彼女が足を止めたのは、古びた駅の前だった。
 錆びていて、今にも落下しそうに傾いた、「竹岬」と書かれた駅の看板。

「誰もいないからさ、線路歩きたい」
「いいね。やろう」

 駅に入る。竹岬駅はフェンスに穴があいていて、改札を通らずにプラットホームに入れるのだ。

「あ、次の駅3分後だ。待ったほうがいいかも」

 田舎の駅だから、電車は45分に一回ほど。
 平日の真っ昼間だから、誰もいない。

 イスにもたれかかり、リュックから携帯ゲーム機を取り出す。

「え、なんで持って来てるの」
「一応ね」

 起動音の後、ゲームソフトを選択する。
 こんな田舎駅にインターネットなんて届いてないから、ローカルでできるソフトを選ぶ。
 すると、エラー音が響く。「カセットが挿入されていません」。

「あーあ。ソフト忘れてた」
「そういえば、私、親の写真滅多刺しにして来た」
「あ。僕も、日記と写真破壊した」
「やっぱりやるよねー」

 笑い合う。
 携帯ゲーム機をリュックに仕舞う間に、列車が着いた。

「車掌さんに怪しまれるから、隠れよう」

 彼女の言う通り、イスの影に隠れる。
 すぐに、列車は発車して行った。

「ふー。よかった」
「はははっ」
「じゃあ、降りてみようか」
「よっと」

 ホームから線路に飛び降りる。
 ごろごろした砂利の感覚が、靴底を介して足に伝わる。

 その時、額に水滴が落ちた。

「あ。傘忘れた」
「馬鹿め。私は持って来たぞ」

 彼女は、リュックから折りたたみ傘を取り出し、僕を入れてくれた。
 相合い傘。少し鼓動が高まる。

「どこ行く? 上がる?」
「次の駅まで行こうよ。言い訳できるしさ」

 僕達は、無言のまま、相合い傘のまま、隣駅まで歩いた。
 田舎だから、駅の間が長い。その分、沈黙もどんどん重くのしかかってくる。雨脚も強まる。

 隣駅に到着する頃には、ざーざー降りになっていた。
 隣駅には、ホームに上がれる階段があり、そこから上った。
 無人駅だったし、誰も居なかったから、僕達は改札を飛び越えて脱出した。

 彼女は、僕の足取りを気遣いながら、一緒に相合い傘で進んでくれた。

 その逃避行の旅は、言葉に言い表せないほどに楽しかった。

「はるか遠くにある、誰もいない場所で二人で死のうよ。
 僕達にとって、もうこの世界は無価値に等しいから、投げ出してしまおう。
 人殺しなんて探せばすぐに見つかる。君は何も悪くない。虐めてきたアイツが悪いんだ」

 でも、このセリフだけは、口から出てくれなかった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

「ふうっ、ふうーっ」

 私達は、遠くて名前も知らない山に登っていた。
 息が上がる。彼も、疲れていた。

「一旦、きゅ、休憩にしよう?」

 彼の提案に、私も乗った。疲れていた。
 旅の出発から四日経った。まともなベッドで眠れたことなんてないし、室内で寝れれば最高だった。
 野外で、雨に打たれながら寝たことなんてあった。
 でも、彼と一緒に居れたから楽しかった。どんなことも乗り越えられた。
 そろそろ頃合いかな。
 私は、この山で死ぬ。
 包丁で首を切って、そのまま崖から飛び降りる。
 そうしたら、彼は凶器を持ってないはずだから、死なない。彼は生きる。

「ごめんね。
 こんな裏切るような真似しちゃって。
 でもね、君はまだやり直せる。頑張って。
 私は手遅れだから。「来世に期待」だから。
 君と一緒の道はもう歩めない。ごめんね。ごめんね。
 少し恥ずかしいけれど、ずっと、貴方のことが好きでした。
 だから、来世は、同じ道を歩んでほしいです。
 本当にごめんね。                    ――××」

 彼が寝ている間に書いた手紙の内容を思い出す。
 これを押し付けるようにして、私はこの世を去る。
 本当にごめん。でも、これだけは譲れないんだ。
 愛してる。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

「ふう」
「綺麗だったね、山頂の景色」

 山頂まで登り、下にある住宅街を見下ろした後、僕達は下山を開始した。
 登山道は狭いけど、彼女が居るから苦はない。

 ずっと片想いを秘めていた、幼馴染の彼女。
 彼女も、僕と同じく両親から虐待を受けている。そんな共通点だけで、僕達は親友の関係を築き上げた。

 この旅で、二人一緒に自殺する時が来たら。
 「来世で結婚して下さい」って、プロポーズしよう。

 自然と恥ずかしくなって、顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。
 彼女は、前を歩いているから気づかない。よかった。

「・・・大事な話がある」

 彼女は息苦しそうな、低音で話し始めた。

「といっても、あんま大事じゃないんだよね」

 彼女は、リュックから包丁を取り出した。

「え? え? 何してるの?」
「これ読んで。ごめんね。頑張って。・・・じゃあね。ッ!!」

 彼女は、ポケットから取り出した封筒を僕に押し付け、覚悟を決めて、首を切った。

「待って!!!」
「ごめ、んね・・・」

 彼女は、背後の崖に倒れ込むようにして落ちる。

「嘘! 待ってよ! ××ー!!!!!」
「ごめっ」

 直後、ガンッと音がして、彼女の口から音が途絶えた。
 崖の下の彼女の瞳から、だんだん光が失われていく。

「嘘だ・・・。これは悪い夢なんだ・・・」

 頭をかきむしる。そんなことをしても、現実から逃れることはできないと分かっていたけれど。

 何時間か経って、情緒が安定し、僕は封筒の手紙を取り出した。

「うああああっっっ!!! うわああああん!!! ××ー!!」

 嗚咽が止まらなかった。僕の脳は、××のことで埋め尽くされていたから。

「もう、いいか」

 凶器は彼女が持っていた包丁だけ。だから、自分の首をかき切ることはできないけど、飛び降りれば死ねる。
 飛び降りて死に損ねたとしても、彼女が握りしめている包丁で自殺すればいいだけだ。

 よろよろと覚束ない足取りで、僕は崖から飛び降りた。










「ツー、ツー、ツー、ツー」

 機械音。
 重たい瞼を必死にこじ開ける。看護師の服を着た女の顔。

「患者起きました!」
「先生呼んで来ますね!」
「おはよう。君、自分の名前分かる?」
「・・・」
「状況がよく分からないよね。
 ここは病院。君は、山奥で発見された。心肺停止状態で、生死の境を彷徨っていたけど、目覚めた」
「・・・」
「なんであそこに居たのか、言える?」
「・・・」
「・・・だんまりか。大丈夫。言わなくてもいいからね」

 その後、病院生活が始まった。
 どうやら、僕はあの崖から飛び降りて、気絶して、死に損なったらしい。
 今すぐにでも彼女の元に行きたかったけど、病院だから、凶器になるものは一切なかった。

 僕は記憶喪失を装い、黙秘を貫いた。
 僕はどうやら、あの山の近くの病院に搬送されたらしい。彼女は死んでいて、近くの墓地に眠っているらしい。

 三ヶ月ほどして、僕は退院した。
 そして運が良いことに、老夫婦に養子として引き取られた。
 老夫婦は優しかった。病院の入院代も支払ってくれたし、僕の過去を聞き出そうとすることもなかったし、本当に感謝している。
 でも、僕は今日だけは、二人を裏切る。
 「友達の家に行く」と偽った置き手紙を残し、僕は「竹崎駅」行きの電車に乗り込んだ。

 ガタンゴトン、という電車の揺れる音とともに、密かに鼓動が高まっていくのを感じていた。
 シュー、という音がして、ドアが開いた。僕はホームに降り立った。
 しっかり改札を通って、懐かしの故郷に戻った。といっても、思い出など一切ないけれど。

 僕は、必死に彼女を探していた。
 常に、背後に、前に、どこかしこに、彼女が居る気がした。
 でも、彼女はどこにも居なかった。

 親らしきものたちの家もまだあったし、学校もそのままだった。
 家族もクラスの奴らも、まだ生を謳歌しているというのに。
 彼女だけはいない。

 もう九月。梅雨の日の逃避行から、はや三ヶ月が経とうとしていた。
 君の笑顔と、性格と、無邪気さが、僕の脳内を占拠している。

 そして僕は、自分の愚かさに気づいた。
 あのとき、君に。
 「君は悪くない。一緒に投げ出してしまおう」と言えばよかった。
 君の居ない夏は、今でも脳内を飽和している。

作者メッセージ

リクエストでした。クソ長い駄作でした。
いつも長くなるんですが、何故でしょうか?
ということで、ここあ2025様リクエストの、「あの夏が飽和する / カンザキイオリ」でした。
次もまたリクエストです。本当にリクエストありがとうございます。

2025/09/27 09:33

シロツメクサと朝ぼらけ
ID:≫ 1rbH5j8ImDtsI
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