凄く気持ち良い雲の上。
身体の重さも感じられない。
息もしなくて良いような……
ん?
息をしなくても良い……?
[太字][大文字]「うGgッ…!!」[/大文字][/太字]
快感は途端に吐き気となる。意思を持って腹の中を蠢いていたモノが口から飛び出た。
[斜体][明朝体]ザザン――[/明朝体][/斜体]
大きな大きな揺り籠みたいな水の音。真っ黒だった俺の視界に徐々に光が射し込んだ。
「あ……?」
青い波が小さくて白い水飛沫を俺の身体に飛ばしている。乾いた星の砂の欠片が身体中に張り付いている。濡れた前髪から垂れた海水の一粒。目の前をヤドカリがせっせと通っていく。そして煙を燻らせた大量の謎の煙草が、俺の目の前で山積みになっている。
「海……」
身体が重い。それは海水が染み込んだ分、服が重くなったからだけではない気がする。身体を起き上がらせることが出来ない。
こんな風に手足を縛られているようでは。両手は背中側。 足首だけでなく、両膝が付くように縛られている。
ザクザクと、誰かが砂浜を歩いてくる音が背後から聞こえた。
「被験者2434番。実験成功。唯一の生存者だ」
背後の誰かはそう言うと、乱雑に俺の前髪を掴み、栄養だと称して不味い酒と肉を雑に俺の口に放り込んだ。そして俺の手足を縛っていた紐を切り落とす。
「俺に何をした!」
もうそこには、誰もいなかった。
「クソ…痛ぇ……」
勢い良く起き上がったは良いものの、生きては決して感じ得ないような痛みが首に刺さる。俺は知らぬ間に犬猫みたいに首輪を付けられていた。これも実験の道具なのだろうか。
「ぁぐっ!!」
少しでもずらせば、耐え難い痛みが俺を襲う。妙な敗北感と屈辱と首の痛みが悔しくて、目に涙が滲む。生きる術はなく、俺に与えられたのは無意味な痛みだけ。
「いやはや。毎度の如く遺体を回収しようと思ったら、今回は生きていたとはね」
涙でぼやけた視界に、薄汚れた布切れで顔を隠した人物が姿を現した。彼の姿が段々と近付いてくる。そして俺の頭が彼の影になった時、彼は俺の首周りをジロジロと眺めながらしゃがんだ。
「ふんふん。毒物注入法か。[漢字]対煙反応性九猫蘇生薬[/漢字][ふりがな]たいえんはんのうせいくびょう蘇生薬[/ふりがな]を首から体内に注入するとは、随分と荒い手段を選んだなぁ」
そう言って彼が懐から取り出したのは、禍々しい色の錠剤一つ。
「痛み止めだよ。今のままじゃ、クシャミをしただけで生きながらギロチンで首を刎ねられるような痛みを味わうことになるからね」
そして半ば強引に俺の口の中に入れて、反射的に俺も抗うことなくそれを飲み込んでしまった。果たして飲み込んで良かったものかと、不快な不安で胸が冷える。
「おや、しまったねぇ」
まるで俺の不安を分かっているかのように、全く慌てていない声色で彼は空になった自身の手の平を眺めた。
「年齢が止まってしまう副作用があったのを忘れていたよ。いやぁ、すまないね」
そして其奴は、何事もなかったかのように踵を返して何処かへ去ろうとする。
「おい待て!」
彼を追い掛けようにも、割れた足の親指の爪が足の人差し指に刺さっていて痛い。そして薬のせいか、足に力が入らず、俺は情けなくその場に座り込んだ。
あぁ、凄いや。海から出て陸を目指した、遥か昔の魚だった頃の先祖は。
「ん?」
今にも海の波に攫われてしまいそうな小さな小瓶が右手に見えた。藻に覆われて茶色くなった瓶の中に、何かが入っている。俺は、それを確かめないといけない気がして、感覚が麻痺した両足を引き摺って這って、その小瓶を手に取った。
藻を毟り取って、蓋を開けると中からは綺麗に真っ白な手紙が入っていた。ボレアリスからの手紙。差出人は、”Rito Usami”らしい。
[明朝体]「必ず生きて戻ります」[/明朝体]
俺の記憶が確かならボレアリスは今、南方の国と紛争中だった。差出人は徴兵されたのだろう。震える手で書いたことが分かる差出人の筆跡には、涙だけでなく僅かな嘘も滲んでいた。「必ず生きて戻る」という気持ちとは別の、死を恐れる気持ちを隠している嘘が。
「え?」
腰にぶら下がっている何かがピンク色に光った。首の痛みに気をとらわれて、腰のことなど見向きもしていなかったが、今まさに見てくれと言うように蛍光色に光っている。手紙を慎重に小瓶にしまって小瓶を傍らに横たえて、謎の腰の機械に俺は手を伸ばした。俺は、機械に表示された文字を見て目を疑った。
[太字]《Your mate is in BOREALIS:Rito Usami》[/太字]
手紙の差出人の名前が、そこに表示されていた。
「会いに……行ってみようか」
俺は途端に、所謂生きる気力というものを取り戻した気がした。気付けば足の麻痺も治り、俺は波打つ海の遥か向こうに見える島を眺めていた。謎の男に飲まされた薬のおかげで、年齢は止まってしまったらしいが首の痛みは全くない。だが、俺の体内には絶えず毒物が流れ込んでいる。
それでもまだ―――
「死ねねぇなぁ」
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