無限に広がる筈の宇宙で、俺は煙を燻らせる。「英雄」とは5億1010万平方キロメートルの中で実体のない目的を目指す奴隷。終末までのカウントダウンを内なる心臓だけが刻む。
命を削る煙草が1日経てば新たに猫を作り続ける日々がどれだけ繰り返されただろう。
「ふぅ…」
まだ昇らない太陽に待ちくたびれて、俺は息を吐く。澄んだ朝ぼらけを灰の煙が侵していく。言葉には到底できない、永遠への恐怖を滲ませた煙が稲妻となって身体に入り込む。
死んで生きて死んで生きて死んで生きて死んで生きて―――
この呪文にピリオドが打たれる瞬間は来ない。本当の声は奪われて、与えられた富に横たわる俺を、闇に侵食された誇り高き神聖なモノが嘲笑する。
喉の奥まで込み上げた何かをしまい込む。
[水平線]
惨劇悲劇に泣き暮れて「英雄」に罵詈雑言を浴びせる命と、数多の戦果に誓いのキスをした「英霊」たち。永遠の似たり寄ったり劇を、麒麟に出逢うまでの俺は何度も見続けた。ゲシュタルト崩壊が起こりそうだった。
民衆が待ち望んで創った未来は既に失せ果てて、勝利した者がそれを見て神の御業だと詠った。神の御業に絶望した麒麟が零した涙は稲妻となり、何の意味もなく地面に反射して返ってきた稲光が俺の瞳孔を貫く。機能死した神は歴史を繰り返して、数多の命が星になって増えていくのを数えていた。
悲しみの涙は拭われる暇もなく地球にこびり付いて、惨憺たる有様も正義の名の下に正当化される。現実逃避しても、警笛が鳴り響いた。
日常から平凡を奪うことを唄ったヒトデナシは、札束で顔を仰ぐ。夕焼けよりも残酷に赤い地面の上で光を失ったばかりの沢山の瞳が、俺を見ている。
生き物の目に見えない証は振り出しに戻る。靴底を覗けば噛んで吐かれたガム。神の風に乗った英霊の棺を、涙の雨雲が追いかける。俺は今にもほどけそうな名誉を頼りに、太陽が再び昇ることを願う。システム的な絶望に触れるには割に合わないほど、俺の手は希望で汚れている。
「俺と握手をしよう」
誰かが俺にそう言った。もしも俺がこの手を握れば俺は英雄になる。
人々が星屑を眺めるのは、闇に光を見つけたいとき。「見つけたい」とも思わないくらいにひっそりと浮かぶ昼の星屑にはなれないのだと悟った時、熱い頭痛がした。
[水平線]
「ふぅ…」
見飽きた太陽の熱をごく僅かに宿した冷たい空気に、煙がゆらゆら。
「ん…?」
遠くで何かが光った。俺は目を細めた。紫色の空と、鋭利な光の欠けた円弧の名残。
稲妻を背負った麒麟が、雷鳴の雄叫びを上げていた。[漢字]彼奴[/漢字][ふりがな]麒麟[/ふりがな]と目が合う。
「やっと来たか、あの[漢字]筋肉野郎[/漢字][ふりがな]宇佐美リト[/ふりがな]」
俺は腰を上げて、乾いた砂を払った。カサカサと空虚な音を立てる小さな紙箱から最後の一本を取り出して、火を灯す。俺たちの英雄譚が、東から西に伸び始めていた。
命を削る煙草が1日経てば新たに猫を作り続ける日々がどれだけ繰り返されただろう。
「ふぅ…」
まだ昇らない太陽に待ちくたびれて、俺は息を吐く。澄んだ朝ぼらけを灰の煙が侵していく。言葉には到底できない、永遠への恐怖を滲ませた煙が稲妻となって身体に入り込む。
死んで生きて死んで生きて死んで生きて死んで生きて―――
この呪文にピリオドが打たれる瞬間は来ない。本当の声は奪われて、与えられた富に横たわる俺を、闇に侵食された誇り高き神聖なモノが嘲笑する。
喉の奥まで込み上げた何かをしまい込む。
[水平線]
惨劇悲劇に泣き暮れて「英雄」に罵詈雑言を浴びせる命と、数多の戦果に誓いのキスをした「英霊」たち。永遠の似たり寄ったり劇を、麒麟に出逢うまでの俺は何度も見続けた。ゲシュタルト崩壊が起こりそうだった。
民衆が待ち望んで創った未来は既に失せ果てて、勝利した者がそれを見て神の御業だと詠った。神の御業に絶望した麒麟が零した涙は稲妻となり、何の意味もなく地面に反射して返ってきた稲光が俺の瞳孔を貫く。機能死した神は歴史を繰り返して、数多の命が星になって増えていくのを数えていた。
悲しみの涙は拭われる暇もなく地球にこびり付いて、惨憺たる有様も正義の名の下に正当化される。現実逃避しても、警笛が鳴り響いた。
日常から平凡を奪うことを唄ったヒトデナシは、札束で顔を仰ぐ。夕焼けよりも残酷に赤い地面の上で光を失ったばかりの沢山の瞳が、俺を見ている。
生き物の目に見えない証は振り出しに戻る。靴底を覗けば噛んで吐かれたガム。神の風に乗った英霊の棺を、涙の雨雲が追いかける。俺は今にもほどけそうな名誉を頼りに、太陽が再び昇ることを願う。システム的な絶望に触れるには割に合わないほど、俺の手は希望で汚れている。
「俺と握手をしよう」
誰かが俺にそう言った。もしも俺がこの手を握れば俺は英雄になる。
人々が星屑を眺めるのは、闇に光を見つけたいとき。「見つけたい」とも思わないくらいにひっそりと浮かぶ昼の星屑にはなれないのだと悟った時、熱い頭痛がした。
[水平線]
「ふぅ…」
見飽きた太陽の熱をごく僅かに宿した冷たい空気に、煙がゆらゆら。
「ん…?」
遠くで何かが光った。俺は目を細めた。紫色の空と、鋭利な光の欠けた円弧の名残。
稲妻を背負った麒麟が、雷鳴の雄叫びを上げていた。[漢字]彼奴[/漢字][ふりがな]麒麟[/ふりがな]と目が合う。
「やっと来たか、あの[漢字]筋肉野郎[/漢字][ふりがな]宇佐美リト[/ふりがな]」
俺は腰を上げて、乾いた砂を払った。カサカサと空虚な音を立てる小さな紙箱から最後の一本を取り出して、火を灯す。俺たちの英雄譚が、東から西に伸び始めていた。
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