僕がまだ子供で、刺客養成学校にいた頃のこと。僕には死に急ぎ野郎の友人がいた。持病持ちで余命僅かだと生まれた時に医者から言われたという、死への恐れを持たない彼は、「将来には有望な」暗殺者に育つと大人から言われていた。
『俺、もう、やめようかなって』
ある夜、寮の皆が寝静まった後に、2人だけで屋上に腰を下ろして空を眺めていた時、彼がポツリと呟いた。彼は穏やかな顔をして胸の中に潜ませている短刀を握り締めていた。
翌週、彼の遺体が近くの湖に浮かんでいるのが発見された。何が原因で彼はその運命を選んだのかと、「惜しい人材」を失った大人たちは、彼の眠る墓に向かって『諦めずに生きてほしかった』と嘆いた。
なんと馬鹿げた言葉だ。
もしかしたら彼は、この世界に嫌気が差したのかもしれない。地球の裏側に住む命の価値など知らず、時には正義という名の下に弱いものイジメをする。そんな世界が、子供の僕たちを「正しい方向」に導こうとする。
随分と素敵なことで。
[水平線]
右腕に付けた腕時計型タブレットのバイブ音。画面を確認すると「ミッションクリア」と無機質な文字の羅列が表示されていた。あぁ、仕掛けた爆弾が無事に働いたか。
『それ何?』
先週、養成学校に入学したばかりの男児が1人、俺に話し掛けてきた。訓練後なのか、全身に汗を流して右手には血の匂いが全くしない短刀を握り締めていた。彼の目線は、俺の腕時計型タブレットに向けられている。
『表彰状みたいなものだよ。〇〇人片付けると、貰える』
彼は俺の言葉に爛々と目を輝かせて、小さな手で短刀を振りかざした。
『いつになったら俺も戦いに行けるのかな』
無邪気に跳ねる声と輝く瞳は、ナイフよりもずっと鋭く俺の胸に突き刺さった。
[水平線]
いつの日だったか、物思いに耽っていた時に考えたことがある。僕たちは皆、僕たち自身に嫌われているのだ、と。自分が最強無敵になった気分で、空虚な権威にしがみつき、生きることよりも寧ろ「格好良く散る」ことを夢見る僕たちの姿を、僕たち自身が誰よりも嫌っているのだと。
[水平線]
僕が青年になって暗殺を生業としなくなってからは生活が厳しくなって、綺麗じゃない海に漂う壊れかけの小舟のように、人生を漂った。無駄に叩く心臓には、数多の負の記憶が刻み込まれている。僕が仕事を一つやれば、友人が一人ずつ姿を消していく。僕は僕自身の孤独さに、一種の高貴さを感じていた。
僕は、皆に出会うまでは、巷で言われる幸福が何かを知らなかった。そして、どうやら僕にはそれを得る権利はないらしいと知った時、〇〇という名前を恨んだ。あの学校に閉じ込められている間は、一仕事すれば褒められる。それが嬉しくて、俺たちは殺戮マシンへと育て上げられていった。だが、反抗期ついでに退学届を無理やり出して家出をして以降、僕は初めて気が付いた。誰かが亡くなった時は、涙を流すものなのだと。
僕は今となっては、3人の仲間と先輩後輩に囲まれて、Vtuberとして活動している。嘗ては想像すらしなかったが、今の俺は死とは無縁の世界で時にはゲームをし、踊り、歌う。
この世界は諸行無常で、無価値なもので溢れているかもしれない。嘗ての僕は、誰かの名誉ある殉職を決まり文句のように賛美した。未だにそんな僕自身を心から好きでいられるかは分からない。でも、たとえ無価値でも皆にはそこにいてほしいと願う。
だから僕はマイクを手に取った。僕の仲間も、顔も知らない僕のリスナーも僕自身も、いつかは宇宙に忘れ去られる日が来る。それでも僕たちは不格好な人生を懸命に生きていく。何度も人を葬った僕に、こんなことを言う権利はないのだろうけれど、僕は謳う。
「生きろ」と。
『俺、もう、やめようかなって』
ある夜、寮の皆が寝静まった後に、2人だけで屋上に腰を下ろして空を眺めていた時、彼がポツリと呟いた。彼は穏やかな顔をして胸の中に潜ませている短刀を握り締めていた。
翌週、彼の遺体が近くの湖に浮かんでいるのが発見された。何が原因で彼はその運命を選んだのかと、「惜しい人材」を失った大人たちは、彼の眠る墓に向かって『諦めずに生きてほしかった』と嘆いた。
なんと馬鹿げた言葉だ。
もしかしたら彼は、この世界に嫌気が差したのかもしれない。地球の裏側に住む命の価値など知らず、時には正義という名の下に弱いものイジメをする。そんな世界が、子供の僕たちを「正しい方向」に導こうとする。
随分と素敵なことで。
[水平線]
右腕に付けた腕時計型タブレットのバイブ音。画面を確認すると「ミッションクリア」と無機質な文字の羅列が表示されていた。あぁ、仕掛けた爆弾が無事に働いたか。
『それ何?』
先週、養成学校に入学したばかりの男児が1人、俺に話し掛けてきた。訓練後なのか、全身に汗を流して右手には血の匂いが全くしない短刀を握り締めていた。彼の目線は、俺の腕時計型タブレットに向けられている。
『表彰状みたいなものだよ。〇〇人片付けると、貰える』
彼は俺の言葉に爛々と目を輝かせて、小さな手で短刀を振りかざした。
『いつになったら俺も戦いに行けるのかな』
無邪気に跳ねる声と輝く瞳は、ナイフよりもずっと鋭く俺の胸に突き刺さった。
[水平線]
いつの日だったか、物思いに耽っていた時に考えたことがある。僕たちは皆、僕たち自身に嫌われているのだ、と。自分が最強無敵になった気分で、空虚な権威にしがみつき、生きることよりも寧ろ「格好良く散る」ことを夢見る僕たちの姿を、僕たち自身が誰よりも嫌っているのだと。
[水平線]
僕が青年になって暗殺を生業としなくなってからは生活が厳しくなって、綺麗じゃない海に漂う壊れかけの小舟のように、人生を漂った。無駄に叩く心臓には、数多の負の記憶が刻み込まれている。僕が仕事を一つやれば、友人が一人ずつ姿を消していく。僕は僕自身の孤独さに、一種の高貴さを感じていた。
僕は、皆に出会うまでは、巷で言われる幸福が何かを知らなかった。そして、どうやら僕にはそれを得る権利はないらしいと知った時、〇〇という名前を恨んだ。あの学校に閉じ込められている間は、一仕事すれば褒められる。それが嬉しくて、俺たちは殺戮マシンへと育て上げられていった。だが、反抗期ついでに退学届を無理やり出して家出をして以降、僕は初めて気が付いた。誰かが亡くなった時は、涙を流すものなのだと。
僕は今となっては、3人の仲間と先輩後輩に囲まれて、Vtuberとして活動している。嘗ては想像すらしなかったが、今の俺は死とは無縁の世界で時にはゲームをし、踊り、歌う。
この世界は諸行無常で、無価値なもので溢れているかもしれない。嘗ての僕は、誰かの名誉ある殉職を決まり文句のように賛美した。未だにそんな僕自身を心から好きでいられるかは分からない。でも、たとえ無価値でも皆にはそこにいてほしいと願う。
だから僕はマイクを手に取った。僕の仲間も、顔も知らない僕のリスナーも僕自身も、いつかは宇宙に忘れ去られる日が来る。それでも僕たちは不格好な人生を懸命に生きていく。何度も人を葬った僕に、こんなことを言う権利はないのだろうけれど、僕は謳う。
「生きろ」と。
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