[水平線]
【お読みになる前に】
こちらは、夢小説の要素を大いに含んだ曲パロとなっております。
作品内に登場する「貴方」とは、読者の皆様の推しを想定しております。何人も推しがいるという方もいらっしゃると思いますが、作品の都合上、その内の誰か一人に絞ってもらえると読みやすいと思います。
また、今作品では「貴方」の一人称が「僕」となっていますが、そこは適宜「俺」なり「私」なり、皆様の推しの一人称に脳内変換してお読み下さい。
あと、読者の皆様は推しと一緒にカルピスとポテチを食べたり飲んだりする設定になっていますが、カルピスやポテチが嫌いだという人もいると思うので、そこはご自由に好きな飲み物やお菓子等に読み換えてお楽しみください。
[水平線]
見覚えがあるような無いような畳の部屋に気付けばポツンと一人で座っていた。
窓際の畳の色は少し色褪せている。窓際に置かれた扇風機は日向ぼっこをしている。真っ白な障子の隙間から、記憶のどこかから掘り起こした様な田舎の風景が見える。
ガラリと背後の襖が開く。
「お待たせぇ〜」
氷入りのカルピスが入ったコップ2人分と、大きめサイズのポテチの袋を手に持った貴方が当たり前のように入ってきて私の隣に腰を下ろす。友達のように振る舞う貴方に私は少し戸惑いつつも、そういうものとして何故か受け入れてしまう。
「うん、美味っ!」
口の開いたポテチの袋を私と貴方の間に置いて、貴方は数枚のポテチを一度に掴んで食べた。そして油が付いたままの手をコップに伸ばして、カルピスを一口飲む。氷がカラカラと涼しい音を立てる。
非日常と日常が交錯した、やはり非日常な昼の一時。いったい何が起こっているんだ、と貴方の横顔を見て思う。自分から話し掛けるのは何だか怖くて、ただ貴方を眺めるだけ。
「卒業して、もう半年くらいだもんね」
障子の隙間から射し込む太陽の光は熱すぎる。窓際で日向ぼっこをしていた扇風機を、貴方は私達の前に連れてきてボタンを押す。辛うじて涼しく感じる風が私の顔を隠した撫でていく。
私の頭の上に浮かんでいた疑問符は、扇風機の風に吹かれて飛んでいってしまった。「夏休みだから、別の学校の友達かが遊びに来ているんだな」とあり得ないことを信じ込んで、私は貴方の言葉に黙って頷いた。
貴方は眩しそうに目を細めて、障子の隙間から見える景色を眺めていた。その視線の先には、透き通った水が流れる細い用水路。田んぼ沿いを走るその用水路は、白い光を永遠に運んでいく道に見えた。
「…あの魚、死んでない?」
用水路は光だけじゃなくて、一匹の小さな魚の死骸も運んでいた。
「魚も熱中症になるって言うしね」
そうして私は、初めて声を出した。死んだ魚は光の棺桶に包まれて、貴方に見送られながら遠く遠くへと運ばれていった。
「今はもう学校生活は安定してるの?」
障子を閉めた貴方が、私の隣に胡座をかいて座ってカルピスの残りを飲み干す。氷で味が薄くなって少し不味いといった表情を浮かべて。
「うん。おかげで今は半グレを卒業してる」
不思議なことに私の記憶には、体験した覚えのないものが含まれていた。不良少年少女育成小学校と巷であだ名を付けられるほどに秩序が崩壊した地元のとある小学校の卒業生だということに私はなっていた。優等生はその環境に耐えられず、不登校になったり転校していったりした記憶が付け足されている。そして、周りからイジメられないために自分も周りに染まっていった記憶。漸くその環境から解放されて、本来の自分の性格を取り戻しつつある夏のひと時。貴方の隣で、苦い後悔が沸き起こる。
何で人に向かって平気に『死ね』って言えてしまったんだろう。
お互いに挨拶の代わりに暴言を交わし合った。お互い真に受けずに、毎日同じ通学路を歩いてきた。もしかしたら自分は、時折テレビで見かける加害者になっていたかもしれない。もしかしたら、明日にでも被害者側になっていたかもしれない。今の私が何者でもないことを、私は誰にどれだけ沢山の感謝をしたら良いのだろう。
「ねぇ、約束」
貴方がそう言ったとき、一瞬だけ蝉が止んだ。ポテチの袋はあっという間に空になって、カルピスが仄かに香る2つのコップは私たちの横で太陽の光を反射している。氷の溶け水と僅かなカルピスが混ざった液体が、鈍い光を宿している。
「自分のことが嫌いになってしまいそうだったら、僕と出会った日を思い出してほしい」
何の脈絡もない展開に戸惑う私をよそに、貴方は話し続ける。
「唱える呪文をほんの少しだけ変えてみようよ。それで、嫌いなことより好きなことを増やそう。君に笑顔を届けることが僕の仕事」
貴方はそう言い終えると不意に立ち上がって、何処かへ去ろうとする。
「どこに行くの?」
私の問いかけに、貴方は答えを濁した。そして貴方の姿は見えなくなった。
「あ」
そう思ったと同時に、視界がぼやけた。硬そうな黒い板状が目の前の枕元に見える。それからバイブ音が聞こえている。
「朝か」
やっと気付いた。あれは夢で、貴方とは友達な訳がなかった。枕元に転がっていたスマホを手に取り画面を点けると、今の時刻を示す4つの数字の並びと一緒に、夢の中で見た貴方の姿が映っていた。
やっと思い出した。昨晩は、呼吸をするのも億劫で、気分転換にスマホに溜めた好きな動画の再生リストを開ける操作さえ面倒で、あらゆる光から逃げるように布団に包まった夜だった。
今は、鳥のさえずりが聞こえる、晴れ渡った気持ちの良い朝。
今日は、貴方の歌声でも聴きながら軽く散歩をしてみようか。
【お読みになる前に】
こちらは、夢小説の要素を大いに含んだ曲パロとなっております。
作品内に登場する「貴方」とは、読者の皆様の推しを想定しております。何人も推しがいるという方もいらっしゃると思いますが、作品の都合上、その内の誰か一人に絞ってもらえると読みやすいと思います。
また、今作品では「貴方」の一人称が「僕」となっていますが、そこは適宜「俺」なり「私」なり、皆様の推しの一人称に脳内変換してお読み下さい。
あと、読者の皆様は推しと一緒にカルピスとポテチを食べたり飲んだりする設定になっていますが、カルピスやポテチが嫌いだという人もいると思うので、そこはご自由に好きな飲み物やお菓子等に読み換えてお楽しみください。
[水平線]
見覚えがあるような無いような畳の部屋に気付けばポツンと一人で座っていた。
窓際の畳の色は少し色褪せている。窓際に置かれた扇風機は日向ぼっこをしている。真っ白な障子の隙間から、記憶のどこかから掘り起こした様な田舎の風景が見える。
ガラリと背後の襖が開く。
「お待たせぇ〜」
氷入りのカルピスが入ったコップ2人分と、大きめサイズのポテチの袋を手に持った貴方が当たり前のように入ってきて私の隣に腰を下ろす。友達のように振る舞う貴方に私は少し戸惑いつつも、そういうものとして何故か受け入れてしまう。
「うん、美味っ!」
口の開いたポテチの袋を私と貴方の間に置いて、貴方は数枚のポテチを一度に掴んで食べた。そして油が付いたままの手をコップに伸ばして、カルピスを一口飲む。氷がカラカラと涼しい音を立てる。
非日常と日常が交錯した、やはり非日常な昼の一時。いったい何が起こっているんだ、と貴方の横顔を見て思う。自分から話し掛けるのは何だか怖くて、ただ貴方を眺めるだけ。
「卒業して、もう半年くらいだもんね」
障子の隙間から射し込む太陽の光は熱すぎる。窓際で日向ぼっこをしていた扇風機を、貴方は私達の前に連れてきてボタンを押す。辛うじて涼しく感じる風が私の顔を隠した撫でていく。
私の頭の上に浮かんでいた疑問符は、扇風機の風に吹かれて飛んでいってしまった。「夏休みだから、別の学校の友達かが遊びに来ているんだな」とあり得ないことを信じ込んで、私は貴方の言葉に黙って頷いた。
貴方は眩しそうに目を細めて、障子の隙間から見える景色を眺めていた。その視線の先には、透き通った水が流れる細い用水路。田んぼ沿いを走るその用水路は、白い光を永遠に運んでいく道に見えた。
「…あの魚、死んでない?」
用水路は光だけじゃなくて、一匹の小さな魚の死骸も運んでいた。
「魚も熱中症になるって言うしね」
そうして私は、初めて声を出した。死んだ魚は光の棺桶に包まれて、貴方に見送られながら遠く遠くへと運ばれていった。
「今はもう学校生活は安定してるの?」
障子を閉めた貴方が、私の隣に胡座をかいて座ってカルピスの残りを飲み干す。氷で味が薄くなって少し不味いといった表情を浮かべて。
「うん。おかげで今は半グレを卒業してる」
不思議なことに私の記憶には、体験した覚えのないものが含まれていた。不良少年少女育成小学校と巷であだ名を付けられるほどに秩序が崩壊した地元のとある小学校の卒業生だということに私はなっていた。優等生はその環境に耐えられず、不登校になったり転校していったりした記憶が付け足されている。そして、周りからイジメられないために自分も周りに染まっていった記憶。漸くその環境から解放されて、本来の自分の性格を取り戻しつつある夏のひと時。貴方の隣で、苦い後悔が沸き起こる。
何で人に向かって平気に『死ね』って言えてしまったんだろう。
お互いに挨拶の代わりに暴言を交わし合った。お互い真に受けずに、毎日同じ通学路を歩いてきた。もしかしたら自分は、時折テレビで見かける加害者になっていたかもしれない。もしかしたら、明日にでも被害者側になっていたかもしれない。今の私が何者でもないことを、私は誰にどれだけ沢山の感謝をしたら良いのだろう。
「ねぇ、約束」
貴方がそう言ったとき、一瞬だけ蝉が止んだ。ポテチの袋はあっという間に空になって、カルピスが仄かに香る2つのコップは私たちの横で太陽の光を反射している。氷の溶け水と僅かなカルピスが混ざった液体が、鈍い光を宿している。
「自分のことが嫌いになってしまいそうだったら、僕と出会った日を思い出してほしい」
何の脈絡もない展開に戸惑う私をよそに、貴方は話し続ける。
「唱える呪文をほんの少しだけ変えてみようよ。それで、嫌いなことより好きなことを増やそう。君に笑顔を届けることが僕の仕事」
貴方はそう言い終えると不意に立ち上がって、何処かへ去ろうとする。
「どこに行くの?」
私の問いかけに、貴方は答えを濁した。そして貴方の姿は見えなくなった。
「あ」
そう思ったと同時に、視界がぼやけた。硬そうな黒い板状が目の前の枕元に見える。それからバイブ音が聞こえている。
「朝か」
やっと気付いた。あれは夢で、貴方とは友達な訳がなかった。枕元に転がっていたスマホを手に取り画面を点けると、今の時刻を示す4つの数字の並びと一緒に、夢の中で見た貴方の姿が映っていた。
やっと思い出した。昨晩は、呼吸をするのも億劫で、気分転換にスマホに溜めた好きな動画の再生リストを開ける操作さえ面倒で、あらゆる光から逃げるように布団に包まった夜だった。
今は、鳥のさえずりが聞こえる、晴れ渡った気持ちの良い朝。
今日は、貴方の歌声でも聴きながら軽く散歩をしてみようか。
- 1.シビルアイ 星導ショウ/にじさんじ
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- 19.まにまに r-906 (小柳ロウ×叢雲カゲツ)
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