「馬鹿みたい、と笑えよ」
誰もいない教室の、一番後ろの席みたいな夜だ。
おやすみ。
この一言で、世界との通信をぶち切れるから、夜は好きだ。
日中、あんなに「個性が大事」だと言っていた先生も、SNSで「ありのままの君を愛して」と呟く名前も知らない誰かも、夜になればみんな同じように、泥みたいな眠りに落ちて、ただの肉の塊になる。
皮肉だよね。
目立とうと必死だった僕らも、暗闇の中じゃ等しく透明だ。
世界は愛で溢れているらしい。
でも、その愛とやらは、賞味期限付きのコンビニ弁当みたいに、都合が悪くなればすぐにゴミ箱に捨てられる。
「君のため」なんて言葉の裏には、「僕を嫌いにならないで」っていう自分勝手な欲求が張り付いている。
みんな、自分を愛してほしくて、誰かを愛したフリをしているだけ。
だけど、この深くて、底なし沼みたいな暗闇だけは、嘘をつかない。
僕がどれだけ惨めで、性格が悪くて、独りよがりでも、ただ黙って、冷たく抱きしめてくれる。
この静寂だけが、僕に与えられた唯一の本物の愛だと思うんだ。
さあ、スマホの光を消して。
綺麗な言葉も、汚い本音も、全部この闇に溶かしてしまおう。
明日になれば、また「いい子」の仮面を被らなきゃいけないから。
…それじゃ、また。
何者でもない、ただの僕に戻る時間だ。
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