人間
あーあ、落ちちゃった。
真っ赤なのが、転がって泥がついた。
みんな「綺麗だね」って言いながら、それを拾う指先が、欲張りに震えてる。
ねえ、これって「拾いもの」?
それとも「奪いもの」?
僕らは、誰かの真似をして服を着る。
恥ずかしいからじゃなくて、中身が空っぽなのがバレるのが怖いから。
お揃いの布を纏って、安心という名前の毒を、ちびちびと飲む。
左の脇腹が、ときどきチクっとするんだ。
何かを差し出した記憶なんてないのに、最初から、僕らは欠けて生まれてきたみたい。
足りないものを埋めるために、「愛」とか「正義」とか、賞味期限の切れたシールを貼り合っている。
ねえ、見て。
あの人は、自分の影を切り刻んで食べてるよ。
それが一番、手っ取り早い「栄養」なんだって。
賢くなったつもりで、僕らはどんどん、バカなフリが上手くなる。
透明なカゴの中で、 外の世界を「地獄」と呼んで笑うんだ。
ねえ、本当の地獄は、この実が、実は「ただの石ころ」だったと
気づいてしまう瞬間じゃないかな。
一番最初に嘘を教えたのは、足のない、お喋り上手な誰かだったっけ?
「知れば自由になれるよ」なんて、 今思えば、最大級のジョークだね。
自由になったはずの僕らは、今じゃ「いいね」の数で首を絞め合って、土に還る日を指折り数えてる。
ねえ、神様。
あなたが作ったこの箱庭、 もう、飽きちゃった。
次は、何を食べて 何を知ったフリをする?
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