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暗いシーン=あり
グロテスクなシーン=なし
流血シーン=あり
暴力的なシーン=あり
性的なシーン=なし
いじめや、いじめを連想させるシーン=なし
災害のシーン=なし
ホラーシーン=なし
敬天愛人~西郷隆盛の希望~
「……大久保…おまんは何を考えとるんじゃ…」
1人の男が腕を組んで座りながらそう呟いた。この男こそが、西郷隆盛である。
隆盛は静かに空を見上げる。
「これは、この…日本のため、日本のためじゃ……」
隆盛は立ち上がり、兵が集まっている場所に歩いて行った。
時はさかのぼり、1827年。
鹿児島城下加治屋町で西郷吉兵衛の長男として小吉という男子が生まれる。後の西郷隆盛である。
[太字][大文字]「オギャーーーーオギャーー!」[/大文字][/太字]
「大きい声で泣くのぉ、元気に育ちそうじゃ」
吉兵衛が小吉を見て微笑んだ。
薩摩藩の男子には武芸と学問を学ぶ郷中教育という制度があった。
「やぁー!」
[太字][斜体]バシッ![/斜体][/太字]
「勝負あり!小吉の勝ちじゃ」
「おおおー!」
皆が小吉に感心した。
「やはり小吉どんは流石じゃなぁ」
小吉に話しかけたのは大久保正助、後の大久保利通である。
「そんなことはない、正助どんこそ武芸は強か、そして学問もできるではないか。」
「おいは小吉どんには武芸では敵わんがな」
「…おいは武、正助どんは文…で薩摩を背負うんじゃな」
幼馴染の子吉と正助は二人揃って一目置かれる存在になっていた。
1839年、郷中の行事、妙円寺詣りをしている時、小吉達の郷中と他の郷中と出会った時
「おい、お前らが小吉と正助か?文武に優れているからって調子に乗っているそうじゃないか、お前らの家はろくに金もないくせになぁ」
[太字]「なんだと!?」[/太字]
正助が殴りかかろうとしたその時
[太字]ガシッ[/太字]
「よさないか、正助」
小吉が正助の腕を掴みながら言った。
「…小吉どん………そうじゃな、すまない」
「何勝手にそっちで話を進めてるんじゃぁ!」
相手の1人が殴りかかってきた瞬間
[太字][大文字]ドカァッ![/大文字][/太字]
「な…何が起こったぁ!?」
相手が茂みに投げ飛ばされている。
「なんちゅう馬鹿力じゃ!大勢でやっちまえ!」
大勢が小吉に向かって走ってくる。
「まだ来るかっ!」
小吉はものすごい勢いで全員を投げ飛ばした。
「くそっ!逃げろっ!」
相手は全員逃げていった。
「小吉どん!すごか!」
郷中のみんなが小吉に駆け寄って口々に褒めた。
正助が微笑みながら小吉に言う。
「…小吉どん、ありがとう」
数日後…
小吉と正助が楽しそうに話しながら歩いている。その姿を物影から見ている集団があった。この前の件の郷中たちだ。
「西郷小吉めぇ…あのまま終わらせるわけにはいかんっ!叩きのめしちゃる!」
「しかし、力じゃあいつには勝てんぞ、どげんする?」
「……刀を使う」
「え?でも刀を抜いたらおいたち切腹じゃぞ」
「…斬りはせん、鞘をつけたまま殴りつけるだけじゃ」
「…おい、西郷が来たぞ」
「今じゃ!」
[太字]「おりゃぁ!!」[/太字]
「…!!またあいつらか!」
[太字]ガシィィッ![/太字]
刀が小吉の右腕に当たる。
「ぐっ……」
小吉の腕から血が垂れてきた。
「何!?なぜ血が……!!」
よく見ると、鞘が割れて刀身が出てきている。
「うわあああ!」
「わ…わざとじゃない!お…大人には絶対に言うなよ!?」
そう言い、郷中は逃げていった。
「大丈夫か小吉どん!!」
「…くっ……大丈夫じゃ、心配はいらん…」
「大丈夫なわけあるか!すぐに大人に…」
[太字][大文字]「それだけはいかん!」[/大文字][/太字]
「え?」
「このことを言うたら、あいつらは切腹じゃ…だから何があっても言い申はん!」
「…小吉……っ!」
数日後
[斜体]ガラガラッ[/斜体]
「小吉どん、傷の具合はどうじゃ?」
「おお…正助どん…」
「どげんしたんじゃ?」
こんなに元気のない子吉を見たのは初めてだ。
「……腕の筋を…痛めた……もう刀は握れん………」
「えっ?…じゃあ小吉、お前…」
「ああ…武術で薩摩を…殿様をお支えすることはできなくなった…」
[太字][大文字]「う…うああああああ!」[/大文字][/太字]
小吉は床に突っ伏して大声で泣いた。
[小文字]「…小吉」[/小文字]
[太字][大文字]「うああああああ!」[/大文字][/太字]
[太字][大文字]「小吉!」[/大文字][/太字]
「刀を持てなくても…武芸ができなくても!殿様の役に立つ方法はいくらでもある!」
「腕の傷くらいなんだというんじゃ!小吉どんなら他のやり方でも殿様のお役に立つことができるはずじゃ!」
「正助どん……………あぁ…そうじゃ…そうじゃな正助どん!」
「そうじゃ小吉どん!」
2人は大声で笑った。
1884年、小吉は元服して吉之助と名乗るようになり、藩の郡方書役助になった。1846年には、正助が藩の記録所書役助になった。二人は、薩摩藩士としての一歩を踏み出したのである。
その後、吉之助は島津斉彬に気に入られ重要な役を任ぜられることになったが、早くに斉彬が死去してしまった。
「斉彬様……今、参りますぞ」
吉之助は脇差を抜いた。その瞬間
[斜体]ガラッ[/斜体]
ふすまが開いた。
「吉之助殿、斉彬公に殉死されるおつもりですね?」
この男は月照という僧侶で、尊王攘夷活動に身を捧げていた。
「…お止めくださるな月照殿」
[太字][大文字]「いたずらに命を捨てるでないわ!貴様が死ぬことを、斉彬公が望んでいるとお思いか?生きて斉彬様の志を果たす、それが斉彬公の望んでいることではないのか!?」[/大文字][/太字]
「……月照殿、礼を言い申す、おかげで目が覚めました」
「うむ」
吉之助は月照を慕っていたが、薩摩藩上層部によって、吉之助は、密かに月照を始末する立場に追い込まれる。
[大文字][斜体]ザパーン![/斜体][/大文字]
吉之助と月照は大きな船の上にいる。
「…吉之助殿」
「どうかいたしましたか?」
「私をかくまうというのは嘘で、私を始末する…おつもりですね?」
「…………月照殿のおっしゃる通りでごわす…」
「他人の手にかけられるというのは恥‥でございます、せめて、己によって…」
月照がゆっくりと海に向かって歩いていく。
[太字]「月照殿!」[/太字]
「1人では…行かせもはん!」
「それはいけません!あなたまで死ぬことはありません!」
「…薩摩藩の暴走を止めることができなかった責任は、おいにもありますからな」
「…吉之助殿……」
「斉彬様…今行き申す!」
吉之助はそう叫びながら月照と共に海に飛び込んだ。
[太字]ザッパァァァン![/太字]
「いかがした!」
「月照殿が飛び降りた!吉之助殿もだ!」
[太字][斜体]ゴポポポ…………[/斜体][/太字]
[小文字][明朝体]「吉之助どん!」[/明朝体][/小文字]
[小文字]「吉之助どん!」[/小文字]
[小文字]「西郷どん!」[/小文字]
[明朝体]「兄上!」[/明朝体]
[明朝体]「吉之助どん!」[/明朝体]
[太字]「吉之助どん!」[/太字]
「……ん?」
「吉之助どん!よかった!一時はもうだめかと思い申した!」
「…月照……殿…は?」
正助や吉之助の家族達が首を横に振る。
「おいどんだけ…生き残ってしもうたんか………!面目ない!」
[太字]「そのようなことを言うな…お前が生き残ったということは、天がお前の事を国にとって必要な人物だと思ったからだ!」[/太字]
正助が大声で吉之助に語りかける。
「だが…月照殿は………!」
「生き残ったからには!やるべきことはやるんじゃ…!月照殿の分も!」
「正助どん…!わかった!おいは生きる!斉彬様の分も…月照殿の分も!」
1864年、禁門の変
長州藩が京に攻め入ろうとしたため、薩摩藩も幕府軍と共に長州勢と決戦。吉之助が薩摩軍の指揮をとった。
戦いは長州勢の完敗に終わる。
幕府は長州藩の追討を発表したものの、なかなか行動を起こさなかった。
それにいらだった吉之助は、軍艦奉行の勝海舟を訪ねる。
「…一体、幕府は何をやっておるのですか?」
「西郷さん…これだけは覚えておいてくれ」
「公儀はもうだめだ」
「!!」
「そっちの薩摩の連中にも伝えておいてくれ」
「…わかり申した」
「…しかし幕府が駄目な今、どうすればよかですか?」
「藩同士の君主が連合する…というのはどうかね?」
「…なるほど」
「……なるほど、確かに勝先生はそう申したんでごわすな?」
この男は、小松帯刀清廉である。
「はい、確かにこう申されました「公儀はもうだめじゃ」っち」
「…さすが勝先生だ、おいたちより、はるか先を見越しておられる。おいたちも考えを改めなければいけないようだな」
「…はい、おいもそう思いもす」
答えたのは、大久保正助改め、大久保一蔵である。
数ヶ月後、西郷家
「幕府を倒して新しい日本を作るには、薩摩と長州、両方の力が必要です!」
この男、中岡慎太郎は、坂本龍馬と共に薩長連合を目指して活動をしていた。
「わかりもした、薩摩藩からしては、長州には何の恨みもございもはん、その話、受けもした!」
「かたじけない!西郷殿!」
そして、1866年、京 薩摩藩邸
長州藩の桂小五郎が訪れる。
しかし、西郷からも、桂からも同盟の話が切り出されることはなく、無駄な日数が経っていった。
「…まだ連合の話がついちょらんと?」
髪全体を後ろに束ねた若い男が不機嫌そうに口を開いた。
「ああ、無駄な日数が経っておるだけじゃ」
「中岡、わしが行ってくるきぃ…」
不機嫌そうに立ち上がったこの男こそ、坂本龍馬である。
「…わかった」
[太字][大文字]ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ![/大文字][/太字]
[太字]バンッ![/太字]
[太字]「西郷さん!あんたは長州を滅ぼす気ぃかや!?」[/太字]
「薩摩も長州も、幕府を倒す気はあるんかや!?」
「……ほんとにねぇ」
腕を組みながら壁に寄りかかっている帯刀が口を開いた。
「…帯刀さぁ」
「大事なのは、この日本の未来だ…桂さん、もちろんこれからは幕府の長州征討に薩摩は加わらない、そして、もし幕府が長州を滅ぼすというのなら…この薩摩は、長州とともに幕府と戦う覚悟でごわす」
「帯刀様!」
「…‥大事なのは、幕府を倒すこと…か」
西郷は桂に手を差し伸べる。
「幕府を倒すため、手を組みましょう!」
「…はい!もちろんです!」
桂は西郷の手を握った。
[太字]「「我ら一丸となって日本の未来を!」」[/太字]
こうして、坂本龍馬らの尽力によって、薩長同盟が成立した。
六月、幕府軍が第二次長州征伐を開始するが、薩摩藩の援助により、長州藩は、幕府軍を打ち負かした。さらに、江戸幕府将軍、徳川家茂も急死してしまう。そして、15代将軍に徳川慶喜が就任した。
「慶喜公は家康公の再来と言われるほどの人物…手強いでしょうなぁ」
吉之助がため息をつく。
「このままでは幕府が再び力を取り戻すのは時間の問題だ。」
帯刀が腕を組む。
「…もはや。武力討幕しかないのでは?」
正助が吉之助に問う。
「…おいも賛成じゃ」
「…………」
帯刀は不満そうな表情で二人を見つめていた。
小松帯刀は坂本龍馬らと武力を使わない討幕を考えていたのだ。
十月十四日、龍馬、帯刀らの活躍により。将軍慶喜は大政奉還をした。これにより、幕府を武力で倒す口実はなくなる。
十二月二十日、西郷ら薩摩の挑発により、旧幕府は薩摩藩邸を焼き払う。
「……もう、幕臣たちを抑えるのは不可能、ならば…このまま薩摩を討つ!」
こうして、慶喜は大坂に兵を起こす。
世にいう、戊辰戦争である。
[太字]ドーーーン![/太字]
[太字]ワァァァァ![/太字]
1868年、正月三日、薩摩藩を中心とした新政府軍と旧幕府軍が鳥羽・伏見で激突。
[太字]「放てーー!」[/太字]
[太字]ドォーーン![/太字]
「…もはや新政府に従うしかない…か、江戸を戦場にしたくはない」
慶喜は腕を組んだ。
勝海舟がゆっくりと口を開いた。
「……よくぞご決断なされました慶喜様、わたしが西郷を説得いたします」
「…うむ、頼んだぞ、勝」
だが、その頃西郷たち新政府軍は江戸総攻撃の準備を始めていた。
江戸総攻撃の前日、勝海舟は西郷と会談をする。
「話とは、なんでごわすか、勝先生」
「…あぁ、単刀直入に言わせてもらう、西郷さん、明日の江戸総攻撃を中止してくれねえか?」
「……降伏の条件は?」
「慶喜公の謹慎、そして江戸城の開城、でどうかな?」
「おいとしても江戸を燃やすのは本意ではなか…じゃっどん、こちらもけじめをつけなければいけないのでごわす」
「…エゲレス(イギリス)はどうするんだ?」
「…勝先生、それは脅しでごわすか?」
西郷が眉を動かす。
「……どう受け取ってもらってもかまわねえ」
(………徳川は外国からの信頼が厚い…外国を敵に回せば日本は……)
「わかりもした、難しいですが、できる限りの手を尽くし申す!」
「…ありがてぇ、西郷さん」
こうして、勝海舟の活躍により、一滴の血も流すことなく江戸城は明け渡された。江戸無血開城である。
1868年8月 明治天皇が即位する。
「元号を、明治と改める」
元号は、慶応から明治へと改められた。
1871年、西郷は新政府の要請で上京、新政府の参議に任命される。
だが、周りとの意見の違いから西郷は新政府を脱退する。
「西郷先生!大久保の悪政にはもう我慢でき申はん!是非ともおいたちのために立ち上がってください!」
「………じゃっどん、おいが立ち上がったとしても新政府には勝てもはん、それに、きっと大久保にも何か理由があって民に苦労をかけてしまっているだけじゃ、どうか多めに見てやっては…」
「みな大久保には迷惑しとるんじゃ!立ち上がってくだされ、西郷先生!」
皆が口々に叫ぶ。
西郷は目を大きく見開いた。
「………大久保、おまんは何を考えておるんじゃ…」
「西郷先生!」
「……これも、この日本の為…か」
西郷はゆっくりと立ち上がった。
「おいどんの命!おはんらに預け申す!!」
[太字]「オオオオオオオオ!」[/太字]
日本最後の内戦が、始まろうとしていた______
1877年、2月15日 西郷隆盛率いる軍が鹿児島城へと進軍。
後の世にいう、西南戦争である。
「西郷先生のご人徳により、1万3千の兵が集まり申した、熊本鎮台の兵力はわずか3500と聞き申した、これなら新政府に勝てるでごわす!」
そう言いながら刀を抜いたのは、西郷軍四番大隊長、桐野利秋である。
「…………そうだといいでごわすが…」
西郷は不満そうに呟いた。
内務省______
「西郷が挙兵したとの情報が入りました、軍勢は1万を超えているそうです」
陸軍卿の山縣有朋が重い声で話す。
「そうですか…とうとう兄が……」
陸軍中将であり、西郷の弟である西郷従道も険しい表情をする。
「…………西郷よ、なぜ動いた……」
ゆっくりと口を開いたのは、西郷の唯一無二の友であった大久保正助、改め、大久保利通である。
「もはや止められない戦だ、皆、心して臨め」
[斜体][太字]「はっ!」[/太字][/斜体]
西郷は集まった多くの兵たちを見下ろしてつぶやいた。
「世の中は変わった、もうおいどんはこの国には必要がなか、これからの世に必要なのは、正助どんのような人間じゃな……だから、わしはこの戦で散り申んそ…」
「天を敬い……人を愛する……この志を継いでいく者たちが、この世にいるといいでごわすが……」
数ヶ月に及ぶ戦いの中、西郷軍は政府軍を打ち破ったが、徐々に政府軍におされていった。
3月、西郷らは田原坂に防塁を築き、徹底抗戦が繰り広げられた。
[太字][大文字]ドォオォオォン!!!![/大文字][/太字]
多くの人間が犠牲になっていく______
西郷は大きく息を吸った。
[太字][大文字][斜体]「ッッッッ正助どぉぉんッッッッ!!!!!!!!」[/斜体][/大文字][/太字]
答えるように大久保も叫ぶ。
[大文字][太字][斜体]「西郷ぉぉぉ!!!」[/斜体][/太字][/大文字]
[太字][大文字]「決着をつけ申んそぉ!」[/大文字][/太字]
西郷は声を響かせる。
その頃、桐野利秋は政府軍と奮戦していた。
[大文字]「皆!ひるむなぁぁ!この戦ぁ!勝っても負けても悔いのないように終わらせる!薩摩魂!ここにあり!」[/大文字]
[大文字]オオオオオオオ![/大文字]
[大文字]「西郷だ!撃てぇ!!!」[/大文字]
[太字][大文字][斜体]バァァァン![/斜体][/大文字][/太字]
大きな音が鳴り響いた。
「ぐっ……」
西郷が腹を抑えて倒れ込む。
抑えた腹から血が垂れている。
「晋どん!」
「はっ!」
別府晋介が西郷に駆け寄る。
「もう…ここらでよか」
「先生………!」
西郷は刀を抜くと自分の腹に刺した。
「晋助どん!」
別府が刀を抜いた。
「西郷どん!ごめんなったもんし!」
[太字][斜体]ドシュッ![/斜体][/太字]
西郷隆盛 自害___
桐野利秋が大量の敵軍に囲まれて立っている。
「ハァッ……ハァッ………」
「西郷先生は先に逝かれたか…おいも、ここまでじゃなぁ!」
利秋は敵の軍勢に向かって走っていく。
桐野利秋は、敵の銃弾によって戦死した。
「………そうか、終わったか」
大久保は落ち着いた表情で腕を組んでいる。
「では、失礼いたしました」
山縣有朋が部屋から出ていった。
「吉之助さぁ………うっ……ううっ」
大久保は有朋が部屋から出ていくと、すぐに大声で泣き出した
「すんもはん!すんもはん吉之助さぁ!」
「……うおおおおお………………………」
大久保は机に突っ伏した。
1年後_____
「大久保様、外出ですか」
「ああ、天皇陛下にお会いしにいく」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
大久保は空を見上げながら馬車に乗る。
「……思い出してみれば、数奇な人生だったなぁ」
「大久保卿、馬車を出します」
「ああ、頼んだよ」
[斜体]ヒヒィーーン![/斜体]
[斜体]ガタッガタッ[/斜体]
馬車が音を立てて進み出した。
「……西郷……………………」
「おんしの志は、おいが受け継いでいく」
「…おんしの犠牲を、無駄にしないために………」
[太字][大文字][斜体]ガタンッ![/斜体][/大文字][/太字]
馬車が大きく揺れた。
「うっ!何があった!?」
大久保は頭を押さえながら窓から外を覗こうとすると。
[大文字]ブシャッ![/大文字]
窓に血が飛んできた。
「なっ!?」
「どうした!」
大久保が叫ぶ。
「大久保卿!お逃げください!」
馬車の外から叫び声が聞こえる。
大久保は急いで馬車から降りた。
[大文字]「大久保が出てきたぞぉ!」[/大文字]
刀を持った男、数人が大久保を取り囲む。
「なんだお前たちは!」
「大久保!お前には死んでもらう!」
[斜体]ザンッ![/斜体]
大久保の胸から血が垂れる。
「くっ…無礼者!」
大久保が叫んだ。
「問答無用!死ねぇ!」
[太字][大文字][斜体]ザシュッ![/斜体][/大文字][/太字]
1878年5月14日、東京にて大久保利通、暗殺。
西郷たち維新の英雄たちは相次いでこの世を去ったが、彼らの志を継いでいくものは多くいる。
1人の男が腕を組んで座りながらそう呟いた。この男こそが、西郷隆盛である。
隆盛は静かに空を見上げる。
「これは、この…日本のため、日本のためじゃ……」
隆盛は立ち上がり、兵が集まっている場所に歩いて行った。
時はさかのぼり、1827年。
鹿児島城下加治屋町で西郷吉兵衛の長男として小吉という男子が生まれる。後の西郷隆盛である。
[太字][大文字]「オギャーーーーオギャーー!」[/大文字][/太字]
「大きい声で泣くのぉ、元気に育ちそうじゃ」
吉兵衛が小吉を見て微笑んだ。
薩摩藩の男子には武芸と学問を学ぶ郷中教育という制度があった。
「やぁー!」
[太字][斜体]バシッ![/斜体][/太字]
「勝負あり!小吉の勝ちじゃ」
「おおおー!」
皆が小吉に感心した。
「やはり小吉どんは流石じゃなぁ」
小吉に話しかけたのは大久保正助、後の大久保利通である。
「そんなことはない、正助どんこそ武芸は強か、そして学問もできるではないか。」
「おいは小吉どんには武芸では敵わんがな」
「…おいは武、正助どんは文…で薩摩を背負うんじゃな」
幼馴染の子吉と正助は二人揃って一目置かれる存在になっていた。
1839年、郷中の行事、妙円寺詣りをしている時、小吉達の郷中と他の郷中と出会った時
「おい、お前らが小吉と正助か?文武に優れているからって調子に乗っているそうじゃないか、お前らの家はろくに金もないくせになぁ」
[太字]「なんだと!?」[/太字]
正助が殴りかかろうとしたその時
[太字]ガシッ[/太字]
「よさないか、正助」
小吉が正助の腕を掴みながら言った。
「…小吉どん………そうじゃな、すまない」
「何勝手にそっちで話を進めてるんじゃぁ!」
相手の1人が殴りかかってきた瞬間
[太字][大文字]ドカァッ![/大文字][/太字]
「な…何が起こったぁ!?」
相手が茂みに投げ飛ばされている。
「なんちゅう馬鹿力じゃ!大勢でやっちまえ!」
大勢が小吉に向かって走ってくる。
「まだ来るかっ!」
小吉はものすごい勢いで全員を投げ飛ばした。
「くそっ!逃げろっ!」
相手は全員逃げていった。
「小吉どん!すごか!」
郷中のみんなが小吉に駆け寄って口々に褒めた。
正助が微笑みながら小吉に言う。
「…小吉どん、ありがとう」
数日後…
小吉と正助が楽しそうに話しながら歩いている。その姿を物影から見ている集団があった。この前の件の郷中たちだ。
「西郷小吉めぇ…あのまま終わらせるわけにはいかんっ!叩きのめしちゃる!」
「しかし、力じゃあいつには勝てんぞ、どげんする?」
「……刀を使う」
「え?でも刀を抜いたらおいたち切腹じゃぞ」
「…斬りはせん、鞘をつけたまま殴りつけるだけじゃ」
「…おい、西郷が来たぞ」
「今じゃ!」
[太字]「おりゃぁ!!」[/太字]
「…!!またあいつらか!」
[太字]ガシィィッ![/太字]
刀が小吉の右腕に当たる。
「ぐっ……」
小吉の腕から血が垂れてきた。
「何!?なぜ血が……!!」
よく見ると、鞘が割れて刀身が出てきている。
「うわあああ!」
「わ…わざとじゃない!お…大人には絶対に言うなよ!?」
そう言い、郷中は逃げていった。
「大丈夫か小吉どん!!」
「…くっ……大丈夫じゃ、心配はいらん…」
「大丈夫なわけあるか!すぐに大人に…」
[太字][大文字]「それだけはいかん!」[/大文字][/太字]
「え?」
「このことを言うたら、あいつらは切腹じゃ…だから何があっても言い申はん!」
「…小吉……っ!」
数日後
[斜体]ガラガラッ[/斜体]
「小吉どん、傷の具合はどうじゃ?」
「おお…正助どん…」
「どげんしたんじゃ?」
こんなに元気のない子吉を見たのは初めてだ。
「……腕の筋を…痛めた……もう刀は握れん………」
「えっ?…じゃあ小吉、お前…」
「ああ…武術で薩摩を…殿様をお支えすることはできなくなった…」
[太字][大文字]「う…うああああああ!」[/大文字][/太字]
小吉は床に突っ伏して大声で泣いた。
[小文字]「…小吉」[/小文字]
[太字][大文字]「うああああああ!」[/大文字][/太字]
[太字][大文字]「小吉!」[/大文字][/太字]
「刀を持てなくても…武芸ができなくても!殿様の役に立つ方法はいくらでもある!」
「腕の傷くらいなんだというんじゃ!小吉どんなら他のやり方でも殿様のお役に立つことができるはずじゃ!」
「正助どん……………あぁ…そうじゃ…そうじゃな正助どん!」
「そうじゃ小吉どん!」
2人は大声で笑った。
1884年、小吉は元服して吉之助と名乗るようになり、藩の郡方書役助になった。1846年には、正助が藩の記録所書役助になった。二人は、薩摩藩士としての一歩を踏み出したのである。
その後、吉之助は島津斉彬に気に入られ重要な役を任ぜられることになったが、早くに斉彬が死去してしまった。
「斉彬様……今、参りますぞ」
吉之助は脇差を抜いた。その瞬間
[斜体]ガラッ[/斜体]
ふすまが開いた。
「吉之助殿、斉彬公に殉死されるおつもりですね?」
この男は月照という僧侶で、尊王攘夷活動に身を捧げていた。
「…お止めくださるな月照殿」
[太字][大文字]「いたずらに命を捨てるでないわ!貴様が死ぬことを、斉彬公が望んでいるとお思いか?生きて斉彬様の志を果たす、それが斉彬公の望んでいることではないのか!?」[/大文字][/太字]
「……月照殿、礼を言い申す、おかげで目が覚めました」
「うむ」
吉之助は月照を慕っていたが、薩摩藩上層部によって、吉之助は、密かに月照を始末する立場に追い込まれる。
[大文字][斜体]ザパーン![/斜体][/大文字]
吉之助と月照は大きな船の上にいる。
「…吉之助殿」
「どうかいたしましたか?」
「私をかくまうというのは嘘で、私を始末する…おつもりですね?」
「…………月照殿のおっしゃる通りでごわす…」
「他人の手にかけられるというのは恥‥でございます、せめて、己によって…」
月照がゆっくりと海に向かって歩いていく。
[太字]「月照殿!」[/太字]
「1人では…行かせもはん!」
「それはいけません!あなたまで死ぬことはありません!」
「…薩摩藩の暴走を止めることができなかった責任は、おいにもありますからな」
「…吉之助殿……」
「斉彬様…今行き申す!」
吉之助はそう叫びながら月照と共に海に飛び込んだ。
[太字]ザッパァァァン![/太字]
「いかがした!」
「月照殿が飛び降りた!吉之助殿もだ!」
[太字][斜体]ゴポポポ…………[/斜体][/太字]
[小文字][明朝体]「吉之助どん!」[/明朝体][/小文字]
[小文字]「吉之助どん!」[/小文字]
[小文字]「西郷どん!」[/小文字]
[明朝体]「兄上!」[/明朝体]
[明朝体]「吉之助どん!」[/明朝体]
[太字]「吉之助どん!」[/太字]
「……ん?」
「吉之助どん!よかった!一時はもうだめかと思い申した!」
「…月照……殿…は?」
正助や吉之助の家族達が首を横に振る。
「おいどんだけ…生き残ってしもうたんか………!面目ない!」
[太字]「そのようなことを言うな…お前が生き残ったということは、天がお前の事を国にとって必要な人物だと思ったからだ!」[/太字]
正助が大声で吉之助に語りかける。
「だが…月照殿は………!」
「生き残ったからには!やるべきことはやるんじゃ…!月照殿の分も!」
「正助どん…!わかった!おいは生きる!斉彬様の分も…月照殿の分も!」
1864年、禁門の変
長州藩が京に攻め入ろうとしたため、薩摩藩も幕府軍と共に長州勢と決戦。吉之助が薩摩軍の指揮をとった。
戦いは長州勢の完敗に終わる。
幕府は長州藩の追討を発表したものの、なかなか行動を起こさなかった。
それにいらだった吉之助は、軍艦奉行の勝海舟を訪ねる。
「…一体、幕府は何をやっておるのですか?」
「西郷さん…これだけは覚えておいてくれ」
「公儀はもうだめだ」
「!!」
「そっちの薩摩の連中にも伝えておいてくれ」
「…わかり申した」
「…しかし幕府が駄目な今、どうすればよかですか?」
「藩同士の君主が連合する…というのはどうかね?」
「…なるほど」
「……なるほど、確かに勝先生はそう申したんでごわすな?」
この男は、小松帯刀清廉である。
「はい、確かにこう申されました「公儀はもうだめじゃ」っち」
「…さすが勝先生だ、おいたちより、はるか先を見越しておられる。おいたちも考えを改めなければいけないようだな」
「…はい、おいもそう思いもす」
答えたのは、大久保正助改め、大久保一蔵である。
数ヶ月後、西郷家
「幕府を倒して新しい日本を作るには、薩摩と長州、両方の力が必要です!」
この男、中岡慎太郎は、坂本龍馬と共に薩長連合を目指して活動をしていた。
「わかりもした、薩摩藩からしては、長州には何の恨みもございもはん、その話、受けもした!」
「かたじけない!西郷殿!」
そして、1866年、京 薩摩藩邸
長州藩の桂小五郎が訪れる。
しかし、西郷からも、桂からも同盟の話が切り出されることはなく、無駄な日数が経っていった。
「…まだ連合の話がついちょらんと?」
髪全体を後ろに束ねた若い男が不機嫌そうに口を開いた。
「ああ、無駄な日数が経っておるだけじゃ」
「中岡、わしが行ってくるきぃ…」
不機嫌そうに立ち上がったこの男こそ、坂本龍馬である。
「…わかった」
[太字][大文字]ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ![/大文字][/太字]
[太字]バンッ![/太字]
[太字]「西郷さん!あんたは長州を滅ぼす気ぃかや!?」[/太字]
「薩摩も長州も、幕府を倒す気はあるんかや!?」
「……ほんとにねぇ」
腕を組みながら壁に寄りかかっている帯刀が口を開いた。
「…帯刀さぁ」
「大事なのは、この日本の未来だ…桂さん、もちろんこれからは幕府の長州征討に薩摩は加わらない、そして、もし幕府が長州を滅ぼすというのなら…この薩摩は、長州とともに幕府と戦う覚悟でごわす」
「帯刀様!」
「…‥大事なのは、幕府を倒すこと…か」
西郷は桂に手を差し伸べる。
「幕府を倒すため、手を組みましょう!」
「…はい!もちろんです!」
桂は西郷の手を握った。
[太字]「「我ら一丸となって日本の未来を!」」[/太字]
こうして、坂本龍馬らの尽力によって、薩長同盟が成立した。
六月、幕府軍が第二次長州征伐を開始するが、薩摩藩の援助により、長州藩は、幕府軍を打ち負かした。さらに、江戸幕府将軍、徳川家茂も急死してしまう。そして、15代将軍に徳川慶喜が就任した。
「慶喜公は家康公の再来と言われるほどの人物…手強いでしょうなぁ」
吉之助がため息をつく。
「このままでは幕府が再び力を取り戻すのは時間の問題だ。」
帯刀が腕を組む。
「…もはや。武力討幕しかないのでは?」
正助が吉之助に問う。
「…おいも賛成じゃ」
「…………」
帯刀は不満そうな表情で二人を見つめていた。
小松帯刀は坂本龍馬らと武力を使わない討幕を考えていたのだ。
十月十四日、龍馬、帯刀らの活躍により。将軍慶喜は大政奉還をした。これにより、幕府を武力で倒す口実はなくなる。
十二月二十日、西郷ら薩摩の挑発により、旧幕府は薩摩藩邸を焼き払う。
「……もう、幕臣たちを抑えるのは不可能、ならば…このまま薩摩を討つ!」
こうして、慶喜は大坂に兵を起こす。
世にいう、戊辰戦争である。
[太字]ドーーーン![/太字]
[太字]ワァァァァ![/太字]
1868年、正月三日、薩摩藩を中心とした新政府軍と旧幕府軍が鳥羽・伏見で激突。
[太字]「放てーー!」[/太字]
[太字]ドォーーン![/太字]
「…もはや新政府に従うしかない…か、江戸を戦場にしたくはない」
慶喜は腕を組んだ。
勝海舟がゆっくりと口を開いた。
「……よくぞご決断なされました慶喜様、わたしが西郷を説得いたします」
「…うむ、頼んだぞ、勝」
だが、その頃西郷たち新政府軍は江戸総攻撃の準備を始めていた。
江戸総攻撃の前日、勝海舟は西郷と会談をする。
「話とは、なんでごわすか、勝先生」
「…あぁ、単刀直入に言わせてもらう、西郷さん、明日の江戸総攻撃を中止してくれねえか?」
「……降伏の条件は?」
「慶喜公の謹慎、そして江戸城の開城、でどうかな?」
「おいとしても江戸を燃やすのは本意ではなか…じゃっどん、こちらもけじめをつけなければいけないのでごわす」
「…エゲレス(イギリス)はどうするんだ?」
「…勝先生、それは脅しでごわすか?」
西郷が眉を動かす。
「……どう受け取ってもらってもかまわねえ」
(………徳川は外国からの信頼が厚い…外国を敵に回せば日本は……)
「わかりもした、難しいですが、できる限りの手を尽くし申す!」
「…ありがてぇ、西郷さん」
こうして、勝海舟の活躍により、一滴の血も流すことなく江戸城は明け渡された。江戸無血開城である。
1868年8月 明治天皇が即位する。
「元号を、明治と改める」
元号は、慶応から明治へと改められた。
1871年、西郷は新政府の要請で上京、新政府の参議に任命される。
だが、周りとの意見の違いから西郷は新政府を脱退する。
「西郷先生!大久保の悪政にはもう我慢でき申はん!是非ともおいたちのために立ち上がってください!」
「………じゃっどん、おいが立ち上がったとしても新政府には勝てもはん、それに、きっと大久保にも何か理由があって民に苦労をかけてしまっているだけじゃ、どうか多めに見てやっては…」
「みな大久保には迷惑しとるんじゃ!立ち上がってくだされ、西郷先生!」
皆が口々に叫ぶ。
西郷は目を大きく見開いた。
「………大久保、おまんは何を考えておるんじゃ…」
「西郷先生!」
「……これも、この日本の為…か」
西郷はゆっくりと立ち上がった。
「おいどんの命!おはんらに預け申す!!」
[太字]「オオオオオオオオ!」[/太字]
日本最後の内戦が、始まろうとしていた______
1877年、2月15日 西郷隆盛率いる軍が鹿児島城へと進軍。
後の世にいう、西南戦争である。
「西郷先生のご人徳により、1万3千の兵が集まり申した、熊本鎮台の兵力はわずか3500と聞き申した、これなら新政府に勝てるでごわす!」
そう言いながら刀を抜いたのは、西郷軍四番大隊長、桐野利秋である。
「…………そうだといいでごわすが…」
西郷は不満そうに呟いた。
内務省______
「西郷が挙兵したとの情報が入りました、軍勢は1万を超えているそうです」
陸軍卿の山縣有朋が重い声で話す。
「そうですか…とうとう兄が……」
陸軍中将であり、西郷の弟である西郷従道も険しい表情をする。
「…………西郷よ、なぜ動いた……」
ゆっくりと口を開いたのは、西郷の唯一無二の友であった大久保正助、改め、大久保利通である。
「もはや止められない戦だ、皆、心して臨め」
[斜体][太字]「はっ!」[/太字][/斜体]
西郷は集まった多くの兵たちを見下ろしてつぶやいた。
「世の中は変わった、もうおいどんはこの国には必要がなか、これからの世に必要なのは、正助どんのような人間じゃな……だから、わしはこの戦で散り申んそ…」
「天を敬い……人を愛する……この志を継いでいく者たちが、この世にいるといいでごわすが……」
数ヶ月に及ぶ戦いの中、西郷軍は政府軍を打ち破ったが、徐々に政府軍におされていった。
3月、西郷らは田原坂に防塁を築き、徹底抗戦が繰り広げられた。
[太字][大文字]ドォオォオォン!!!![/大文字][/太字]
多くの人間が犠牲になっていく______
西郷は大きく息を吸った。
[太字][大文字][斜体]「ッッッッ正助どぉぉんッッッッ!!!!!!!!」[/斜体][/大文字][/太字]
答えるように大久保も叫ぶ。
[大文字][太字][斜体]「西郷ぉぉぉ!!!」[/斜体][/太字][/大文字]
[太字][大文字]「決着をつけ申んそぉ!」[/大文字][/太字]
西郷は声を響かせる。
その頃、桐野利秋は政府軍と奮戦していた。
[大文字]「皆!ひるむなぁぁ!この戦ぁ!勝っても負けても悔いのないように終わらせる!薩摩魂!ここにあり!」[/大文字]
[大文字]オオオオオオオ![/大文字]
[大文字]「西郷だ!撃てぇ!!!」[/大文字]
[太字][大文字][斜体]バァァァン![/斜体][/大文字][/太字]
大きな音が鳴り響いた。
「ぐっ……」
西郷が腹を抑えて倒れ込む。
抑えた腹から血が垂れている。
「晋どん!」
「はっ!」
別府晋介が西郷に駆け寄る。
「もう…ここらでよか」
「先生………!」
西郷は刀を抜くと自分の腹に刺した。
「晋助どん!」
別府が刀を抜いた。
「西郷どん!ごめんなったもんし!」
[太字][斜体]ドシュッ![/斜体][/太字]
西郷隆盛 自害___
桐野利秋が大量の敵軍に囲まれて立っている。
「ハァッ……ハァッ………」
「西郷先生は先に逝かれたか…おいも、ここまでじゃなぁ!」
利秋は敵の軍勢に向かって走っていく。
桐野利秋は、敵の銃弾によって戦死した。
「………そうか、終わったか」
大久保は落ち着いた表情で腕を組んでいる。
「では、失礼いたしました」
山縣有朋が部屋から出ていった。
「吉之助さぁ………うっ……ううっ」
大久保は有朋が部屋から出ていくと、すぐに大声で泣き出した
「すんもはん!すんもはん吉之助さぁ!」
「……うおおおおお………………………」
大久保は机に突っ伏した。
1年後_____
「大久保様、外出ですか」
「ああ、天皇陛下にお会いしにいく」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
大久保は空を見上げながら馬車に乗る。
「……思い出してみれば、数奇な人生だったなぁ」
「大久保卿、馬車を出します」
「ああ、頼んだよ」
[斜体]ヒヒィーーン![/斜体]
[斜体]ガタッガタッ[/斜体]
馬車が音を立てて進み出した。
「……西郷……………………」
「おんしの志は、おいが受け継いでいく」
「…おんしの犠牲を、無駄にしないために………」
[太字][大文字][斜体]ガタンッ![/斜体][/大文字][/太字]
馬車が大きく揺れた。
「うっ!何があった!?」
大久保は頭を押さえながら窓から外を覗こうとすると。
[大文字]ブシャッ![/大文字]
窓に血が飛んできた。
「なっ!?」
「どうした!」
大久保が叫ぶ。
「大久保卿!お逃げください!」
馬車の外から叫び声が聞こえる。
大久保は急いで馬車から降りた。
[大文字]「大久保が出てきたぞぉ!」[/大文字]
刀を持った男、数人が大久保を取り囲む。
「なんだお前たちは!」
「大久保!お前には死んでもらう!」
[斜体]ザンッ![/斜体]
大久保の胸から血が垂れる。
「くっ…無礼者!」
大久保が叫んだ。
「問答無用!死ねぇ!」
[太字][大文字][斜体]ザシュッ![/斜体][/大文字][/太字]
1878年5月14日、東京にて大久保利通、暗殺。
西郷たち維新の英雄たちは相次いでこの世を去ったが、彼らの志を継いでいくものは多くいる。
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