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窓越し恋愛譚

#12

距離

[太字]季子視点[/太字]

[水平線]

グイッ、と制服の袖を優しく引っ張られた。

驚いて足を止めると、すぐ目の前に優先輩がいた。息をひどく切らして、肩を大きく上下させている。

「……え?」

「少しだけ、話を聞いてほしいんだ。すぐ終わるから」

いつもの余裕のある爽やかな先輩じゃない。

必死で、どこか焦っているようなその声に、私の心臓はまたうるさいくらいに脈打ち始めた。

先輩に促されて、私たちは中庭の端にある大きな木の木陰へと移動した。

木漏れ日の下、先輩は私の目を真っ直ぐに見つめてきた。

その瞳が、いつもよりずっと真剣で、私は息をするのも忘れてしまいそうになる。

「僕ね、本当に馬鹿だった」

先輩の口から出たのは、そんな自虐的な言葉だった。

「今まで、季子ちゃんの気持ちに甘えてばかりで、自分の臆病さから逃げてたんだ。美咲のことで周りに迷惑をかけたのが怖くて、季子ちゃんを『後輩』とか『妹みたい』って枠に押し込めて、自分を納得させようとしてた」

美咲先輩の名前が出て、胸の奥がキュッと痛む。

やっぱり、先輩の心の中にはまだ美咲先輩が……そう思いかけた私に、優先輩はさらに言葉を続けた。

「でも、さっき中庭で季子ちゃんが他の男子と楽しそうに話しているのを見て、胸がちぎれそうなくらい痛かった。あの子が僕じゃない誰かを好きになって、僕の隣からいなくなっちゃうかもしれないって思ったら……寂しくて、頭がおかしくなりそうだったんだ」

「え……?」
頭の中が真っ白になる。今、先輩なんて言ったの?

先輩は一歩、私との距離を詰めると、私の小さな手を優しく包み込むように両手で握りしめた。

先輩の手は、驚くほど熱かった。

「妹なんかじゃない。僕は、[太字] 季子ちゃんが一人の女の子として、大好きなんだ。[/太字]僕からあの眩しい笑顔を奪ってしまって、本当にごめん。……もう一度、僕にチャンスをくれないか?」

先輩の手の中で、私の手がびくっと跳ねた。

言葉が、上手く出てこない。

だって、ついさっきまで「諦めよう」って。

自分はどこにでもいる平凡な1年生で。

先輩とは不釣り合いなんだって、そう自分に言い聞かせていたのに。

堪えきれなくなった涙が、じわっと視界を滲ませて、ポロポロと頬を伝って落ちていく。

「……っ、そんなの、ずるいです……」

私は俯いたまま、涙声で必死に言葉を絞り出した。

「私、優先輩のこと諦めようって、何度も何度も自分に言い聞かせて……美咲先輩のことも、先輩の気持ちも、全部応援しようって、そう決めたのに……っ」

「うん、ごめん。本当にずるくて、最低な先輩でごめん」

先輩の声が、すごく切なそうに揺れる。

その声を聞いたら、もう自分の気持ちに嘘をつき続けることなんて、限界だった。

「でも……っ」

私は涙を拭いもせず顔を上げ、先輩の綺麗な瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

「でも、私も……優先輩のことが、[太字] ずっと、ずっと大好きです![/太字]諦めるなんて、嘘でした……!」

私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、先輩の腕が私の体を優しく、だけどしっかりと抱きしめた。

先輩のブレザーから、トロンボーンのオイルと、爽やかな石鹸の匂いがする。

「ありがとう、季子ちゃん。これからは、僕がずっと、君を一番近くで支えるから」

耳元で聞こえる先輩の声が、優しく鼓膜を揺らす。

遠くで、昼休みの終わりを告げる予鈴のチャイムが響いていた。

10メートル離れた窓の向こう、遠くて届かない高嶺の花だと思っていた先輩の胸の中。

今、私たちの距離は、お互いの心臓の音が聞こえるくらい、確かにゼロになったんだ。

[水平線][太字]spin-off[/太字][水平線]

季子「これにて完結!…って嫌です優先輩!」

優「当たり前だよ。[太字]この物語まだ続くよ[/太字]」

季子「えええええっ⁈」

優先輩に肩を抱き寄せられる。ぬああああっ!恥ずかしい!

優「僕たちのこれからはどうするの?」

耳元で囁かれる優先輩のイケボ。

私はまだこの物語が続く興奮と恥ずかしさでドキドキしている。

季子「楽しみっ」

優「ふふっ」

私たちは2人で笑い合った。

作者メッセージ

書き溜めてたのに公開忘れたバカ、笹芽です。
これにて第一部終幕でございます

2026/06/18 20:16

笹芽
ID:≫ 2eRGY3oC1RxsM
コメント

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学園恋愛切ない恋恋愛小説

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