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窓越し恋愛譚

#10

諦め

[太字]今回は長編です[/太字]

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「諦める」

その言葉を口にした瞬間、喉の奥がヒリついた。自分でも驚くほど、枯れた響きがした。

「そっか……うん、そうだよね」

弥生はそれ以上、何も言わなかった。

ただ私の背中を優しく、少し力強くさすってくれた。

……その手の温かさが、かえって痛かった。

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私たちは再び、優先輩と美咲先輩が待つ場所へと戻った。

二人は楽しそうに何かを話している。

優先輩が少し身を乗り出して笑い、美咲先輩がそれをたしなめるように笑い返す。

その絵面があまりにも完璧で、美しくて、私は一歩も踏み出せなくなった。

「あ、二人とも!戻ったんだね。何にする?アイス食べに行こうよ」

優先輩がこちらに気づいて、屈託のない笑顔で手招きした。

その無防備な優しさが、今の私には一番の刃物だ。

「うん、行こう!」

私は笑ってみせた。多分…いや、すっごく下手だった。

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アイスを買って、私たちはフードコートへ移動した。

優先輩と美咲先輩が横並びで座り、私と弥生がその対面に座る。

「……トロンボーン、最近どう?季子ちゃん」

優先輩が不意に私に話を振った。心臓が跳ねる。

「あ、はい……順調です」

「そうか。今度さ、二人で合わせようよ。僕の曲の練習にも付き合ってほしいな」

「えっ……はい!もちろんです!」

一瞬、舞い上がった。二人きりの時間。

そう思うだけで、心の奥底で沈殿していたはずの「諦める」という決意が、跡形もなく揺らいでいく。

でも、直後に視界の端で美咲先輩が少しだけ寂しそうな、それでいて納得したような表情を見せたのが分かった。

ああ、この人はまだ優先輩のことが好きだ。優先輩も、それを知っている。

それなのに、私を誘うのはなぜだろう。後輩として可愛いから?それとも、ただの気遣い?

その夜、寮の自分の部屋に戻ってから、私は泥のように眠りについた。

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夢の中で、私は優先輩のトロンボーンを吹いている。

けれど、音が全く出ない。

どれだけ息を吸っても、どんなに力を込めても、音は空気に溶けて消えてしまう。

焦り、疎外感、恐ろしさ、妬ましさ。ごちゃ混ぜになった心。

トロンボーンが、手から滑り落ちた。

[水平線]

翌朝、目が覚めると窓の外はどんよりとした曇り空だった。

風が吹いて、窓ガラスがガタガタと音を立てる。

私は制服の襟元を整えながら、鏡の中の自分を見た。

どこにでもいる、平凡な中学1年生。

特別な才能があるわけでも、美咲先輩のような洗練された美しさがあるわけでもない。

「諦める……なんて、嘘つきだな」

独り言が、冷たい部屋に落ちた。

優先輩のあの笑顔を思い出すたびに、胸の奥がキュッと締め付けられた。

[水平線]

部活の時間、音楽室に向かう廊下で、またあの窓際の席を通った。

向かい側の校舎の窓。

そこから、優先輩がふと私に気づいて手を振ってくれた。

私は、笑顔を作れなかった。

ただ、大きく息を吸い込んで、小さく頭を下げる。

本当は、叫び出したいほど追いかけていたい。

「美咲じゃなくて、私を見て」と、誰にも言えない言葉を飲み込んだ。

私はまた、あの切ない恋を、冷たい心の中に閉じ込めた。

この先、何回季節が巡っても、きっとこの風の匂いと、優先輩の透き通った声だけは、一生忘れない。

そう確信しながら、私は重いドアを開けた。

「……おはようございます、優先輩」

精一杯の笑顔で、私はまた、届かない距離に一歩、足を踏み入れた。

作者メッセージ

よし!書き溜めた!じゃんじゃん公開してく!

2026/06/18 17:27

笹芽
ID:≫ 2eRGY3oC1RxsM
コメント

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学園恋愛切ない恋恋愛小説

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