白旅人
これは御崎 浪浦という叔父さんに聞いた話です。
今は昔、或所に一人の旅人がいた。
その旅人は、濡羽色の大層綺麗な着物を身にまとっていた。
今は旅人の名を、誰に聞いても口を揃えて「名?…知らないねぇ」なんて言う。
_何故誰も旅人の名を知らないのだろう。
誰かしら一人は知っていると私は思う。
彼は社交的で誰とでもすぐに打ち解けていたらしいからだ。
名は知らぬが「良い人だった」等と好印象の旅人。
うろ覚えではありますが、お楽しみくださいね。
ある冬の早朝。
とっ、ととん。と軽快な足音を鳴らしながら、僕は道を歩む。
歩いて何刻がたっただろう。
山越え、川越え、林を進む。
山は静かに眠りにつき、川は心を閉ざすように凍る。
林では、枯れ木が腐り始めている。
体感では昼下がりの氷点下の寒さ。
冬故に時間が判らぬのだ。
夏も分からなくなりそうだが、夏は意外と時間が分かる。
何故冬だけ判らぬ?
…そんな疑問を胸に秘め林道を抜けた。
獣道を通っていたので足腰がずんと痛む。
ん?
林道を抜けた辺から、雪がはらりと落ちてきた。
冬よの、冬よの…。
寒いわな…雪降りおった。
顔は寒さで霜焼けしてしまいそうだ。
指先が赤く、ジンジンとしていたが、感覚が徐々になくなっていく。
これは迚も不快だが…仕方あるまい。
少し悴んでいるが、動いているので幾分かはましだ。
嗚呼、寒いな。
温かい布団にくるんで、みかんを食べたい。
しかし今は旅人の身…はぁ。
思わずため息が先程から出てしまう。
おそらく今ので2,30回程ため息をついている。
まぁ…冬は不便なことが多いな。
だが、冬故に熊や猪も出て来ぬのだ。
食料が動物に取られることもなく、襲われることもない。
冬は寒いが、旅人には好都合。
動物の危険は減るのだ。
こんな日に限り山賊等が居ることもある…不愉快だ。
金目の物を盗まれた時、旅の初めの頃は大変だったなぁ…。
今では対処法も知っているので少しは安心するだろう。
食料も長持ちするものを買っていて飢えることもない。
…一番心配するなら雪や氷で滑ってしまう事。
幻想的な雪でつい浮かれてしまうが…現実では浮かれているわけには行かない。
そのまま崖から落ちてしまう旅人も中には居るのだ。
何人が落ちて空へと登っただろう。
中には当時の僕の学友もいたのでその時は少し悲しかった。
だが、旅をしているなら仕方ないと割り切っている。
旅人は足場に気をつけながらも、歩き続けた。
旅人は知っている。
世界は汚いが、裏を返せば綺麗だということに。
一般人が云えば、「世界は綺麗だ」や「世界の裏は汚い」と言うだろう。
裏が綺麗だなんて誰が思う。
だが、同じ考えも世界を渡ればいるのだろうか?
世間の枠では収まらずに、旅に出て4年。
世間では女は男より下だとかほざいている。
女性も確りと家のことをしてくれているから、僕達は生活できているんだ。
女性も女性で言い返せないし、可笑しいと思わないのか。
それを始めとした自分の生活と、周りの人の生活が合わずに僕は旅に出たんだ。
だから僕は世間様が嫌いだ。
旅に出てから色んな景色を見ているが、自分は未だ未熟だ。
色んな事を考えながらふらふらと歩いていると、平原に何時の間にか出てきていた。
其処で見た景色に思わず息を呑んだ。
深々と降りゆく白銀の結晶に呼吸をするのを忘れて、釘付けになった。
_僕の世界だ。僕だけの。_
白は無なり、無色なり。
旅人は呟きながら白世界をゆっくりと歩む。
白の深淵に埋まるは緑。
ほろ苦い蕗、明るい蒲公英、暖かい微風_。
旅人の足取りはとても軽く、雪を舞う冬の精の如く。
白世界の奥深くより、緑が芽吹き始めた。
という話です。
叔父さんは詳しく覚えていないらしく認知症になってしまっているからなぁ…と思います。
綺麗な着物を着て、冬の精みたいだなんて羨ましいような懐かしいような…変な気がします。
きっと迚も幻想的な風景でしたのでしょう。
とても気になってしまいます。
旅人は白は無なり、無色なり。と言っていましたが、白には白という色があるのでは?と聞けば。
…白は何色にでもなれるんだ。
でも、一度染まればいずれ漆黒になる。
なんて言われたことも何時だったかあります。
正直言って良く分かりません。
貴方には理解が出来ますか?
楽しみにしております。
いずれ又本という人生の何処かで会えたら。
今は昔、或所に一人の旅人がいた。
その旅人は、濡羽色の大層綺麗な着物を身にまとっていた。
今は旅人の名を、誰に聞いても口を揃えて「名?…知らないねぇ」なんて言う。
_何故誰も旅人の名を知らないのだろう。
誰かしら一人は知っていると私は思う。
彼は社交的で誰とでもすぐに打ち解けていたらしいからだ。
名は知らぬが「良い人だった」等と好印象の旅人。
うろ覚えではありますが、お楽しみくださいね。
ある冬の早朝。
とっ、ととん。と軽快な足音を鳴らしながら、僕は道を歩む。
歩いて何刻がたっただろう。
山越え、川越え、林を進む。
山は静かに眠りにつき、川は心を閉ざすように凍る。
林では、枯れ木が腐り始めている。
体感では昼下がりの氷点下の寒さ。
冬故に時間が判らぬのだ。
夏も分からなくなりそうだが、夏は意外と時間が分かる。
何故冬だけ判らぬ?
…そんな疑問を胸に秘め林道を抜けた。
獣道を通っていたので足腰がずんと痛む。
ん?
林道を抜けた辺から、雪がはらりと落ちてきた。
冬よの、冬よの…。
寒いわな…雪降りおった。
顔は寒さで霜焼けしてしまいそうだ。
指先が赤く、ジンジンとしていたが、感覚が徐々になくなっていく。
これは迚も不快だが…仕方あるまい。
少し悴んでいるが、動いているので幾分かはましだ。
嗚呼、寒いな。
温かい布団にくるんで、みかんを食べたい。
しかし今は旅人の身…はぁ。
思わずため息が先程から出てしまう。
おそらく今ので2,30回程ため息をついている。
まぁ…冬は不便なことが多いな。
だが、冬故に熊や猪も出て来ぬのだ。
食料が動物に取られることもなく、襲われることもない。
冬は寒いが、旅人には好都合。
動物の危険は減るのだ。
こんな日に限り山賊等が居ることもある…不愉快だ。
金目の物を盗まれた時、旅の初めの頃は大変だったなぁ…。
今では対処法も知っているので少しは安心するだろう。
食料も長持ちするものを買っていて飢えることもない。
…一番心配するなら雪や氷で滑ってしまう事。
幻想的な雪でつい浮かれてしまうが…現実では浮かれているわけには行かない。
そのまま崖から落ちてしまう旅人も中には居るのだ。
何人が落ちて空へと登っただろう。
中には当時の僕の学友もいたのでその時は少し悲しかった。
だが、旅をしているなら仕方ないと割り切っている。
旅人は足場に気をつけながらも、歩き続けた。
旅人は知っている。
世界は汚いが、裏を返せば綺麗だということに。
一般人が云えば、「世界は綺麗だ」や「世界の裏は汚い」と言うだろう。
裏が綺麗だなんて誰が思う。
だが、同じ考えも世界を渡ればいるのだろうか?
世間の枠では収まらずに、旅に出て4年。
世間では女は男より下だとかほざいている。
女性も確りと家のことをしてくれているから、僕達は生活できているんだ。
女性も女性で言い返せないし、可笑しいと思わないのか。
それを始めとした自分の生活と、周りの人の生活が合わずに僕は旅に出たんだ。
だから僕は世間様が嫌いだ。
旅に出てから色んな景色を見ているが、自分は未だ未熟だ。
色んな事を考えながらふらふらと歩いていると、平原に何時の間にか出てきていた。
其処で見た景色に思わず息を呑んだ。
深々と降りゆく白銀の結晶に呼吸をするのを忘れて、釘付けになった。
_僕の世界だ。僕だけの。_
白は無なり、無色なり。
旅人は呟きながら白世界をゆっくりと歩む。
白の深淵に埋まるは緑。
ほろ苦い蕗、明るい蒲公英、暖かい微風_。
旅人の足取りはとても軽く、雪を舞う冬の精の如く。
白世界の奥深くより、緑が芽吹き始めた。
という話です。
叔父さんは詳しく覚えていないらしく認知症になってしまっているからなぁ…と思います。
綺麗な着物を着て、冬の精みたいだなんて羨ましいような懐かしいような…変な気がします。
きっと迚も幻想的な風景でしたのでしょう。
とても気になってしまいます。
旅人は白は無なり、無色なり。と言っていましたが、白には白という色があるのでは?と聞けば。
…白は何色にでもなれるんだ。
でも、一度染まればいずれ漆黒になる。
なんて言われたことも何時だったかあります。
正直言って良く分かりません。
貴方には理解が出来ますか?
楽しみにしております。
いずれ又本という人生の何処かで会えたら。
クリップボードにコピーしました