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オタクは今日も恋をする

#48

何気ない日々。

 ピピピピッ、ピピピピッ。
目覚まし時計が鳴る。
「もう朝かぁー。眠いから二度ねぇー」
私は目覚まし時計を止め、再び目を瞑った。
「結月ー。早く起きないと遅刻するよー」一階から母の声がした。
急いで階段を降りる。
「眠かったんだよー。お母さんも経験したことあるよね」
大きな欠伸をしながら母に言う。
「まぁ、したけど……。その日は仕事が休みだったんだよ!」
「じゃあお父さんは? 寝てるじゃん」
「あの人は、まぁ……。大人だから……」
言い訳をその場で考えているように見えた。

[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「ん?」
彼は時計を見た。
「あ、遅刻する!」
布団から飛び出し、階段を素早く降りていった。

[中央寄せ]*[/中央寄せ]
「おはよう!」
「あ、お父さん。おはよう」
彼は食パンを咥えながらスーツを着ていた。
普段の父は平常心を保っていて、友達からは『クールなお父さん』と呼ばれている父だが、今日はとても慌てていた。
「行ってきます!」
「ちょ、パンだけでいいのー?」
「大丈夫!」
そう言って父は外に出た。
「ったく……。結月はあんな人にならないでね」
母は「はぁ」とため息を吐き、呆れた顔で言った。

「行ってきます……」
私はバッグを引きずって玄関に向かった。
「学校行きたくないの?」
「まぁ……。テストがあるんだよ……」
なぜ分かったのだろう。休ませてくれるのだろうか。
「学校に行ったら慎二くんがいるじゃない」
その手があったか。
「確かに」
私は顔を赤くしながら言った。
「行ってきまーす」

 そういえば母はあの六人を知っているのだろうか。
また、この世界に来る前から慎二くんのことが好きだと言っていたが、顔も名前も一致しているのに気付かないのだろうか。
──この世界の仕組みが分からない。


「おは……」
──あれ?
彼はまだ来ていないのだろうか。
いつもならこの時間には来てるはずなのに。
「慎二くんは?」私は明くんに訊いてみた。
「[漢字] 慎二[/漢字][ふりがな]アイツ[/ふりがな]なら休みだよ」
そう思い出したかのように彼は言った。
その言葉を聞いて私は愕然とした。
休むことは滅多にない彼。意外だった。
「メール来てなかったか?」
私はスマホを開き、メールをチェックした。
そこには『慎二』から一件のメールが届いていた。
「あ、来てる」
『結月、休んでごめん。でも学校頑張って!』
「お、応援されてた……。よし! 頑張る!」
私は高速で文字を打ち、送信した。
『ありがとう! 頑張るね!』

 私は教室のドアをゆっくりと開け、「おはよう」と言おうと口を開いた。
教室には──
「慎二くん⁉︎」
「おはよう」という言葉よりも先に、彼の名前が浮かんだ。
「あ、結月。おはよう」
彼の声は少しこもっていた。風邪特有のあの声。
「昨日は大丈夫だった⁉︎」
挨拶も大事だが、彼の体のことが一番大事だ。
「風邪引いてさ。昨日熱出て休んだんだけどもう大丈夫。心配しないで」
慎二くんは軽く、ははっと笑いながら言った。
でも──
「早く治さないと……」
「え?」
彼は首をかしげる。
「近いじゃん、体育祭が!」
私は大きな声で言った。クラスメイトの肩がぴくりと上がる。
ごめん、と顔を赤くして私はぺこりと謝る。
「あ、そっか」
『激しい運動をして風邪が悪化しました』
そんな言葉は聞きたくない。すると、
「なんか結月テンション高いと思ったら、慎二来てたんだな」と言いながら明くんが来た。
バッグを背負っているのでついさっき来たらしい。
「風邪引いて……」
苦笑い気味で彼は言った。
「そっか。今、流行ってるから……なぁー」
背伸びをしながら明くんは言う。
「でもその前に──」
慎二くんがぼそっと呟く。
私はなんだろう? と思ったが、すぐに頭に浮かんだ。
「夏休み!!」
そうそう、と慎二くんが頷く。
「何するかー」
早く決めないと夏休みが始まってしまう。
「海はどう?」
教室の入り口から声がする。
振り返ると遥ちゃんと由依ちゃんが顔を覗かせていた。
「遠いけど旅行みたいで楽しそうだね」
「確かに!」
水族館に行った時は、ものすごくお金がかかった。運賃や入館料、飲食代……どれだけかかったのだろう。
海は水族館よりもお金はかからない。
「さんせー!」
「賛成だな!」
そう言ったのは光くんと淳司くんだ。
「いつの間に⁉︎」
──楽しみだな。
私は久々にわくわくした。

作者メッセージ

久々更新。
色々忙しくて……
本当に申し訳ない。
ーーー
LINE公式アカウント作りました

2026/06/09 13:37

貴志柚夏
ID:≫ 14ODATaJ5tCFM
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