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オタクは今日も恋をする

#5

もう一度、キミの居る世界へ──

 教室に戻った後も何事もなかったかのように時間は過ぎていった。
ただ、いつもと違うのは由美が私の顔色を気にしながら大丈夫、と声をかけてくれることだった。
あの事、由美に話してもいいかな、と思って私は正直に告げた。
「倒れた理由が分かったから、メールで話すね」
「分かった」
 その夜、由美とのメールは続いた。
『私が倒れた理由は、アニメの世界に行ってたの』
「マジで? それでどうなったの?」
『なぜか鮮明に覚えてるんだよね。最初に私は転校生として来たんだけど、席の隣が推しと段々仲良くなって付き合ったの』
「マジ⁉︎」
『今も次元は違うけど付き合ってるよ』
「すご!」
『だけど本当はここに戻りたくなかったんだけどね』
「なんで?」
『だって、ここにいたって私は一人だから。誰も私を必要としない。だったら楽しいアニメの世界にいた方がマシでしょ』
「それはそうだけど……。私は結月ちゃんを必要とするよ!』
『ありがとう。少し元気になったかも!』
 だが、そんな穏やかな日は続かなかった。

 次の日、教室の雰囲気が一変したことに気付いた。由美におはよう、と声をかけようと近づいた瞬間、彼女はサッと私から離れて三、四人集まっている所に行ってしまった。すると、そのグループから私の悪口が聞こえた。
「ねぇ、本当? アニメの世界に行ったって。絶対注目されたいだけでしょ」
由美が口を開いた。
「だよねぇ。もう私も友達のフリして疲れたよ。あいつマジで面倒臭いんだよね」
「お疲れ様ー! 由美さぁ、役者さんになれるよ!」
「それなー。演技上手すぎ!」
「そう?」
──あ。由美と目が合ってしまった。
由美はぷいっと視線を逸らし、グループの方に戻した。
「もし、本当ならアニメの世界にずっと居ればいいのに。視界に入ると不快だわ」
そんなことはできない。たとえ[漢字]二次元[/漢字][ふりがな]アニメの世界[/ふりがな]で半年を過ごしてもこの世界では二、三分しか経たないのだ。私はそのことを伝えようと思わず口を開いた。

「向こうの世界で半年を過ごしても、こっちの世界では二、三分しか経たないよ」
言い返してしまった。その瞬間、「あいつ、言い返してきたwマジウケる」という声が聞こえる。言わなければよかった。その後悔と悪口が胸を締め付ける。
「じゃあ、去りますよ。ここから去ればいいんだよね。明日、学校に来ないから楽しい学校生活を送ってね」
私は笑いながら言った。だけど心の中では泣いていた。
そのグループは黙り込んだ。
 その日の夜、私は再び[漢字]あの世界[/漢字][ふりがな]アニメの世界[/ふりがな]に行く準備をした。真っ白な紙に作品名を書き、二つ折りにし、輪っかにして指にはめる。
「よし、これで行こう!」
 翌日の朝、起きた時、体には何の異変もなかったので、いつも通りに朝ご飯を食べて、歯磨きをする。学校の制服に腕を通した瞬間、体がふわりと浮き上がるような、なんとも説明しがたい感覚に襲われた。その感覚に耐えきれず、私はその場で意識を失った。
 次に目を覚ましたとき、私は保健室のベッドで寝ていた。
「結月? 大丈夫?」
優しい声で私の顔を見る。
──慎二くんだ。
ここは……話の続き⁉︎
前回は付き合って終わった筈だ。まさか、話の続きになるなんて。私は驚き、目を擦った。
──あんまりドキドキしない。顔も赤くならない。
以前の私なら、ドキドキして顔が赤くなる。だけど、今は自然で居られるほど落ち着いている。
「色々、あったんだ」
私は正直に[漢字]三次元[/漢字][ふりがな]元の世界[/ふりがな]で起こったことを話した。
慎二くんは何も言わずに俯いていた。
「ごめん! 暗い話をして」
そんな顔をさせるつもりは無かった。ただ、誰かに辛かった事を素直に言いたかったのかもしれない。
「だけど、また一緒にいられるね」
慎二くんを更に心配かけないように笑顔で言った。
「うん」
 一つ疑問がある。
「何で、転校したのにここにいるの?」
「結月の両親の関係で取り消しされたんだ。俺も詳しくは知らないけれど、仕事関係らしい」
「へぇー」
あまりよく分からなかった。……まあ、そんな細かいことは気にしないで、この世界の生活を楽しもう。そう思って私たちは教室に戻った。

「大丈夫だった?」
席に着くと、友達が心配そうに話しかけてくれた。元の世界では、こんなに心配されることは無かったので嬉しかった。
「うん」
「お大事に!」
 チャイムが鳴り、授業が始まった。アニメの世界の日常が再び動き出す。

作者メッセージ

結月の心が変わってきてるの分かりますか?
前までは慎二を“推し”だと思っているのが分かると思います。
どきどきしている、顔が紅くなる(感じ?)
今は、“好きな人”と思っている感じがします。
どきどきしてない感じ?
ーーー
昨日雪積もって学校2時間遅れだった
楽しかった

2025/09/22 08:27

貴志柚夏
ID:≫ 14ODATaJ5tCFM
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