教室に戻った後も何事もなかったかのように時間は過ぎていった。
ただ、いつもと違うのは由美が私の顔色を気にしながら大丈夫、と声をかけてくれることだった。
あの事、由美に話してもいいかな、と思って私は正直に告げた。
「倒れた理由が分かったから、メールで話すね」
「分かった」
その夜、由美とのメールは続いた。
『私が倒れた理由は、アニメの世界に行ってたの』
「マジで? それでどうなったの?」
『なぜか鮮明に覚えてるんだよね。最初に私は転校生として来たんだけど、席の隣が推しと段々仲良くなって付き合ったの』
「マジ⁉︎」
『今も次元は違うけど付き合ってるよ』
「すご!」
『だけど本当はここに戻りたくなかったんだけどね』
「なんで?」
『だって、ここにいたって私は一人だから。誰も私を必要としない。だったら楽しいアニメの世界にいた方がマシでしょ』
「それはそうだけど……。私は結月ちゃんを必要とするよ!』
『ありがとう。少し元気になったかも!』
だが、そんな穏やかな日は続かなかった。
次の日、教室の雰囲気が一変したことに気付いた。由美におはよう、と声をかけようと近づいた瞬間、彼女はサッと私から離れて三、四人集まっている所に行ってしまった。すると、そのグループから私の悪口が聞こえた。
「ねぇ、本当? アニメの世界に行ったって。絶対注目されたいだけでしょ」
由美が口を開いた。
「だよねぇ。もう私も友達のフリして疲れたよ。あいつマジで面倒臭いんだよね」
「お疲れ様ー! 由美さぁ、役者さんになれるよ!」
「それなー。演技上手すぎ!」
「そう?」
──あ。由美と目が合ってしまった。
由美はぷいっと視線を逸らし、グループの方に戻した。
「もし、本当ならアニメの世界にずっと居ればいいのに。視界に入ると不快だわ」
そんなことはできない。たとえ[漢字]二次元[/漢字][ふりがな]アニメの世界[/ふりがな]で半年を過ごしてもこの世界では二、三分しか経たないのだ。私はそのことを伝えようと思わず口を開いた。
「向こうの世界で半年を過ごしても、こっちの世界では二、三分しか経たないよ」
言い返してしまった。その瞬間、「あいつ、言い返してきたwマジウケる」という声が聞こえる。言わなければよかった。その後悔と悪口が胸を締め付ける。
「じゃあ、去りますよ。ここから去ればいいんだよね。明日、学校に来ないから楽しい学校生活を送ってね」
私は笑いながら言った。だけど心の中では泣いていた。
そのグループは黙り込んだ。
その日の夜、私は再び[漢字]あの世界[/漢字][ふりがな]アニメの世界[/ふりがな]に行く準備をした。真っ白な紙に作品名を書き、二つ折りにし、輪っかにして指にはめる。
「よし、これで行こう!」
翌日の朝、起きた時、体には何の異変もなかったので、いつも通りに朝ご飯を食べて、歯磨きをする。学校の制服に腕を通した瞬間、体がふわりと浮き上がるような、なんとも説明しがたい感覚に襲われた。その感覚に耐えきれず、私はその場で意識を失った。
次に目を覚ましたとき、私は保健室のベッドで寝ていた。
「結月? 大丈夫?」
優しい声で私の顔を見る。
──慎二くんだ。
ここは……話の続き⁉︎
前回は付き合って終わった筈だ。まさか、話の続きになるなんて。私は驚き、目を擦った。
──あんまりドキドキしない。顔も赤くならない。
以前の私なら、ドキドキして顔が赤くなる。だけど、今は自然で居られるほど落ち着いている。
「色々、あったんだ」
私は正直に[漢字]三次元[/漢字][ふりがな]元の世界[/ふりがな]で起こったことを話した。
慎二くんは何も言わずに俯いていた。
「ごめん! 暗い話をして」
そんな顔をさせるつもりは無かった。ただ、誰かに辛かった事を素直に言いたかったのかもしれない。
「だけど、また一緒にいられるね」
慎二くんを更に心配かけないように笑顔で言った。
「うん」
一つ疑問がある。
「何で、転校したのにここにいるの?」
「結月の両親の関係で取り消しされたんだ。俺も詳しくは知らないけれど、仕事関係らしい」
「へぇー」
あまりよく分からなかった。……まあ、そんな細かいことは気にしないで、この世界の生活を楽しもう。そう思って私たちは教室に戻った。
「大丈夫だった?」
席に着くと、友達が心配そうに話しかけてくれた。元の世界では、こんなに心配されることは無かったので嬉しかった。
「うん」
「お大事に!」
チャイムが鳴り、授業が始まった。アニメの世界の日常が再び動き出す。
ただ、いつもと違うのは由美が私の顔色を気にしながら大丈夫、と声をかけてくれることだった。
あの事、由美に話してもいいかな、と思って私は正直に告げた。
「倒れた理由が分かったから、メールで話すね」
「分かった」
その夜、由美とのメールは続いた。
『私が倒れた理由は、アニメの世界に行ってたの』
「マジで? それでどうなったの?」
『なぜか鮮明に覚えてるんだよね。最初に私は転校生として来たんだけど、席の隣が推しと段々仲良くなって付き合ったの』
「マジ⁉︎」
『今も次元は違うけど付き合ってるよ』
「すご!」
『だけど本当はここに戻りたくなかったんだけどね』
「なんで?」
『だって、ここにいたって私は一人だから。誰も私を必要としない。だったら楽しいアニメの世界にいた方がマシでしょ』
「それはそうだけど……。私は結月ちゃんを必要とするよ!』
『ありがとう。少し元気になったかも!』
だが、そんな穏やかな日は続かなかった。
次の日、教室の雰囲気が一変したことに気付いた。由美におはよう、と声をかけようと近づいた瞬間、彼女はサッと私から離れて三、四人集まっている所に行ってしまった。すると、そのグループから私の悪口が聞こえた。
「ねぇ、本当? アニメの世界に行ったって。絶対注目されたいだけでしょ」
由美が口を開いた。
「だよねぇ。もう私も友達のフリして疲れたよ。あいつマジで面倒臭いんだよね」
「お疲れ様ー! 由美さぁ、役者さんになれるよ!」
「それなー。演技上手すぎ!」
「そう?」
──あ。由美と目が合ってしまった。
由美はぷいっと視線を逸らし、グループの方に戻した。
「もし、本当ならアニメの世界にずっと居ればいいのに。視界に入ると不快だわ」
そんなことはできない。たとえ[漢字]二次元[/漢字][ふりがな]アニメの世界[/ふりがな]で半年を過ごしてもこの世界では二、三分しか経たないのだ。私はそのことを伝えようと思わず口を開いた。
「向こうの世界で半年を過ごしても、こっちの世界では二、三分しか経たないよ」
言い返してしまった。その瞬間、「あいつ、言い返してきたwマジウケる」という声が聞こえる。言わなければよかった。その後悔と悪口が胸を締め付ける。
「じゃあ、去りますよ。ここから去ればいいんだよね。明日、学校に来ないから楽しい学校生活を送ってね」
私は笑いながら言った。だけど心の中では泣いていた。
そのグループは黙り込んだ。
その日の夜、私は再び[漢字]あの世界[/漢字][ふりがな]アニメの世界[/ふりがな]に行く準備をした。真っ白な紙に作品名を書き、二つ折りにし、輪っかにして指にはめる。
「よし、これで行こう!」
翌日の朝、起きた時、体には何の異変もなかったので、いつも通りに朝ご飯を食べて、歯磨きをする。学校の制服に腕を通した瞬間、体がふわりと浮き上がるような、なんとも説明しがたい感覚に襲われた。その感覚に耐えきれず、私はその場で意識を失った。
次に目を覚ましたとき、私は保健室のベッドで寝ていた。
「結月? 大丈夫?」
優しい声で私の顔を見る。
──慎二くんだ。
ここは……話の続き⁉︎
前回は付き合って終わった筈だ。まさか、話の続きになるなんて。私は驚き、目を擦った。
──あんまりドキドキしない。顔も赤くならない。
以前の私なら、ドキドキして顔が赤くなる。だけど、今は自然で居られるほど落ち着いている。
「色々、あったんだ」
私は正直に[漢字]三次元[/漢字][ふりがな]元の世界[/ふりがな]で起こったことを話した。
慎二くんは何も言わずに俯いていた。
「ごめん! 暗い話をして」
そんな顔をさせるつもりは無かった。ただ、誰かに辛かった事を素直に言いたかったのかもしれない。
「だけど、また一緒にいられるね」
慎二くんを更に心配かけないように笑顔で言った。
「うん」
一つ疑問がある。
「何で、転校したのにここにいるの?」
「結月の両親の関係で取り消しされたんだ。俺も詳しくは知らないけれど、仕事関係らしい」
「へぇー」
あまりよく分からなかった。……まあ、そんな細かいことは気にしないで、この世界の生活を楽しもう。そう思って私たちは教室に戻った。
「大丈夫だった?」
席に着くと、友達が心配そうに話しかけてくれた。元の世界では、こんなに心配されることは無かったので嬉しかった。
「うん」
「お大事に!」
チャイムが鳴り、授業が始まった。アニメの世界の日常が再び動き出す。
- 1.とまどい
- 2.なかよく
- 3.決断
- 4.本当に、ありがとう
- 5.もう一度、キミの居る世界へ──
- 6.無理しないでね、
- 7.嫌なこと、忘れよう
- 8.ちょっと、気まずいな
- 9.不安
- 10.キミの言葉で、元気でたよ
- 11.ごめんね
- 12.本当に?
- 13.こどもに、もどろうよ
- 14.悪い日? いい日?
- 15.楽しい旅行!
- 16.ふたりだけのひみつ、だよ?
- 17.たのしいね
- 18.奇遇だね、
- 19.なんだろう?
- 20.解決
- 21.ありがとう
- 22.新学期
- 23.たのしみ
- 24.めんどくさいな、
- 25.暴露
- 26.どきどき
- 27.体育祭
- 28.修学旅行
- 29.修学旅行②
- 30.もう、そんな時期か
- 31.え……?
- 32.奇跡
- 33.新しいともだち
- 34.なぜ?
- 35.めんどくさい。
- 36.そうだったんだね
- 37.わくわくっ!
- 38.うれしくて、はずかしくて
- 39.手とキミのくせ
- 40.思いがけない展開
- 41.衣装と、私
- 42.まほうの言葉
- 43.部活動
- 44.青春だね