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最終投稿プレビュー


 確かそれは静司が十七だった頃、的場の頭首として経験を積むために妖退治に宮城の某所までやってきたときのこと。

 夏にしては少し涼しく、秋にしてはまだ蒸し暑い微妙な季節の変わり目に的場を贔屓にしている地主が依頼して来たことが始まりだった。

 曰く、山から妙な声がするので確認しにいったところ人の姿はなかった。
 それどころか人がいた痕跡すらないのである。その声を暫く聞いていた妻がノイローゼになり元々悪かった心臓をさらに悪くして入院、自分も気味が悪いので何とかして欲しいとのこと。

 こういう“軽い”ものは的場でも下っ端がいくものなのだが、その下っ端が呪詛を受けてほぼ死んだような状態で帰ってきたことから次期頭首として期待されている静司が行くことになった。

 静司は山の神だったものが、信仰がなくなりタチの悪い妖に転じたと睨んでいるが真相はその山に付いてからのお楽しみだ。いい式になればいいな。と、考えながら依頼主に挨拶をして詳しい話を聞き出す。

 大体は七瀬が調べたことと一致しているが、新しい情報も手に入ったのでご老人の相手をした甲斐があった。


 その情報と書庫の資料を照らし合わせてさぁ祓わん!っと、山ノ神から転落した妖が居るであろう中腹の神社を目指していると地べたに這いつくばる子供を発見した。

 今から妖を祓うので一般人、しかも子供を巻き込むのはまずいと判断した静司は速やかに去るよう命じたが子供は応じようとしなかった。


 曰く、簪を探しているから無理だと。


 子供の服は洋服だし髪の毛は簪を刺すほど長くない。なのになぜ簪を探すのかと問えば、少し答えるのを渋った後に「知り合いがこの辺で無くしたから」と、だけ答えた。


 そして、ようやく子供は顔を上げた。

 鼻筋がすっと通った、男女という性別すらも通り越した中性的なうつくしい顔立ち。あと数年もすれば周りを本人の意思に関係なく狂わせる絶世に成長するだろう。

 手足も鹿のように細くしなやかな子供特有の手足が絶妙な色気放っていたのと、日本では一般的な黒目黒髪とは異なる亜麻色の髪にハニーブラウンの瞳を持った子供の体にはあちこちに泥が跳ねており、その“知り合い”が無くした簪を一生懸命に探していたのが伝わってきた。

 そしてその子供が高い妖力を持つことにも。

 高い妖力を持つ人間は本人も自覚しないうちにその妖力が溢れ出すことがある。祓い屋の家系に生まれず、修行を行ったことがない子供なら余計にだ。だからタチの悪い妖によく狙われる。
 この子供場合はよく今まで妖に狙われず生きてこれた、と言いたくなるほど妖力が溢れている。

 同業なら人に化けた大物の妖と言っても多分誤魔化せるレベルの妖力は珍しい。まさに神に愛された才能と言えるだろう。


 だから的場 静司は思った。
 他の祓い屋連中に先を越される前にさっさとこちら側に引き入れてしまおう。そうすればいい駒になる、っと。



「君、名前は?」



 生ぬるい風が二人に吹いて、後ろの木々を揺らした。


 名前を聞く。

 もっとも簡単な会話の始まり方だが、祓い屋や妖にとっては名前や顔は呪う材料にもなるため口にすることは躊躇われるが、少女は表情を変えないまま答えた。



「ナツメ。木編の、クロウメモドキ科の方の棗」



 祓い屋としての教育を受けていないからだろう。
 素直に名前を答えてしまうのは警戒心が無さすぎるので、やや祓い屋には向かない。だけどこちらに引き入れてから教育するのも遅くないだろう。



「それは苗字と名前どちらの方ですか」
「別に偽名だからどっちでもないよ。あとお兄さん、私に半径1……いや2.5m以上近寄ったら防犯ブザー鳴らして貴方に無理やりこの山まで連れてこられたて、靴にファンタ入れて飲ませてって中々ハードな要求して来たって警察に言うから」



 前言撤回。
 この子供警戒心MAXだし多分、不審者対策は教育する必要がない。

 だけど倫理観は学ぶ必要あり。

リレー小説「短編小説」

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