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君の名前を呼ぶまで

#40

第40話 約束

恋人になって六日目。
まだその言葉に慣れなくて、胸の奥がずっとくすぐったい。

――今度、一緒に散歩しよ。

昨日、自分が言った言葉が、何度も頭の中で反響していた。
蒼真は、どんな気持ちで聞いていたんだろう。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日は本を開いてすらいなかった。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう、結衣」

名前を呼ばれるだけで、胸が跳ねる。
昨日よりも近い声。
昨日よりも優しい響き。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、少し話したい」

胸が跳ねた。

「うん、いいよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

昨日と同じ場所。
でも、昨日よりも少しだけ近い距離。

「……行こ」

その声は静かで、どこか照れが混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
恋人になってから、歩幅が自然と揃うようになった。

沈黙が続いても、不思議と苦しくない。
むしろ、沈黙の中に“恋人らしさ”がある気がした。

夕陽が沈みかけ、街がオレンジ色に染まる。

蒼真がふと立ち止まった。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。

「なに?」

蒼真は、少しだけ迷うように言った。

「この前……散歩、したいって言ってたよな」

胸がぎゅっとなる。

「うん。蒼真くんと歩きたいなって」

言うと、蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、ほんの少しだけ笑った。

「……じゃあ、今度の休日……一緒に歩かないか」

その言葉は、蒼真なりの“デートの誘い”だった。

胸が熱くなる。
涙が出そうなくらい嬉しくて、苦しくて。

「行きたい……すごく」

蒼真はゆっくりと息を吸い、
そして、照れたように言った。

「俺も……結衣と歩きたい」

その一言で、胸がじんわりとあたたかくなる。

蒼真はゆっくりと手を伸ばした。
昨日よりも自然に。
昨日よりも迷いが少なく。

指先が触れ、
手のひらが重なり、
指が絡む。

「……楽しみだな」

「うん……楽しみ」

夕陽の中で、
二人は恋人として“初めてのデート”の約束をした。

その約束だけで、
距離がまたひとつ近づいた。
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2026/03/14 17:53

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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