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君の名前を呼ぶまで

#34

第34話 世界の変化

蒼真と恋人になった翌日。
胸の奥がずっとあたたかくて、落ち着かない。
昨日の言葉が、何度も何度も頭の中で反響していた。

――恋人になりたい。

あの瞬間の蒼真の顔が、何度思い出しても胸を締めつける。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日は本を開いてすらいなかった。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう、結衣」

“結衣”と呼ばれただけで、胸が跳ねた。
昨日よりも近い声。
昨日よりも優しい響き。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、一緒に帰りたい」

胸が跳ねた。

「うん、帰ろ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

昨日と同じ場所。
でも、昨日とは違う関係。

「……行こ」

その声は静かで、どこか照れが混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
昨日よりもさらにゆっくりした歩幅。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。

恋人になっただけで、世界が少し優しく見えた。

夕陽が沈みかけ、街がオレンジ色に染まる。

蒼真がふと立ち止まった。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。
でも、今日はその声がいつもよりずっと近かった。

「なに?」

蒼真は、迷うように指先を震わせながら言った。

「恋人になったのに……まだ、手つなぐの緊張する」

胸がぎゅっとなる。

「私も……ちょっと緊張してるよ」

言うと、蒼真は驚いたように目を瞬き、
そして、ほんの少しだけ笑った。

「……そっか」

蒼真はゆっくりと手を伸ばした。
昨日よりも自然に。
昨日よりも迷いが少なく。

「……つないでもいい?」

「うん」

指先が触れ、
手のひらが重なり、
指が絡む。

昨日よりも、ずっとしっかりと。

「……あったかい」

蒼真が小さくつぶやいた。

「蒼真くんの手も……あったかいよ」

しばらく歩いたあと、蒼真がぽつりと言った。

「恋人って……こういう感じなんだな」

「うん……こういう感じだね」

夕陽の中で、
二人は恋人として初めて手をつないで歩いた。

世界が少し優しく見えたのは、
きっと隣に蒼真がいるから。
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2026/03/14 17:56

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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