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君の名前を呼ぶまで

#33

第33話 この気持ちの名前

蒼真が「好きだよ」と言った翌日。
その言葉の余韻が、まだ胸の奥で静かに響いていた。

――好き。

たった二文字なのに、世界が少し明るく見える。

教室に入ると、蒼真はいつもの席にいた。
でも、今日は本を開いてすらいなかった。

「……おはよう」

声をかけると、蒼真はゆっくり顔を上げた。

「……おはよう」

その声は小さいのに、昨日よりもずっと優しい。
胸がふわりと温かくなる。

席に戻ろうとしたとき、蒼真がぽつりと言った。

「今日……帰り、少し話したい」

胸が跳ねた。

「うん、いいよ」

蒼真は小さくうなずき、視線をそらした。
耳がほんのり赤い。

放課後。
校門を出ると、蒼真が待っていた。

「……行こ」

その声は静かで、どこか決意が混ざっていた。

二人で歩く帰り道。
昨日よりもさらにゆっくりした歩幅。
沈黙が続いても、不思議と苦しくない。

夕陽が沈みかけ、街がオレンジ色に染まる。

蒼真がふと立ち止まった。

「……結衣」

名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。
でも、今日はその声がいつもよりずっと近かった。

「なに?」

蒼真は、迷うように指先を震わせながら言った。

「昨日……“好き”って言ったけど」

胸がぎゅっとなる。

「言ってから……ずっと考えてた」

「……なにを?」

蒼真はゆっくりと息を吸い、
そして、まっすぐに私を見た。

「この気持ちに……名前をつけるなら」

夕陽が二人の影を長く伸ばす。
風が吹いて、蒼真の前髪が揺れる。

「結衣と……恋人になりたい」

その言葉は、迷いのない、まっすぐな想いだった。

胸が熱くなる。
涙が出そうなくらい嬉しくて、苦しくて。

「……私も、蒼真くんと恋人になりたい」

言った瞬間、蒼真の目が少しだけ揺れ、
そして、ゆっくりと笑った。

「……よかった」

その声は、今までで一番優しかった。

蒼真は、震える手をそっと伸ばした。
昨日よりも自然に。
昨日よりも強く。

指先が触れ、
手のひらが重なり、
指が絡む。

「これからも……よろしく、結衣」

「うん……よろしくね、蒼真くん」

夕暮れの帰り道で、
二人は恋人になった。
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2026/03/14 17:57

おひめ
ID:≫ 19ZQABSFMiPlU
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